猫、再び森へ。
「あん、あん、あん!(とど~、あいがと~、ララットといいってく~。)」
そういいながら再び僕を鷲掴みにして踵を返して走り出すフェン君。
当然、僕は再びリアルロボット操縦者よろしく上下振動と前後左右に振られ気持ち悪さ全開である。
「がっふ!(美味そうなのとってくるんだぞ~!)」
キングは息子の心配をするどころか獲物の味の心配を優先していた。
そのことから、ララットは負ける心配がないどころか怪我の恐れもなさそうであることが窺えた。
しかし、それは生まれたての仔猫には当てはまらない評価だ。
まだ安心はできない。
それにララットに会う前に終わりそうなほど気持ち悪くなってきた。
今、出会ったら確実に負ける気がする。
そして、先ほどからいろんな人、いや、コボルトがフェン君に声をかけている。
「どうした、そんなに急いで。」
「ララットといに、くーの。」
「そうか気いつけてな。」
こんな感じの会話が交わされていたのだが、先程までは『あん』とか『わん』に翻訳だった。
なぜかいつの間にか普通の会話に聞こえるようになっている。
理由はわからないが聞きやすくなったので良しとしよう。
しかし、コボルトにとってのララットとは相当弱い生き物なのだろうか。
誰一人としてフェン君が危ない目に合うとは思っていないようだ。
もしかすると攻撃手段のない生き物なのかもしれない。
それなら何とかなりそうな気がする。
この時の僕はあまり考えていなかった。
魔物がはびこる森の中で生きている生き物。
それが、食べられるくらい大きく成長するという意味。
そう、それなりの強さが要求される環境だということなのだ。
あれから村の外に出てすぐにフェン君の手から解放され地面に降ろされた。
ああ、揺るがぬ大地、まさに雄大、この地上に存在する全てを受け止めてくれる。
「げっ、げ~。」
僕の胃の中身すら受け止めてくれる。
フェン君は何となく自分が原因だということに気が付いたのか気まずそうに言った。
「シャドウ、だぁじょ~ぶ?」
僕は何とか少しはいて持ち直した。
「に、にぃ~。(だ、大丈夫。)」
と答えた。
そしたら、フェン君には僕の言葉が何となくだが通じたのか、気まずさが消え嬉しそうに言った。
「じゃ~、ララットさあそ~。」
大丈夫といった自分の言葉に早まったと少し後悔しつつ、嬉しそうなフェン君を見て仕方ないなぁとあきらめるのだった。
こうして、初めての狩りが始まるのだった。




