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hmsstpy  作者: ゆりえ
前編 第1章 きっかけ
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第5話

雪が心傷ついて立ち去った後、その理由が分からない雄馬がとった行動とは?!

とぼとぼと一人、一樹の家に帰宅した俺は、一樹の部屋に入るなり、ベッドの上に倒れ込み、枕に顔をうずくめながら、ウジウジと考え始めた。

(アニメの世界に来て、一生かけても出会うことすら叶わないはずだった憧れの女の子に会っても、どうせ俺はなーんにも出来やしないカス野郎だ。大体、雪は一樹を好きなはずなのに、それを踏まえても無理って、俺って相当なカス野郎だな、、、。)

そう思いながら、枕の下に手を入ると何かが手に触れたのを感じた。それを手に取って見てみると、昨日、バイトの帰り道で拾った奇妙なあのケータイだった。おそらく、この世界に来たのも、このケータイが原因だろうことを考えた俺は、ケータイに向かって叫んだ。

『あーこんな面倒くさいなら、アニメの世界になんか来たって意味ねぇーし、元の世界に還りてぇー!』

そう叫んだ直後、そのケータイの着信音が鳴り始めた。俺は、急に鳴った着信音に、ビクっとなったが、このケータイの送り主と話して、元の世界に戻れるチャンスだと思い、慌てて電話に出た。

『もしもし!』

『もしもし、矢中雄馬くんだね?』

『はい、どうも、改めて宜しくお願いします、じゃなくて!一体このケータイは何なんですか?あなたは誰なんですか?俺を元の世界に還してくださいよ!』

『分かった分かった、君がいきなりそんな状況に立たされて、混乱しないことの方がおかしいと思う。だが少し落ち着いて話をしないか?』

『わ、分かりました。それで話すって、何を話すんですか?』

『君は今ちょうど、元の世界に還りたいと願っていたが、その世界に行ってから、初めは、何をしてどうありたいと思っただろうか?』

『それは、、、ここは俺がずっと来てみたいと思っていた架空の世界で、なりたい立場にもなって

、会ってみたい人にも会えた。架空の世界なんだから、全てが思い通りになると、そう思っていました。』

『では、思い通りにならなかったから還りたいと?』

『ええ、何か問題でも?やりたくもないことをいたくもない場所でやり過ごすことを嫌うのは、当たり前のことですよね?』

『その通りだが、僕から言わせて貰うと、君はまだ何もやっていない。君がいたという証の欠片すら、その世界には無いように思える。』

『あんた、一体何が言いたいんだ?』

『そうやって君は諦めることを覚え続けてきた。今の君が空っぽで、現実世界でも、憧れた世界でも、一度でも焦がれた場所だったのに、そこがいたくもない場所になったのはなぜだ?』

『うるせー!あんたに俺の何が分かるっていうんだよ!誰だって自分を受け入れてくれない場所に興味はないだろう?俺はこの世界に飽きたんだよ。だから還りたいんだ!還してくれよ!』

『分かった。君が還りたいと望むのであれば、そのケータイのクリアを押せば、いつでも還れる。ただし、その世界には二度と行くことが出来なくなる。あとは、君の好きにするといい。』

そういうと電話は切られた。

『なんだこのおっさん!一方的に話を終わらせやがって!ちきしょう!』

俺は元の世界に還るべく、クリアボタンの上に指をのせたが、押すことが出来なかった。

その後、夕食と風呂を済ますと、また部屋に戻って、これからどうするかを考えながら、ぼーっとしていた。すると、部屋にパソコンがあるのが目に入った。俺は、恋愛経験がほとんどなく、無頓着に生きて来た為に、女心というものがイマイチ分からなかった。

電話のおっさんに、激しい反論をしておきながら、なぜか、俺は足掻いていた。藁をもすがる思いで、打開策はないかと、気がつくと、俺は、パソコンを使って、ネット上の恋愛掲示板を見ていた。しばらく見ていると、気にかかる内容の文章を見つけた。その掲示板でのやり取りは数分前から始まっていて、その内容はこういったものだった。

名無し『誰か片思いで悩んでる人、相談のっちゃいます!』

悩める子羊『今日、好きな人に、俺なんかよりふさわしい男がいると言われました。』

名無し『それは、告白したということですか?』

悩める子羊『いいえ、告白はしていません。実は彼とは幼馴染で、一緒にいることが多くて、それを見ていた周囲の人達が、彼と私に、ラブラブだとか冷やかす言葉をかけてきたんです。私はその冷やかしに動揺して、うつむいていた所、周囲の人達に、彼が、言ったんです。俺なんかよりもふさわしい男が、私にはいると。』

名無し『はっきりとしたことは分かりませんが、彼は自分に自信が無いんじゃないでしょうか?それが友人として言ったのか、あなたに恋愛感情を持って言ったのかは分かりませんが、もしあなたがそれを知りたいのであれば、回りくどいことはせず、直接、彼に聞くのが1番の近道ですね。』

悩める子羊『わかりました。ありがとうございます。』

そこで、やり取りは終わったようだった。

その掲示板を見て、俺は、あまりに、今日の自分と同じ状況だったので、悩める子羊の正体は雪ではないか?と思ったが、それよりも名無しという人物の、『直接聞くのが1番の近道』という言葉が、俺に勇気を与えた気がした。俺はその言葉を胸に、眠りについた。

雪がなぜ傷つき、怒って帰ってしまったか分からないままの雄馬だが、雪と正面から向き合う覚悟を決めた雄馬だったが、、、

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