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交渉

作者: キサラギ
掲載日:2017/01/23

扉の開く音とともに男が部屋に足を踏み入れると、中で待っていた彼は口を開いた。

「お待ちしておりました。そちらにおかけください。」

男が何も言わずイスに座ると、また彼が話し始めた。

「本日お越しいただいたのは他でもありません。実はあなたにお伝えしたいことがありまして。」

「あんたに呼び出されたってことは、どういうことかわかっている。

だがな、俺にだって家族がいる。この仕事にだってやりがいを感じている。

そう簡単にやめるわけにはいかないんだよ。」

男の口調はやや強めだったが、話している最中に彼の目を見ることはできなかった。

一方彼は男から目を逸らすことなく、淡々と続ける。

「本日の内容をご理解していただいているようで、まことに感謝しております。

それでは単刀直入に申し上げます。

ぜひあなたに、早期リタイアをおすすめいたします。」

「やっぱりな。しかし、さっきも言ったように俺はやめるつもりはないぞ。」

うつむき気味の男に、彼は説明をする。

「もちろんただで、とは申しません。

次の場所ではあなたが有利になるように手はずは整えます。

あなた、現在の自分の居場所、立場に本当に満足していますか?」

「だがなぁ」困ったように頭をかく男。

「さっきも言ったが、家族もいるんだ。

迷惑をかけることになってしまうだろう。そこが一番心配でなあ。」

「それでしたら、心配は不要です。

あなたが辞められた際、それ相応の金額がご家族の手に入ります。

まあ簡単に言ってしまえば退職金のようなものです。」

「うーん」

口に手を当て、前傾姿勢で悩む男。

彼が追い打ちをかける。

「さきほどやりがいとおっしゃいましたが、本当にそう思っているのでしょうか。

与えられた場所で、与えられたことをするだけ。それが本当にあなたのやりたいことでしょうか。

一旦ここでリセットし、また一から、いえ、ゼロからスタートするまたとないチャンスですよ。」


しばらく沈黙の後、男は口を開いた。

「分かった、お前の言うとおりにしよう。

ただし、これだけは約束してほしい。

次はもっといい条件のところを手配してくれ。

そして家族が不幸にならないようにしてくれ。」

「もちろんです。あなたも、そしてご家族も必ず後悔はさせませんよ。」

イスから立ち上がった死神は、男に向けて鎌を振り下ろした。

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