4-2 色々あっての結果
「何があったんだ⁈メルフェア!!」
「本当に申し訳ございません!!ファレルさん!!」
何故、私に謝ってくるんですか⁉︎しれーっと逃げ出せなくなるじゃないですか!!!!!
「メルフェア!土下座は止めよう!土下座はーー!!」
「そうしなければわたくしの気がすみませんの!止めないでくださいませ!!旦那様!」
早々にドアを閉めたお父様の判断の速さって、素晴らしいよ。一家の主とその妻がこんなやり取りしてるのを聞かれるのはどうかと思うしね。ついでに、ここを防音室にした方!グッジョブ!!あとは、お父様!お母様が土下座とかの行動に出ないよう、そのまま後ろからホールドしてて!!!
「ファレルさん!わたくしは許されないことをしました!!」
何かされたっけ?私、何もされなかった記憶しかないけど⁈相手にすらされなかった記憶とかさ!!目の前がちょびっと滲んだわ!!でも、そんくらいじゃない?
「何か、されたのか?」
お父様もそんなに真に受けんな。私、知らないしぃー?そんなこと、これっぽっちも記憶に無いしぃー?
「身に覚えはありませんわ」
接点さえも身に覚えがないよ。
「でも!わたくしが!!」
わたくしが?
「あの侍女に!!!」
あの、侍女に?侍女?あの?まさかのですか??
「•••••ファレルさんを殺すように言ったんですもの!!!!」
わー、マジですか。私、とことん親に愛されない運命?酷くないですか、神様。別に、信じてる訳でもないけど。
前世で無理だったことは、今世でも無理なの?
表面にはショックを出さない。ゲットした猫被りを最大限に活かしている。つまり、微笑!!!
「••••••何で、そんなこと」
「っ聞いたら、きっとわたくしのことを嫌いになります。離縁だけで終わらせたい。嫌われて、この館を発つのは辛いですから」
この館を発つ⁈家を出るってこと⁈そんなに⁈
「嫌わない。それに、君と離縁するなんて、ありえない。君がこの館を発つなんて、認めない」
「旦那様••••••」
あ、二人の劇場開幕?私は退散させていただき、
「ファレル、逃げるのは無しだよ」
私の行動をわかってきてますね、お父様。舌打ちしたい。
「あの侍女、アリアは悪くないんです!!」
へぇ、アリアって名前だったんだ。侍女Aであってた。すごい偶然。
「そういえば、あの子は君を慕っていたね」
「その好意を利用しただけなんです!!アリアは悪くない!!!」
これ、埒があかない。
「何で、私を殺そうとしたんですか?」
お母様は俯いた。で、花の花弁のような唇を噛み締める。こんな姿も美しいなんて、美女っぷりが伺える。
「旦那様は」
「私?」
「ファレルが生まれてから、冷たくなられて」
「••••••ああ」
身に覚えがありまくりですね。
「ファレルはわたくしからみても目に余る行いをしていたから、だからっ、で、出来損ないの娘を生んだとかっ、思われたんじゃないかってっ••••••」
お母様、涙目。やっぱり、美しい。
うん、(仮)の行いですよ?お父様。わざわざ確認の為に目を向けなくても。
「どうしようもない娘でも、わたくしには、大切な旦那様との子供だったのに、わたくしは、旦那様に愛されたくてっ••••••」
殺そうとしたんだ。
「本当に、本当にっ申し訳ございませんでした!!!!」
「何で、謝るのですか」
「だって、私はファレルさん、貴女を。私は、実の娘を」
「殺そうとした、ですのね」
「••••••ええ」
「•••••••娘って言ってくれて嬉しいです」
「え?」
「別に私、 お母様のことを恨んでなんかおりませんし、嫌いになってもいません。今も」
「何で、だって」
お母様が床に崩れ落ちる。急に、膝の力が抜けたみたいに。
「私は生きていますし、お母様だって謝ってくださっている。私は、それでいいんです」
「でも」
「お母様をどうするかは、一応特権として使わせていただくと被害者である私に決める権利があります。だから、私は、私の望むように致しますわ」
お母様に抱きつく。
「お母様、これからも私のお母様でいてください。構ってください。私は、構って欲しかったんですよ。甘えたりしてみたいし。•••お母様を、喜ばせたっふわ」
お母様にも抱きつき返される。
「ファレル••••••」
「さん付けなんてしないでください。私はお母様の娘なんですもの」
互いに抱きしめ合う。床に座り込んだままの状態だから、はたから見ればはしたないけど、今居るのは三人だけだから。もうしばらく。
『実の娘』って、お母様は言ってくれた。前世では『他人』だったけど、お母様は、『実の娘』って••••••。
「大好きです。お母様」
「わたくしも、愛しているわ。ファレル」
一歩間違えば、GLだけど、そんなことは関係なっい⁈何⁈
「ぐっ」
「ファレル!!!」
お、おおお母様!!力がっ強過ぎですから!!!!苦しい苦しい!!!!!お母様に知らせようとジタバタする。くーるーしーいー。殺す気か!!今度こそ、殺す気っですか⁈
「お、おっお父様!!」
唯一お母様をどうにか出来そうな人!!!!
「メルフェア、あんまり力を入れるとファレルが苦しそうだ」
つか、すでに苦しい!!
「ご、ごめんなさい!ファレル」
た、助かったー。
ん?お父様?どさくさに紛れてお母様を抱きしめてる?
「私だってメルフェアを嫌いになんてなったりしない」
「旦那様••••••」
「詳しくは話すのが難しいんだが、冷たくしてしまったのは、君の所為でも、ファレルの所為でもない。私の問題があっただけだ。••••••愛しているよ、メルフェア」
「マーキラス様••••••」
マーキラスって名前だったんだ••••••。
「わたくしも、愛しております」
「メルフェア••••••」
退散していいよね?愛の劇場は二人で勝手にやっててください。
鍵を開けて、外に出る。••••••鍵、かけたがいいかな。でも、中からは開けれたんだけど鍵持ってないんだよね。ま、いいか。雰囲気察してくれるよね。
?目の前に、壁?どのくらいの高さなのかと顔を上げる。••••••目が合った。
「っ!!!!!」
驚き過ぎて声が出なかったことが幸いして、醜態を見られずに済んだ。だが、相手はそうでもなかったらしい。
「⁈うわっふぐ」
セーフ!私頑張ったわ!!相手の口を抑えることに成功した!!!•••落ち着いた?ゆっくりと口を抑えていた手を離す。
「ふぁ、ファレル様?」
暢気に『急に何ですか?』な表情を見せた相手に私はつい素でブチ切れてしまった。
「っ何が『ファレル様?』よ!!!何大声で叫ぼうとしてんのよ!!!私が努力してんのに何暢気なことっむぐ」
「ファレル様」
今度は何よ!!!抗議の視線を向ける。
「周りを少し、見てみて下さい」
周りを見渡して••••••、わ、私は周りを見渡してなんかいない!!何もっ見てない!!!
「一人に聞いてみたんですが、奥様に『家を出る支度』を頼まれたようでした」
一人って、何の?今、周り、誰もいないよ?
「••••••現実逃避しないで聞いて下さい。現実を見て下さい。願望でものを考えないで下さい」
エスパーかよ!!!はい、わかりましたって。このまま不毛なやり取りしたところで意味ないですもんね。はいはい、周りには使用人さんが沢山いましたよ。くそっ!!!使用人さん達の目が痛い!!!結局醜態を見られたんだけど!!!あんたに構ったばっかりに!!!
「•••あの」
「何?」
もーやけくそだよ!!もう猫とか被ったところでバレてんだから、意味無いし!!!
「大丈夫、ですか?医師を•••」
一人の侍女さんが来た。レアだな。しかも、病人扱いかい!!
「大丈夫。あ、お母様は家を出ることは無くなったわ。ごめんけど、『家を出る支度』を中止してくれる?」
「は、はい。畏まりました」
去っていく一人の侍女さん。あれは、私に話し掛ける生贄にされたな。新人さんなんだろな。
「••••••正体、ばれたよね」
「••••••使用人達の情報流通の早さをなめないでくださいね」
明日にはみんなに伝わってるってことか。
「おはよう、お父様、お母様」
「おはよう」
「おはよう、ファレル。••••••侍女の情報は本当だったのね」
「••••••ちゃんと、猫の被り方は心得ていますので、大丈夫ですわよ。••••••多分」
「驚くほど信用出来ない多分だね」
「旦那様は知っていたのですね?」
「•••ははは」
お母様の迫力、凄いなあ。いただきます、と言って食べ始める。わっ、キノコがある。キノコ、苦手なんだが••••••。まあ、少し助け船(?)を出したげようか。
「ついでに、ゲイルも知ってたよ」
「••••••黙っていて、申し訳ございませんでした」
「仲が良いのはいいことよ。••••••ところでファレル、その隅に避けられているキノコは何?」
「見た通り、思った通り、キノコだよ?普通の」
「何で避けているの?」
「嫌いだからです」
「食べなさい」
「っ食べたく無いから避けてるんですよ⁉︎」
「好き嫌いは良くありませんわ」
「食べませんからっ!!」
「旦那様、ゲイル」
「「はいぃっ」」
「ファレルを抑えてくださったら、さっきのことは水に流して差し上げますわ」
わあ!強制過ぎるー!!バイオレンス!!おーい、お父様!ゲイル!!裏切る気か!!!
二人がかりで羽交い締めにされる。いや、私そんな怪力じゃないから!!一人でも大丈夫だと思いますよ⁈お母様レベルだったら二人がかりかもですが!!!
意地でも口は開けませんから!!!!
「じゃあ、これは?」
は、鼻をつまむ、だと•••••⁈く、くるし•••。
仕方がなしに口を開く。
「最初からそうすればいいのに」
お母様に抗議の視線を向ける。それをにっこり受け止めるお母様って、Sだぁ〜!!しかもドが付くほどでSだぁ〜!!
キノコを乗せた匙が口へ運ばれる。今後来る苦手な味に耐える!!!私は頑張、••••••??ん?美味しい、だと?ゆっくりと咀嚼する。•••••キノコが美味しいー!!!!!!
何で⁈何で⁈何でですか⁈
「きっキノコが、美味しい、です」
「ほら、ただの食わず嫌いじゃない」
何で??前世では確かに美味しいと思ったことが無いはず。拷問かと思ったくらいだし。
前世と今世では変わった?人によって味覚に違いがあるというし。前世の身体の味覚と、今世の味覚の違い、かな?それに、キノコが嫌いだっていう記憶はあるけど、どうして嫌いかって言われると思い出せないような••••••?
「あら、旦那様もニンジンを避けていらしているわね」
「いやぁ〜実は、ニンジンアレルギーで•••」
そんなん無いから。
「あら?旦那様はアレルギーをお持ちでないはずですわよ?」
「はは、は」
嘘つくの下手なのにさ、嘘つくからそうなるんだよ。私、さっきの恨み、忘れてないからね。涙目で見られたところで助けなんて出すわけが無いでしょ。自業自得だよ、自業自得。助けを出すどころか、
「ファレルも手伝って下さいな」
「はいっ!お母様!!」
お母様の味方しちゃうもんね!!満面の笑みで。
「ゲイルも手伝って!!」
「申し訳ございません!!旦那様ー!!!しかし、好き嫌いは良くありません!!!!」
「おまえもか!ゲイル!!いつかこの恨み、返してやる!!!」
「申し訳ございませんっ!!俺は好き嫌いはしないたちなんで!!!」
「良いですわよゲイル!!堅苦しく無くて良いですのよ。今度からも『俺』で話しなさいな」
「良かったわね!!息抜けるわよ!!!」
「〜しばらくは申し訳なくて、息がつまりそうです!!!」
「みんな、性格変わりすぎだろう!!!!」
「「お父様(旦那様)に言われたくありません!!!!」」
「すみません!!!!物凄く同意します!!!!!!」
うん、すごい騒がしい朝食だね。KKY作戦は遂行されました。ついでに、使用人さん達の視線も変わりました。『不思議なもの』を見る目になりました。
一つ、不安なのは、私の記憶。キノコ嫌いな訳を思い出せない。今では立派なキノコ好きです。『キノコ愛好会』を作る為の人数が足りなくて困ってます。少なくとも、五人は欲しいんだけど•••。今は、私とゲイルだけです。お母様は『I love シイタケ会』、お父様は『好き嫌い同盟』、今作っているのか、もう既に発足しているものなのかは知りませんがそれぞれ、所属しているらしいです。参加してくださる方は、ぜひぜひ、お声をかけて下さいませ。三つの内、どれかでもいいです。
宣伝は置いといて、思い出せなくなってきてるってことは、私はいつか、
タクを忘れてしまうんだろうか。
私の日常を変えてくれた、大切な人を。
私は、忘れていくのだろうか。 忘れるのは、必然なのだろうか。こんなにも、忘れたくないと想うのに。
みんな、キャラ変し過ぎです。私の元の予測よりも高く飛んで行ってます。
今回も、ありがとうございました(^。^)