1 手紙とキノコと乱闘の朝
第二章です!!
前から糖度低めだったのに、益々低くなった気がする(ー ー;)甘いもの欲しい。糖度が上がるように努力します。
「ファレル様、起きて下さいませ!」
「ん•••」
誰かに体を揺すられ、目を開ける。でも、この人は勘違いしてないか?私は『ファレル様』じゃなくて、中川愛なんだけど。あと、なんかちょっと臭い。
そんなに似てるのか、その人と。こんな目付きの悪い仲間がいるものなのか。
取り敢えず、起こしてくる人の勘違いを正す為に目を開ける。そして、目をさらに見開くことになった。
目に映ったのは、緻密な細工が凝らされたシャンデリアのある天井。
私の行動範囲にこんな煌びやかなものは存在していなかったはずだ。
パッと体を起こした。
「どこ、ここ••••••」
「おはようございます、ファレル様」
私は周りを見回して、もっと驚いた。
銀色の••••••髪ぃぃぃ⁈
私の肩に銀色の髪が流れてる!!え⁈私の髪は確か黒だったんだけど!!決して銀色ではなかった!!光に透かしたとしても銀色にはならん!!!
近くにあった鏡台を覗く。
ここはどこ、以前に。
「私、だれなんだよ」
典型的な記憶喪失の人の台詞を言うことになるとはな。
でもさ、髪が銀色になってるし、目も鋭いどころか愛らしいし!!自分でいうのもおかしいけど!!まず、顔の骨格が変わってるし、私、こんなにスタイル良くなかったよ!!
今の私、超美少女だよ!!ナルシではない!
ドアがノックされる。
「ファレル様、失礼します」
わあ、イケメン。しかも執事服。そういや、起こしてくれた人も美人だったし、メイド服だった。
「これを」
そう言って渡されたのは一通の手紙だった。
「なに?これ」
「これに、大切なことが書かれています」
読めってことか。
「では、私たちは外におりますので、なにかございましたら声をお掛け下さい」
二人とも部屋を出ていき、私は煌びやかな部屋に一人になった。
赤い蜜蝋で封をされた封筒をひっくり返す。
『ファレル・フレムダレム』
なにしてくれたんだろ、この人。あと、私は誰で、ここはどこなんだろう。
少し離れたところにご丁寧にハサミが置いてあった。それで封を開ける。
中に入ってる便箋は、たった一枚。
『手紙を探してみて下さい』
ふざけてんですか。
ドアを開ける。で、さっき見た執事服の方に声をかける。
「手紙、持ってない?」
あっさり笑って胸元のポケットからもう一つの封筒を出してきた。
「どうぞ」
「ありがと」
執事服は少し驚いた後、苦笑した。
私、なにか苦笑されることしただろうか。
それはともかく、また部屋に戻ってベッドに座る。
『宛名は省きます。なんて書けばいいかわかんなかったし。
この手紙を読んでるなら、きっと前世の記憶だけはあるんだね。私は異世界に転生したんだよ。私はここでは公爵家の一人娘。そして、私は色々あって自分から記憶を消した。あなたは私だし。私もあなた。違いは記憶があるかないかだけ。』
記憶を消した••••••?そんな術があるのか。これを書いたのは、記憶を消す前の私?
『色々わからないことがあったら、お父様に聞いて。お父様も、前世の記憶があるから。今の家族関係は良好だよ。
あとは、周りの人達の名前。従者のゲイルとメイドのアリア。どちらも私付きの人。この手紙を見てるなら、もう知ってるはず。
それに、友人のライア様。王女殿下です。あと、腐女子だよ。』
一国の王女殿下は腐女子••••••。まあ、そこまで気にすることもないか。
『私は、隣国に人質として行くことになっています。』
⁈マジで。
『私から行くことを望んだので、気にしないで。』
留学みたいな感じかな。
『仮にも公爵家の一員だし、酷い目には合わないと思う。誰も一緒に行く人はいないけど、まあ、大丈夫だと思う。もともとライア様以外で友達いないし。ゲイルもアリシアも友達だけどそれより前に主従だからなぁ………』
思うって、何それ。適当すぎ。あと自分で書いてて悲しくならなかった?
『では』
これで、終わりか。
取り敢えず、人質になるってことは確かだ。まあ、私はそこまでそんなこと気にする性格でもないし。というか、同じ自分だから、それわかってて言ってると思う。
挨拶回りにでも行くかな。
「アリシア!」
「なんでございましょう?」
「朝食を食べたい」
二人と一緒に向かった場所には朝食が準備されて、もう二人、席に着いていた。
「おはよう」
「おはよう、ファレル。記憶は、もうないの?」
「無いというか、消したというか••••••。お父様、お母様、でいいんですかね?」
ゲイルに聞く。
「はい、旦那様と奥様です。話し方も普通にして大丈夫です」
「そーなんだ」
「ファレル様、礼儀作法はきちんとまたやり直させますからね?」
「逃げるなどなさったらどうなるかおわかりで?」
アリアさんの満面の笑みが怖いです。
「国王陛下からの通達があった。出立は一週間後だそうだよ」
「隣国はどんな国でしょうか?」
お皿に乗っていたキノコを避けながら、お父様に聞く。キノコ、嫌いなんだよね。
「音楽が盛んらしいわ。ファレル、キノコを避けるのはやめなさい」
「やです」
「記憶を消したせいでまたキノコ嫌いに戻ったんですか。俺をキノコ愛好会に引っ張り込んでおいて自分は辞めるとか許しませんからね!会長!!」
「私、そんなものの会長になったのか!!絶対いや、今すぐゲイルに会長の座を譲ってやる!!」
「やめてください!!奥様、お願い致します」
「ちょ、やめ」
ゲイルに後ろから羽交い締めにされる。最近された気もする。既視感がある。
でも、今は!既視感よりも!わあ!強制過ぎるー!!バイオレンス!!おーい、お父様!ゲイル!!裏切る気か!!!
二人がかりで羽交い締めにされる。いや、私そんな怪力じゃないから!!一人でも大丈夫だよ!!ってか離せゲイルー!
意地でも口は開けませんから!!!!
「もうわかってますのよ?」
は、鼻をつまむなんて••••⁈く、くるし•••。
仕方がなしに口を開く。
「最初からそうすればいいのに、って前も言いましたでしょう?」
いや、私は覚えてませんからね?とおもいつつ、お母様に抗議の視線を向ける。それをにっこり受け止めるお母様って、Sだぁ〜!!しかもドが付くほどでSだぁ〜!!
キノコを乗せた匙が口へ運ばれるのが、死刑宣告みたいに感じる。今後来る苦手な味に耐えるんだ私!!!私は頑張、••••••??ん?美味しい、だと?ゆっくりと咀嚼する。•••••キノコが美味しいー!!!!!!
いや、確かに嫌いだったはずなのに。
「美味しいでしょう?」
「はい!私の気持ちがわかりました!!ゲイル、やっぱ会長の座は譲らない!!欲しいなら私を倒しな!!」
我ながら、どこぞのヤンキーかよ、って台詞だな。
「いりません!欲しくないですから!臨戦態勢に入るのはやめて下さい!!」
「お父様かお母様かアリア、木刀を頂戴!この輩を必ずや成敗してみせますから!!」
「だから!なんで成敗されなきゃいけないんですか!!」
「なんか、体が言ってる!コイツを倒せって!!」
「昨日のことではないでしょうか?」
「ひっ、野生の勘!!」
そう言いながらアリアが木刀を手渡してくれた。
「アリシアさん!なんでそんなもの渡すんですかー!どこから調達してきたんですか!!」
「そんなことを気にするよりも、己の身を君するべきだよ!!さっきのも悪口とみなしたからね!!ただで済むと思わないほうがいいよ?」
悪役よろしくにっこり笑う。うん、今の私の笑顔、いい真っ黒さだ。
元剣道部員を舐めんなよ、とばかりに一気に駆けて、ゲイルに峰打ちをした。
部屋が臭かったのは、アノ薬のせいですf^_^;この世界には臭い消すものとかなさそうだから、暫くファレルの部屋は臭いだろうな。
あとこの人達は、やっぱ朝からテンション高え。
今回もありがとうございました(o^^o)こんな感じで進んでいきますが、第二章からもよろしくお願いします>_<