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社交辞令とかいいから、身代わり契約とか如何です?  作者: 音羽 雪
私と彼の身代わり契約。
4/23

4-1 KKY作戦

 Q,ここはどこでしょう?

 A,お父様の書斎。


 えー今、私、ファレル・フレムダレムはお父様の書斎に入っております。流石というか、本が多いし、紙が山積みになってます。


「そこのソファに掛けなさい」

「はい••••••」


 動くだけで緊張するこのお父様ミラクル。しかし、流石のお父様ミラクルでも、私の脳内には効果を及ぼせないみたいなのですます。

 ••••••はっ。落ち着け!正気に戻れ私!!ま、まさか、お父様ミラクルに脳内までも混乱させられる程の力があったとは•••!!!


「話というのは?」


 なんか、お父様ミラクルのせいか、雰囲気のせいか、私は自然と唾を呑んだ。





 ほんの三十分前程の出来事______。


「おはようございます、お父様、お母様」

「おはよう」

「おはよう、ファレルさん」


 うん、台本読んでるみたいないつもの挨拶だね!いつも私が『お父様、お母様』を付けるか付けないかくらいの違いしかないよね!私は挨拶にささやかな変化を与えてるんだよ。

 だから、断じて、決して、言うのを忘れたわけではないー!ないったらない!!


「今日、時間は空いていらっしゃいますか?」

「••••••ああ、いいぞ」


 どうせ、今日も断られるんだろうな。わかってますって!二週間挑み続けて連敗の私はわかってますって!!


「じゃあ三十分後、私の書斎に来い」

「わかりました」


 どうせどうせ、私と話す気なんてないんでしょ。そうじゃなきゃ二週間連続で断れないって!精神的に!!こっちの精神は耐久性が上がったけどね!!!


「先に失礼」


 お父様は席を立った。向かった先は自室かな。


「わたくしも、失礼致します」


 お母様もか。いつも通りだね。最近は二人が居なくなったらゲイルと話すのが日課だ。ただし、小声。顔は平静を装って。バレてもいい話し方で。『ファレル』の風評的に。普段通り話したら、猫が吹っ飛ぶ自信がある!今度は奇行が始まったとか言われる!!あってないような風評だけどな。あってもマイナスすぎるわ。


「(旦那様、何を話されるつもりでしょうか?)」

「(誰に?)」

「(ファレル様に)」

「(聞いてなかったの?お父様はいつものように断られたじゃない)」

「(•••••ファレル様、話を聞いてなかったんですか?)」

「(どういうことよ)」

「(旦那様は『••••••ああ、いいぞ』、『じゃあ三十分後、私の書斎に来い』っておっしゃられてました)」

「(あら?幻聴が聞こえるのだけど)」

「(ファレル様、現実を受け止めて下さい。現実逃避も禁止です)」

「(じゃあ何⁈その、お化けとか、幽霊とか、オカルト的なモノもビックリの現実を受け入れろと?)」

「(そうです。最初から言ってます。事実です。ってか、自分の父親を何扱いですか)」

「(止めを刺さないで!!)」

「(スルーしましたね)」

「(今おあいこになったわ)」

「(そうですね)」

「(貴方も大分言うようになったわね)」

「(はい。自分の変わり様にびっくりです。••••••ファレル様、話を脱線させるのはやめて下さい。)」

「(何のことですの?さ、話を戻しましょう?)」

「(誤魔化しましたね。まあ、止めは『旦那様と話すことは夢ではなく、現実です。事実です』でしょうか?)」

「(•••••わかったわよ。受け入れるって)」

「(猫が少し剥がれてます。ところでファレル様)」

「(何よ。今後に及んで。止め刺したくせに!二回も!!)」

「(旦那様に言われた『三十分後』があと十分弱できます)」

「(早く言ってよ!!!)」


「ごちそうさま」


 急いでいるときは走りたくなる衝動を抑えて早歩きした。





 で、今に至る______。

 話って何ですか⁈いや、話したいってこっちから言ったけどね⁈予想外過ぎて!そして、このお父様ミラクルの威力!!もうなんか、錯乱してるって自分でわかる不思議な状態になってるんだよ!!!


「は、話は、」


 くっこういう時にはアレをやるしかないか!精神統一して、(脳内で)構える。


「お父様の話から聞きますわ」


 今だ!!バッと手を前に出す(脳内で)。

 秘技・『お先にどうぞ』!!!!!!!!!


「話があるのは悟っていたか」


 おーい!お父様!!あなたの中の私はどんだけ馬鹿なんすか。(仮)はともかく、私はそうでもない、はず、だよ。今まで話すの断ってたのに了承されたんだから、明らかにそうでしょうよ!!!


「ピアノを弾くようになってたな」

「ええ」

「何の曲を聴いているんだ?」

「あ、え」


 事実を言えば、『きらきら星』と『かっこう』と『チューリップ』だ。けど、言っていいんだろうか??こっちの世界の曲じゃないし。


「どうした?」

「いえ、そういえば曲名を知ろうと思ったことが無かったな、と」

「••••••そうか」


 嘘です。ハッタリです。知ってます。てか、それ本題ですか。


「最近、急に変わったな」

「何がですか?」

「お前が」


 そりゃ、中身が思い出したんでね。前世の記憶を。


「何があった?」

「何が••••••」


 侍女に殺されかけました。という訳にもな。

 沈黙を保つ。口開いても、言いようがないことしか言える気がしない。


「言えないか」

「••••••はい」

「なら、」


 何⁈奥の手とか⁈何⁈何⁈

 お父様が口を開く。ゴクリと、唾を呑む。さっきも唾を呑んだよね。


「カレー」


 はい⁈カレー⁈


「ラーメン」


 ええ⁈ラーメン⁈


「おはぎ」


 何⁈何⁈おはぎ⁈


 ••••••終わり⁈ってか、何⁈何で食べ物⁈カレー、ラーメン、おはぎ⁈美味しいけど!!!

 •••••まって、カレー、ラーメン、おはぎ。この世界に存在してない。なら、


「ファレル、お前は、」


 お父様、貴方も。


「誰だ?」

「転生者ですか?」


 沈黙••••••••••。えっと。


「転生者、です」

「同じく転生者です」


 話し方、変わってますよ、お父様。五・七・五いけるね。


「ここも防音室だから大丈夫」

「その話し方は?」

「前世での」

「そうですか」

「だから、そちらも大丈夫だよ」


 では。


「自己紹介というのも変だし、前世紹介するよ。中川 愛、十六歳です」

「松江 涼、二十四歳です」

「前世の記憶も話す?」

「そうだね」

「••••••聞いていて気持ちの良い話ではなくても、聞いてくれますか?」

「じゃあ、今度は、僕から話すよ」

「はい」

「前世でも、妻子がいた。妻は幼馴染で一人、娘がいた」

「今も同じですね」

「他には?ほら、素になって!」

「マンガみたいだな」

「それでいいから」

「いや、苦笑してるし」

「まあ、置いといて。僕は娘をトラックから庇って死んだ」

「御愁傷様です」

「うん。でも、僕、本人だから」

「娘さん、大好きだったんだね」

「••••••大好きだよ」

「今も?」

「僕はこっちで結婚した。政略結婚じゃないよ?恋愛結婚だ」

「そうなの?」

「疑わしいだろうけどね」

「はい」

「即答か。••••••そして、子供、ファレルが生まれた。僕は、前世と同じ状況になって記憶を思い出した」

「娘が一人できたことで、か」

「僕は、前世と今を重ねてしまいそうだった。だから、僕は、妻とも、ファレルとも、距離を置いて、冷たくして」

「まあ、そうですね。それが、二人の為だと思ったんでしょ?」

「思った」

「お陰様で、ファレルの性格はすくすくと捻れてましたけど」

「⁈」

「当たり前でしょう?構って欲しかったんですよ?ファレルは。『結婚相手、両親の言いなりになってたまるもんですか!!』って感じだったし」

「でも、じゃあ」

「中身を私だと思えば、これからでも娘として扱えるんじゃない?」

「君は?」

「ここでの親はお父様ですから」

「それでいいの?」

「前より、ずっといい」

「前って」

「私が前世を話す番ですわね・・お父様(・・・

「••••••そうだな」

「私の家は四人家族だった。両親と、妹が一人。父親と妹とは血が繋がっていないから、義理ですけど」

「••••••再婚だったの?」

「いや、私の実の父は、母を犯した男です。母はその男と結婚しただなんて思ってなかった。父と呼ぶのも穢らわしい••••••。質問とかは?」

「いや、通しで聞く」

「わかった。母と義父は恋愛結婚でした。母と義父は前々から付き合っていた様で、その時、同い年の義妹ができた。私は、その誰からも愛されることは無かったな。母からすれば、犯された末にできた子。義父からすれば、愛する妻が犯された結果。••••••義妹から見れば、自分より下の存在だった。

 私に罪があるとか、思ってなかったから、親としての務めを果たしてくれましたが、別に、そこに愛情とかはない。ただの義務だった。私からしても、そう。それが当然だった。両親に対しては、両親、というより、自分を義務感から養ってくれる赤の他人だった。義妹には下だと思われてたから、八つ当たりされたりしたけど、別に、私からしたら、些事だった。

 そんな、捻りまくった対人能力で、学校でも上手くいくわけがないし、そうだった。運動ができる方だったし、仲間はずれとかは無かったな。怖がられてたらしいけどね。

 高校生になってもそれは変わらないはずで、わざわざ変えるのも面倒くさいと思ってた。けど、恋人ができた。それがきっかけで私には友達ができるようになって。でも、デートの時、帰りに駅のホームから落ちて死んだ。事故。で、こっちに転生して、侍女に殺されかけて前世を思い出すっていう」

「••••••なんか、聞いてごめん」

「何で?家族は私を好きになってくれなかったけど、」


 タクは、友達は、


「私なんかでもいいって、言ってくれる人ができたんだよ?嬉しかった」


 全部を話すことは出来なかったけど。それはきっと、これからもそうなんだろう。話すことなんて出来なくて。私が偽物だって、これからも知る人はいない。それでいい。


「そっか」

「そう」

「そういえばさ、緑茶!醤油!懐かしくない?」

「あー、思い出す。あれは日本人の産んだ奇跡だってこの世界に来てから気づいた」

「作ってみたんだよね」

「ホント⁈」

「これで嘘だったら、」

「ただの酷い人です」

「ははは」


「改めてよろしくお願いします、お父様・・・

「こちらこそ、ファレル(・・・・)」


 で、私たちは仲良くなった。親娘としても、友人としても。KKY作戦(対お父様)は達成された!!!お茶会したり、前世のこと話したり、頑張って日本の味を再現しようと奮闘したり。

 お父様は、親バカになっていった。私も軽度の後戻りできる程度のファザコンになった。

 心なしか、使用人さん達の視線も柔らかくなった気がします。

 相変わらず、ゲイルとは基本くっついてます。ピアノ弾いたりします。あと、最近では、ゲイルの女子力が上がってる気がする。なんか、髪結えるようになってる。器用だな。そして私は、『大雷雨』を弾けるようになった。

 とりあえず、まだまだ暇を持て余している。勉強してるけど、前世の知識があるし、大変なのは地理と歴史くらいだ。お嬢様は暇な職業です。あ〜あ、楽しいこと、ないかしら?





 ある日、お父様とお茶会をしていた。前世のマンガ話をしていた。そしたら、急に扉が開いてさ?誰がいたと思う?お母様だよ!!鍵かけてたんだけど。鍵ごと壊したのか。すごいな!お母様!!ぽーっとしてるだけの人じゃ無かった!!!しかもさ?


「申し訳ございませんでした!!!!旦那様!ファレルさん!!」


 何があった。お父様はともかく、何故に私まで巻き込まれないといけないのか。修羅場なら遠慮したい。

 とりあえず、脳内はもう混乱し過ぎて逆に冷静になってた。うん。お母様、頭下げるだけで飽き足りなかったか、土下座しようとするし。お父様の慌てっぷりったら。笑うわ。ふははははは。


 うん、その日は私の頭上に大雷雨がきたみたいな感じだった。

今回もありがとうございました(^O^)

しばらく、本業の事情につき、更新が遅れます。すみませんm(_ _)m

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