5 フライングで会うことになった
「(台詞)」「(台詞)」
のところは、同時に違う事を言ってる事を表したものです。
読みにくかったら、すみません(ー ー;)
「くっ••••••」
「止めてーー!!痛い痛いーーー!!!!」
「まだまだ!きっと、大、丈夫ですわっ」
「いや、マジで止めて!!!私の毛根、絶滅させる気かーー⁇‼︎」
「流石に無理だと思います!!絡まってます!!!止めてあげて下さい!!!!」
「止めないで下さいませ、ゲイルさん!!私は必ずやこのフワフワウェーブに勝ってみせますわ!!!」
「いや、アリアの闘争心の為だけに私の毛根滅ぼされたくないから!!!!勝つってことは、私の毛根も瀕死状態だよね⁈きっと!!いたっ⁉︎ゲイル〜助けて!!!!」
「いや、俺にアリアさんを止める力とか無いんです」
「諦め、いたっ、るのがっ、早、いのよ!」
「だって••••••アリアさんを無理矢理引き剝がしたら、ファレル様の毛根、半死半生になりますよ⁈」
蒼白になる。毛根が半死半生⁈まだ十四歳なのに⁈舞踏会、どうすんのよ!!!ただでさえあんま乗り気じゃないのに!!!!
あの、あの人さえいてくれれば!!!!!アリアの暴走が止まるのに!!!!!!••••••よし、呼ぶか。
「おかあさまあぁーーーー!!!!!!」
「なにかしら、ファレル」
早っ!!!••••••あ、そっか。KKY作戦が成功したからか、親バカになったんだった。お父様ともラブラブのようです。
「アリアの暴走を止めて!!」
「?もう止めましたわよ?」
「さ、流石お母様、救出も一瞬ですね」
「何をなさっていたの?」
「あー••••••」
「お嬢様の髪を梳いておりました」
「痛かったー••••••」
「アリアさん、ほっといてくれて良かったのに••••••」
「侍女としての闘争心がはたらいてしまい•••」
「ファレル、癖っ毛だものね」
「別に、邪魔じゃなければいいんだけど」
「ファレルは、実用性を求めてるから」
「申し訳ございません••••••」
「いえ、まだファレル付きの侍女になって二日ですもの」
アリアは一昨日私付きの侍女になった。騒がしい朝食の後にお母様に紹介されたのと、本人の希望で。いい人だ。お母様を慕っているのが伝わってくる。••••••なんか私、マザコンになってないか?
「でも、何で梳けないんでしょう•••」
「落ち込まないで!私も梳けないし」
「じゃあいつもどうやっておられるんですか?」
「あー、ゲイルがやってくれる」
「⁈」
「な、何ですか?」
ゲイルがたじろいでる。私も急に自分の方を向かれたらビビる。
「どうやってこのフワフワウェーブを••••••」
「••••••やってみせましょうか?」
「ぜひ、よろしくお願い致します!」
「ファレル様、宜しいですか?」
「まあどうせ梳いてもらうしね」
「ふふ、仲がいいのね」
何を今更。
「うん」「いや、決してそういう訳では、」
「「ん?」」
「二人とも、全然違うこと言ってるわよ」
「そうですわね」
マジで••••••。お母様とアリアがなんか言ってるけどさ。それより、
「え、私たち、仲良くないの⁈」
「あ、いえ、その」
「はっきり言ってよ!返答次第では行動変えなきゃいけないんだからね!!」
「それ、迎撃とかですよね⁈」
「五•••••四•••••」
「急にカウントダウン始めないでください⁉︎」
「三•••••二•••••」
「っ恥ずかしかっただけです!!」
「へ、そうなの?なんで?」
「仲良しってなんか、その」
「!わかった」
「え」
「シャイボーイってことね⁈」
「は?」
「もう、お母様!わかりきったことでゲイルをからかうのは止めといてね!ゲイルが挙動不審になるから」
「わかりました。••••••ゲイル、可哀想に」
「?」
部屋の片隅では、
「苦労なさいますよ」
と、ゲイルはアリアに肩を叩かれていた。そして、
「噂では、ゲイルさんはファレル様の愛人ではないかと言われるくらい仲が宜しいのに••••••」
急に降ってきた巨大な爆弾にゲイルは咳き込んだ。
「いやー!!!!絶対っいや!」
この際、大声出してやる!!もうばれてるんだろうしね!!練習室の更衣室だし、とりあえず練習室の外に漏れることはなさそうだけども。
「駄目です!お嬢様のためです!!」
「嘘だ!」
「嘘なもんですか!!ドレスを着て踊るのに慣れておいた方がいいんですよ!!!」
「だってあれ、重いし、邪魔だし。要するに動きにくいんだよ⁈」
「そういうものなんですよ!!!お嬢様のような考え方をする令嬢は少ない、というか私は見たことありませんから!!!!」
そりゃあな!こちとら別の世界から来たんだからね!!
「こっちの格好の方が動きやすいって!」
「そういう問題じゃないんです!!」
私が着ているのは、フリルのブラウスにに膝より長めのスカート。
「舞踏会では絶対ドレスなんです!というか、そうじゃないと、周りの視線が痛いんですよ⁈」
「舞踏会だけ着ればいいじゃん!!」
「慣れてない服で転んだりでもしたら、何も知らない方々から嗤われるだけですわ!!」
••••••私は『公爵家の一人娘』。家の、家族のためにも頑張らないといけないんだ。
「••••••わかった」
私を受け入れてくれる人々のためにも。
「頑張って下さいね、お嬢様」
「頑張る。それしか道がないしね」
「そうですわね。•••しんみりするのはお嬢様らしくないですわ」
「アリア、大好き」
「は、えっ、••••••私も信じております」
嬉しいなー。
「あ、そういえばお嬢様」
「ん?」
「使用人を避けなくても宜しいかと」
「え?だって、あっちが萎縮しちゃうじゃん?」
「ですってよ」
「んん?」
嫌な予感しかない。
キーッと音を立てながら外からドアが開く。着替えるんだからゲイルな訳ないってことは••••••?
「さ、お嬢様にドレスを着せますわよ!!」
「「はい!アリアさん!!」」
ですよねー。恥ずかしすぎる。飛んだ羞恥プレイだわー。『大好き』って言ったのも聞こえたでしょ⁈本音ダダ漏れ状態じゃないか!!!!!!!うわーーーー!!!!!!
「ファレル様!!」
「もう、何よ⁈今度は!!!」
「大変です!!!!!」
「大変でなければ今ノックする訳ないじゃん!!!声焦ってるし、それくらいわかっ、てる••••••」
私が知る限り、ここまで慌てているゲイルは見たことがない。焦っているような声も聞いた事がない。まず、着替えているであろう時にノックするなんて無作法はしない。そう考え、冷静になる。
「何があったの?」
私が冷静になったのを感じたのか、ゲイルの声にも少しばかりの落ち着きが戻っていた。
「王太子殿下が来るそうです」
あ、偉い人か。次の王になり得る人。••••••。
「なんでそんな奴が|うち(公爵家)に⁈」
「旦那様が陛下に貸した本を代わりに返しに来たそうです!」
「お父様、そんな人々とも仲良しだったの⁈何者よ!お父様!!」
「陛下とは幼馴染の間柄のようです!!」
「まともに答えるんかい!!!」
「決して、絶対に、殿下にその口調で話さないで下さいね!!」
「それか!一番言いたい事それでしょ⁈焦ってる理由もか!!」
「無礼の無いようにして下さいね!!!」
「わかってるわよ!•••あなた、そんなに」
「あ、その、えっと」
「公爵家を大事に思ってくれてるのね!!!!!!!!!」
「••••••はい」
「わかったわ。この話し方に戻せばいいのでしょう?ドレスに着替えるわね」
バタンとドアを閉める。
ゲイルはといえば、
「公爵家も大事ですが••••••はあ〜」
知られても困るが、全然気づかれなかった事に少々やさぐれていた。
「本当に本当に、素を出さないでください」
「そうですわ。素さえ出さなければ完璧な公爵令嬢ですのに」
「二人とも、後で覚えておくといいわ」
「褒めていますのよ」
「勝手にマイナスに受け取るのは止めて下さい」
「とりあえず、受け取っておきますわ」
「で、ゲイルさん。殿下はこちらにお越しになるのよね?」
「はい、侍女がファレル様の居場所を伝えると、自分から申されたそうです」
「本当に、素を出さないで下さいね?不敬罪になりますわよ」
「••••••わざとよね?」
「お嬢様のためでございます。して、ゲイルさん。何故急に殿下が?」
「わたくしも知りたいわ」
「その調子です。•••概ね、陛下にでもあって来いと言われたのでは?幼馴染の娘ですからね」
「••••••お父様」
コンコン
急にノックがあった。きっと来たんだろう。緊張感が増す。だけど、ゲイルとアリアの高速移動へ壁際に向かう動作のお陰で、少しだけ、緩む。
「•••どうぞ」
「•••失礼する」
入ってきた男には、驚きしか無かった。
金髪碧眼。あっちの世界での『王子様』そのものの端正な顔立ち。それに合うスタイルの良さ。服はそこまで華美じゃないが、質がいい、と公爵家ならではの肥えた目で思った。
でも、私にとっては『そんなもの』だった。驚きで凍りついたように体が動かなかったおかげで、目を見開かずに、声を漏らさずに済んだ。凍りついてしまったことを除けば不審さはない筈だ。
私にとって大事だったのは。
私を凍らせたのは。
タクに良く似た、その声だった。
「•••どうした」
反射的にビクッとする。タクに似た声。家族の様に、大切な人の声。それだけでこんなに体が震える。二度と会えない、と思っていた分だけ心が揺れる。
涙を流すのを必死に堪える。耐えろ、私。今、私は、『中川 愛』じゃない。ファレルなんだ。『中川 愛』は後でだって出来る。
「いえ、少し、驚いてしまって。大丈夫ですわ」
私はファレルだ。よし!
「そうか。••••••ここで、何をしていたんだ?」
「ダンスの練習ですわ。••••••恥ずかしながら、ダンスは得意ではなくて。でも、いつかは、得意になってみせますわ」
「じゃあ、踊ってみるか?」
「え?」
「私と、だ」
「誰がですか?」
「そなたに決まってるだろう」
「あ、そう、ですわね」
「••••••面白い奴だな」
「自分では面白味のない人間だと自負しているのですが」
「それも、面白い理由だろうな。••••••一曲、お願いできますか?」
急に改めて手を握られてびっくりする。
「あ、と、••••••喜んで」
背後でゲイルが動き、ピアノを弾きだした。いつもの曲。
「良い従者だな」
「ゲイル、のことでございますか?」
「ああ、そなたの動きが少し、柔らかくなったな」
「私も、そう思いますわ。ゲイルは凄くいい人ですの。ゲイルだけでなく、アリアも。•••あ、部屋の隅にいる人ですわ」
「••••••そなたも良い主人のようだな」
「いえ、いつも我が儘を聞いてくれるので、つい甘えてしまうんですのよ」
話してる間に曲が終わった。長いようでいて、短い時間だった。あんなに憂鬱だった、ドレスでのダンスも、そこまで気にならなかった。ミスも無かった。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。•••凄く、お上手ですわね。リードも完璧でしたし•••。初めてダンスを楽しいと思ったかも知れませんわ」
「そうか」
「•••あ、すみません。初めてではないかもしれないですわ。上達した時とかは楽しいですもの。でも私ももっと完璧に仕上げますわ」
「••••••そなた、名は何だったか?」
「ファレルでございます」
「ファレル、か」
「ええ」
「そろそろ帰るとしよう。••••••ファレル、舞踏会でな」
「はい、ダンスをもっと練習しておきますわ」
「••••••楽しみにしている」
それを最後に彼はこの部屋を去った。
「よかった、ですわね••••••」
「凄く体力消耗したわ••••••」
いろんな意味でね。
「ファレル様の素がいつ出てくるかハラハラし通しでした••••••」
「よし、六発ね。歯を食いしばりな!!!」
「俺、六回分じゃない筈ですよ⁈」
「女性にヤキ入れる訳にはいかないでしょ?」
「そうですわよ、ゲイルさん」
「だからって、何で俺」
「男なんだから、頑張りなさい!」
「理不尽過ぎます!!!」
「いくわよっ!」
その後、ゲイルの悲鳴が練習室に響き渡った、とだけ言っておく。
自室に一人になり、ベッドでバタバタしながら考える。
何なのあの人••••••。王太子フィリウス・ブランシュ。まさかその王太子殿下がタクにそっくりな声だとは。びっくりだよ。
••••••問題はさ、あの人、腹に一物ありそうなんだよね。なんか信じられないってゆーか。私がキラキラした奴を信じられないんだろうか?まあ、私も本性コレだし。ある意味一物あるんだよねー。要するに、同族に対するアンテナが働いたというか•••。
ま、頑張れ私!舞踏会を乗り切れ!!
脳内変換して話してる、とある場面。
「本当に本当に、素を出さないでください」
「そうですわ。素さえ出さなければ完璧な公爵令嬢ですのに」
「二人とも、後で覚えておくといいわ(喧嘩売ってるよね?)」
「褒めてますのよ」
「勝手にマイナスに受け取るのは止めてください」
「とりあえず、受け取っておきますわ(売られた喧嘩は買う主義なんで)」
()の中がファレルの脳内変換です。
関係ゼロですが、私はキノコ愛好会に入ってます。
「募集中です。お待ちしておきますわ。(byファレル)」
あと一人で五人なんですよね〜。
あの形がお気に入りです(*^_^*)