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社交辞令とかいいから、身代わり契約とか如何です?  作者: 音羽 雪
私と彼の身代わり契約。
17/23

14 終わりを始める時はふざけよう

「お父様、入りますわよ」


 ノックして、返事は聞かずにお父様の執務室のドアを開ける。ゲイルとアリアも一緒に。


「きゃあっ」

「••••••ノックの意味ないよね⁈」

「••••••お楽しみの最中でしたか」

「「申し訳ありません••••••」」


 お父様とお母様はソファの上。お父様がお母様の上にのしかかっている状態だ。お母様はお父様の首に腕を回している。何故ここで。


「••••••いや、大丈夫」

「え、ええ。何か用事があるのでしょう?」

「まあ、そうです」


 ピンク色の空気が流れてるし。頰染めてるし。付き合いたてのカップルか。もしくは、新婚か。


「ゲイルとアリアにも関わる話なので、連れてきました」


 お父様とお母様の向かいのソファに座る。


「アリアさん、座ってください」

「私は立っておくので大丈夫です」

「なら、俺も••••••、とか言ったら許さないから。私も立ってやろうじゃないの。三人くらい座れるわ」


 譲り合いで話が進まなくなるのは勘弁して欲しい。



「私、隣国に行くことになったよ!」



「何故そんな急に?!」

「幻聴かしら?!」

「そうですか」

「よかったですね」


 お父様、お母様、ゲイル、アリシア、前半と後半の人の差が激しい。


「ファレル様、王太子殿下とはどうなるんですか?」


 言わなきゃいけない。大切な人達に。でも、嫌われるかもしれない。震えを手をギュッと膝の上で握ることで抑える。


「私と、王太子殿下は、恋人じゃないんです」


 言うことに対する怯えと、自分から始めたものを壊していくことの苦しさを誤魔化すようにヘラッと笑う。

 そして、これまでのことを掻い摘みながら話していく。


 契約で恋人だったこと。

 私から始めたってこと。

 私の我が儘だったこと。

 私から終わらせたこと。


 彼らは、まだ私の側にいてくれるかな。


「相変わらず、我が儘ですね」

「強欲とも言えますね、ゲイルさん」

「「うんうん」」

「誰が?」


 そんな話してたっけな。


「ファレル様が、ですよ」

「相変わらずってどういうことだ!」

「俺を従者にしたり、アリシアさんに駄々をこねたり、自分の意見をバンバン言って、そのためにならなんでもするファレル様のどこが、我が儘でなくて、強欲で無いんですか」

「きっぱりと言いやがりましたね。でも、••••••私がいつ駄々をこねたと言うんだ!!」

「ドレスから逃げていたり、街に出るからと言って服選びを押し付けてきましたよね?そんな方のどこが自分勝手で自己中心的じゃないんですか」

「••••••言うとうりだけどさあ」


 なんか私をディスってないですか。

 こういう時は、


「よっし、ゲイル、後で覚えときな!!!」

「理不尽なのがきましたね!!」

「女性に暴力はいけないのよ?」

「俺だって暴力反対ですから!!!」


 変わらずに、

 いてくれるんだね。


 ••••••お父様とお母様に微笑ましいものを見る目で見られてる気がする。

 でもまだ本題が。


「でね、ゲイルに頼みがあるの」

「なんですか?それで暴力無しにしてくれますか?」

「それとこれとは全く違うから。えっと、記憶を消す薬を作って欲しいんだけど」

「わかりまし••••••っ??!!」


 皆絶句している。


「今から話すことは機密だから、誰にも漏らさないで」


 王太子殿下は記憶喪失になっている。


 そう告げると、皆は慌て出す。

 何があった、とか、何故知ってるのか、とか。


「私も関係者だから。それに、私のせいでもある」


 私と殿下が近付かなければ。


「私は、殿下の側にいることはできないと、さっき話したことも、全部、両陛下とライア様に伝えた。そこで、私は隣国に人質としていくことを申し出た」


 彼に、もう、会うことも無いだろう。


「••••••それと、記憶を消すことの何の関係があるんですか」

「殿下の前に現れないと決めたのだけど、流石に会わずにいれるか微妙でしょ?だから、記憶が無ければ、会ったところで何も起きない」


 もう、会わないようにする。会っても心から話さない。それが、本来の貴族。だから、できるはず。


「だから作って、ゲイル」

「全部の記憶が無くなるんですよ」

「前に聞いたから知ってる」


 あの時はそんなこと考えてなかった。ただ、自分の思考が恥ずかしくて。


「それでも、ゲイルも、お父様もお母様もアリシアも側にいてくれるでしょう?」


 きっと、そう。一緒に作り直してくれるはずだ。


「••••••やっぱり、我が儘ですね」

「そうかもね」





「••••••お父様」


 みんなはもう部屋から出ていった。私とお父様の二人きり。


 言えないことが多い。今も、昔も。本当は何も変わってないんじゃないか。周りの人が受け入れてくれて、私も前よりは前向きになって。でも、それは本当に前に進んでるのかな。昔のまま、何も変えられてないんじゃないか。ずっと、同じ地点にいるんじゃないか。


 大切な人に嘘をつく後ろめたさも、

 大切な人に言えなかった後悔も、

 知ってるのに。

 それを抱えて、今にいるのに。

 知ってるのに、知っていても、私は変えられてないんじゃないか。


 もう、今はタクに対する想いも朧げになってしまって。あの時の自分の気持ちが、恋だったのかさえ、今ではもう曖昧だ。


「私は、タクを忘れたくなくて」

「••••••そうか」


 私は、


「前世なんて、無い方が良かったのかなぁ…」


 ここまで話したお父様にも、全てを言ってるわけじゃない。『中川 風音』は私しか知らない。ここまで来て、まだそれに縛られてる。


「僕は、あってよかった。あったから、君の話も聞けた」

「そだね••••••」





「本当に、いいんですよね」

「出発前に飲んどいて、また、作り直さないと」


 意外と薬は早くできた。今日、寝る時に飲む。明日には記憶が無くなる。

 手紙を渡してね?とアリシアに向かって笑う。自分に宛てた手紙を先程書いた。


 ••••••彼のことは、書いてない。


 必要があれば、ゲイルやアリシアが教えてくれるだろう。


「••••••ファレル様、少しいいですか?あとゲイルさん、席を外して下さい」

「わかりました」


 ゲイルが部屋から出ていった。


「どうぞ」

「•••失礼します」


 自分はベッドに腰掛け、アリシアに椅子を勧めた。


「話って?」

「ゲイルさんをどう思っていらっしゃいますか?」

「んー、一緒にいて楽しい、かな。このブレスレットも大切にするの」


 だから、ゲイルに外に出てもらったのか。ゲイルから貰ったブレスレットはいつも腕につけている。ゲイルが好きだと思ったことがあるくらいだ。


「では、王太子殿下のことは?」


 目を逸らすのをアリシアは許す気がないようだった。きっと、話を終わらせるのも無理だろうと思う私は、早々に観念した。


「••••••一緒にいて、楽しいよ」

「それだけ、ですか」


 それだけなわけ、ない。もっとグチャグチャで、自分でもわけがわからないくらいの気持ちが、ある。

 でも、一番は



「______苦しいよ」



 何が、とは言えない。わからないから。彼を傷つけただろうってことか。彼を巻き込んだことか。彼を忘れることか。彼の側にいたことがか。

 いろいろある。


「嬉しくても悲しくても、苦しいとか私、おかしいよね」

「おかしく、ないです」

「アリシアは、知ってるんだね」


 これの名前。私も、本当は気付いてて、気付きたくないだけなのかもしれない、これ・・。彼の気持ちからも、目を逸らした。


「___」

「言わないで。••••••私は、これを忘れたいから、苦しいのを終わらせたいから、記憶を消すのかもね」


 アリシアが言うのを防ぐように話す。

 何で、こんな話をしたのかも、本当は聞きたいけど、言わないでおく。きっと、いつかわかるか、忘れてるかだろうしな。


「ゲイル、部屋に入っていいよ」

「はい」




「二人とも、これからもよろしく」




「そうですね」

「わかっております」


 ありがとう。


「じゃあ、一回、バイバイだね」

「バイバイってなんですか」

「あ、」


 こっちには無いんだっけ。


「また、会えるといいねってこと」

「会うに決まってるじゃないですか。記憶がなくても、ファレル様に変わりはないでしょうし」

「なんか、失礼なことを言われてるような気がしたんだけど」

「今のは、ファレル様の気のせいにございます。ねえ、ゲイルさん」

「そうですよ」


 まあ、私に変わりはないか。

 ゲイルに薬の入った透明な紫色のビンを貰う。蓋は、銀色の栓でされている。


「これって••••••」

「綺麗でしょう?」


 また私の瞳と、髪の色。


「ゲイルって、こーゆーの好きなの?」

「大切な人にはします」


 なんか、意味深。まあ、私、ご主人様だしね!!そーだ。


「一回、ご主人様って言ってみ」

「それ、意味ありますかね」

「私を楽しませるため」

「••••••我が儘ご主人様」


 溜息をついて言われた言葉にこっちも溜息つきたい。もっといい言葉があっ、た••••••でしょ••••••?


「••••••ゲイル?」


 突然、床に片膝をつけて、私の左手を手に取った。ゲイルに貰ったブレスレットをしている方の手を。

 ••••••すっごく絵になってるけど、どうした。




「______ご主人様に永遠としこえの忠誠を誓います」




 出てきた言葉に目を見開いていると、手の甲にキスされた。

 むにゅって、柔らかくて生温かい感触が手に!!!!しかも、リップ音〜〜!!!!!


「ちょ、ゲイル••••••!!!」


 パッとゲイルから手を取り上げて、両手で赤くなったであろう顔を覆う。

 チュッていった!!!


 ひえぁぁぁぁぁあああ!!!!!!


「ファレル様から淑女らしき悲鳴が出たことに驚きが隠せません」

「え、アリシアっ私、声に出してた?!」

「それももうバッチリ聞き収められるほどには」

「••••••っゲイル!!あなたがやったのに自分で照れるんじゃないっ!!!!」

「も、む無理です••••••」

「そんなんじゃ恋人できないよ?!」

「ファレル様には言われたくないです!!俺がいないと髪に櫛を入れられないくせに!!」

「はあ?!関係あるかそんなこと!!!」


 しまいには、アリシアに肩を叩かれて、


「ゲイルが可哀想です。ファレル様、鈍すぎだと思うのですが」


 と、言われた。

 で、私は拗ねた。意味がわからない。



「でも、ファレル様、私もあなたに忠誠を誓います」



 そこに来た一撃で戻ったけど。


「側におります。居らせて下さいませんか?」


 もちろんだ。大歓迎です。妙にしんみりしたので。


「••••••一緒にキノコを分かち合いましょう!!!!!」

「何ふざけてんですか!!」

「申し訳ございません、私は『I love シイタケ会』を裏切ることはできません!!」

「お母様ーー!!!」

「アリシアさんもそんな会に入ってるんですか!?」


 ひとしきりふざけて、顔を見合わせて笑い合った。


「これからも、よろしくね。本当に」


 ベッドの上に放り投げてしまっていたビンをもう一度手に取って、栓を開ける。


「••••••何この薬」


 猛烈に臭いんですけど。


「はやふほんひゃっへくれひゃい!!」

「なんて言ってんのかわからない!!!鼻つまむな!!って、ガスマスクとか持ってんのか!あんたは!!」

「アリシアさんの分もありますよ!!」

「ありがとうございます」

「私のは!!??」

「こんなものつけて飲めるわけがないでしょう!!!!」

「威張るんじゃないよ!!!」

「ほら、早く飲まないと邸中がこの悪臭に染まるんですよ!!!いいんですか?!」

「どうせなら、邸中の人間にも味合わせてやるーーー!!!」

「最悪だ!最悪なファレル様がここにいる!!!」

「最悪でいーし!!こんな臭い、人間の作るものじゃないー!」

「俺が人間じゃないと言いたいんですね?!」

「魔女か、妖精か、エルフだよぉ!!」

「なんて、メルヘンチック!!あと魔女はないです!魔法使いですね!!」

「大丈夫!!ゲイルなら女体化してもかわいいよ!!」

「何が大丈夫なんですか!!」

「全部!!」

「そこは答えるところじゃないです!!」

「ゲイルさんとファレル様じゃ事が進みませんね。私も参戦します」

「助太刀頼む!!」

「俺が、ですよ!!」

「ゲイルさん、ファレル様を羽交い締めにして下さい」


 え、まさか、いいい、いや、だよ。

 いつの間にかアリシアにビンを取られていた。


「ちょ、アリシアさんご乱心ーーー!!!」

「決めたことは成さなければ。申し訳ございませんっ!!」


 口にビンを突っ込まれて、液体が口から喉に流れ込んでいく。私は飲み込むしかなかった。


「っマズ!!本当はゲイルは魔法使いかゴブリンかゾンビじゃないの?!」

「訂正受け入れてる!!でも怖い方向にすすんでる!!」

「ゲイル!!水持って、来、てぇ••••••」


 体に力が入らず、後ろのゲイルの胸に倒れこむ。______すごい、眠い••••••。

 そして、私の意識は落ちた。

場面が変わるときに★入れてみました(^∇^)

あと漢字が心配なとこが多いです(汗)


今回も更新遅かったのですが、

本業の事情でますます遅くなりそうです(; ̄ェ ̄)でも、見捨てないでください(ー ー;)ちょくちょく更新しますので。


今回もありがとうございました(^ω^)

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