第2話
ー続きー
そのケータイにかかってきた着信相手の電話番号が俺の電話番号だった。とっさに自分のケータイを見たが、誰にも発信をしていない。怖くなった俺は、手からそのケータイを振り払うようにして落としてしまった。
だが、まだ着信音が鳴り続けている。俺は恐る恐る、そのケータイをまた拾いあげると、電話に出てしまっていた。
『も、、もしもし。』
『もしもし、矢中雄馬くんだね?』
『は、はい。』
『良かった!無事届いたようだね。そこで、、そのケータイは、君が手にした瞬間から、君のものだ。どう使うかも君次第。その先で、君が選び、誰のものでもない、君自身のものを創っていくんだ。必ずこの言葉の本当の意味を君が知る日が来るだろう。試しにまずは、そのケータイの1を押してごらん。』
そういうと電話の相手は電話を切った。
俺はしばらく、ポカーンとしていたが正気を取り戻し、素朴な疑問が頭の中に浮かび出した。
(なんなんだ?俺のケータイって言われてもなぁ。
俺、ケータイ買った覚えもないし、ましてや、非現実的な電話のかかり方してきたよな、、今。)
そして、そこで、立ち止まっていても、どうにもならないことに気がついた俺は、とりあえず帰宅することにした。
『ただいまー』
家に帰ると母が作る朝ご飯の香りが玄関にまで漂って来ていた。そのせいか、さっきまでの奇妙な出来事を忘れ、一気に空腹を覚え始め、部屋着に着替えるなり、すぐに食卓へと向かった。
『美味い!』
朝食の味噌汁を飲んだ親父が、歯切れよく大きな声で叫んだ!
俺は親父のその声に驚いたので、腹が立ち、言い放った。
『親父ー!びっくりするじゃねーかよ!いきなり大声出さないでくれよ!』
『いや〜母さんの作る飯は美味いから、叫ばずにはいられん!』
と更に大声で言った。
するとそれを聞いていた母さんが、嬉しそうに言った。
『もう〜あなたったら〜❤︎』
息子の前でのろけ始めた両親を見て、胸焼けがしたような気分になったので、朝食をさっさと済ませ、自分の部屋へと戻った。
部屋に戻ると、疲れがどっと出てきたと同時に、さっき、道で拾ったケータイのことを思い出した。
俺はそのケータイを手にとった。
(なんで俺に、こんなケータイ送ってきたんだろうな)そう思いながら、電話をしてきた相手のいう通り1を押そうとしたが、ためらった。というのも押した途端、小規模にいうと、ケータイが爆発する、あるいは、大規模にいうと、地球がドカーンとなるなどを考えてしまったからだ。
怖くなった俺は、現実逃避をするべく、大好きなアニメを観ながら、いつも通り、疲れを癒そうと考えた。
最近よく観ているアニメは、青春をテーマとしたアニメだった。主人公の少女、雪が幼馴染の一樹に想いを寄せているが、なかなか想いを伝えられずにいるという感じの話だ。
アニメを観ながら、俺が一樹だったら、雪の気持ちに、ソッコー気がついて、すぐ付き合うのにと思っていた。アニメに夢中になりながらも、まだ、拾ったケータイのことが気にかかっていた。
朝起きて、飯を食って、バイト行って帰って、家で、テレビを観るか、ゲームをやるか、パチンコ屋に行くか、何一つ変化のない日々。それが幸せと呼ぶと俺は思っている、、のか?そう思っているはずの俺が気がつくと、あのケータイに手を伸ばしていた。
この何にも変わらない生活が俺の幸せ、、、そう思えば思う程、俺の頭の中の考えが混乱していった。
いっそ、このケータイが、、地球がドカーンってなるくらいなんだっていうんだ。俺は、不思議と、みるみる間に、何の保証も根拠もない勇気が出て、ケータイの1を押してしまっていた。正気に戻った俺は、ケータイをベッドに放り投げ、部屋の隅にうずくまった。
しかし、何も起こらなかった。それから、数十分、数時間、待ったが何も起こらず、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
一次回更新へつづく一