13 失くなるものなら手放そう
12と11を少し変えたので、わかりづらいかもしれないです。すみません(汗)
「記憶が••••••無い?」
陛下が頷く。
彼がこんなことになったのは私のせいだ。私を庇ったから。私が巻き込んだんだ。私とあんな契約をしなければ、巻き込まれることも無かった。距離を縮めなければ。
「私の、せいです。私がっ、巻き込んだから!!••••••申し訳ございません」
「そなたはライアを助けてくれただろう」
ライア様は、助かった。傷一つも無かった。でも、ライア様が巻き込まれそうになったのだって、私のせいだ。
「••••••フィリウスは記憶が無くとも助かっているんだ。重ね重ね聞くが、フィリウスに会いたいか?思い出されたいか?こちらは知っているのに、フィリウスが知らないということは、辛いかもしれない」
「会いたい••••••とは思っております。だけど、思い出してほしくはありません」
思い出されるべきではない。
「理由を聞いてもいいか?」
「私が、巻き込んだからです。これ以上巻き込むのは避けたいと思いますので」
「フィリウスは恋人を思い出すことができたら、喜ぶのではないか?こうなったのも、恋人を守るためだろう」
違う。恋人じゃない。今も前も、恋人じゃない。物理的に近くなっても、心の距離はわからなかった。私は、楽しかったけど、彼はどうだったんだろうか。
「••••••私と王太子殿下が恋人であると知っている人はどのくらいですか?」
「こちらは、私と王妃とライアだ」
「では、ライア様をお呼びいただいてもよろしいですか?」
「わかった••••••が、何故だ?」
「言わなくてはならないんです。とても、大切なことを」
私達の嘘を。私が彼に吐かせた嘘を。
「ご機嫌麗しゅう、両陛下。ご機嫌よう、ファレル」
「ご機嫌よう、ライア様」
ライア様は思いの外早くやって来た。そして、私の隣に座る。向かいには両陛下が座っている。
「これで全員揃った。話とは?」
国王陛下に促される。
「これから話すことに対してと、話し方が礼を欠いてしまうかもしれないこと、先に謝らせていただきます。本当に、申し訳ございません」
謝ってどうにかなることでもないのはわかってる。それだけのことをしたんだ。
「私と王太子殿下は、契約していたんです」
「どのような契約だ」
「••••••身代わり契約、です。私が色々あった末に王太子殿下の秘密••••••弱味を握ることになり、そこから始まったことです。全て、私の我が儘から始まった契約です」
あの、舞踏会の日に始まったこと。
「だから、私と王太子殿下は恋人ではないのです」
「••••••フィリウスとあなたは恋人では、なかったの?」
「王太子殿下に好きな方ができるまで、という約束で契約をしていました」
彼に好きな人が出来なければ、私がずっと傍にいられる、そう思ったこともあった。この気持ちに答えを出したかったけど、もう、出すのは難しいんじゃないかな。
「だから、私は殿下に思い出されるべきではありません。私は、殿下の秘密を決して口外しないと誓えます」
三人とも、怒っているというより、あっけにとられている表情だ。
言わないといけない。全て話すと決めた時、決意したこと。それを今、真実にする。
「隣国から人質の要請が来ているというのは、事実ですね?」
「そうだ。だが、何の関係がある?」
「まだ、誰を人質になさるか、決めておりませんよね?」
「ああ••••••そういう、ことか」
「私を人質にお出しください」
これで、もう彼は巻き込まずに済むはず。
「私は公爵家の娘という身分なので、申し分ないと思うのですが」
「いいのか」
「はい。それに、本当に秘密を口外することはございません」
これも、一つの決意。
「私は、記憶を消しますので」
これが、私の決めたこと。ゲイルが作ってくれるかは、また別問題だけど。
「っ何言ってるのよ!!記憶を消すって、全部忘れちゃうのよっ⁈」
「••••••ライア、落ち着きなさいな」
ライア様に肩を掴まれたのを王妃陛下が嗜める。
「お心遣い感謝致します、王妃陛下。ですが、大丈夫です」
「なにも大丈夫じゃないでしょうっ!!」
ライア様は肩から手を離し、膝の上でぎゅっと握って話を続ける。
「私のことだって忘れてしまうのよ?!」
「また、作っていきますから、大丈夫です」
「でも••••••」
「また、今と同じように作り直すんですから。違うのは、隣国に行くってこと。それなら王太子殿下を巻き込まずに済むのではないかと思う」
「私からも聞く。いいのか、ファレル嬢」
「心配ございません。だから、私を人質にしてくださいませ」
もう、話は終わった。
「では、失礼させて頂きます。後々、父にもお伝え願います」
「わかった」
家に帰って、ゲイルを説得しないと。
「待ちなさい、ファレル!」
「••••••ライア様?」
嫌な予感しかないからさ、さっさと帰っときたいんだけど。
「私の話は終わってませんわ!私の部屋に来なさい!!」
両陛下の御前でなければ盛大に溜め息を吐くところです。
「本当に忘れちゃうのよ?」
「いや、言ってる本人なんでわかってますよー」
「お兄様にも会わないのよ?!耐えられるの?」
「いや、そのためにも忘れるんじゃないの?」
「じゃあ、お兄様に会えないのは苦しいのね?」
「ゔ」
ソロソロとライア様の顔を見る。•••はい、すっごいいい笑顔いただきましたー!!
「ああああっちも忘れて、こっちも忘れれば会わなくても苦しくなんてないでしょっ⁈」
「でも、お兄様の気持ちはどうなるのよ」
「はい?殿下の気持ち?」
「お兄様、不憫すぎる••••••。どうせなら、ゲイル?だったかしら、あなたの侍従と恋に落ちれば楽しかったはずよ」
「あの〜、しれっと私情を挟むのはやめて下さい。うちの従者を巻きこむのはライア様でも許しませんから。そんなことになったら私はどんな顔してゲイルに会えばいいんですか」
「お兄様は実の妹から見ても、見目麗しいわ。ゲイルだってそうでしたわ。身分差の恋愛よ!」
「はい、殿下とライア様は本当に同じ血が流れてますね」
彼もそういうのには敏感に反応していた気がする。
「私を見てそんな顔するくらいなら、お兄様に会えばいいと思うのだけど」
「••••••私、どんな顔してました?」
「ふにゃってした顔。すごく幸せそうな」
「今、幸せって状況ですかね?幻覚じゃないかな、幻覚」
「で、お兄様の気持ちはどうなるのよ」
「私を憎むか恨むかしてるんですか。まあ、仕方ないですよね。でも、記憶が無くなれば関係無いですかね?」
「殴ったらその鈍感な頭もどうにかなるかしら?」
「どうにもなりません。あと、それは私のことですか」
どっちかとゆーと鋭い方ですから!人違いですね。
「あのね、なんで、私も両陛下も怒らなかったと思っていますの!」
「さあ?なんでですか?」
「本当に仲睦まじ気だったからよ!」
「あ、殿下、好きな人いたんですか••••••」
「勝手に落ち込むのはやめて下さらない⁈あなたと、お兄様よ!!」
「え?まあ、仲悪くはなかったですよね」
「恋人同士のようだったわ」
そんなこと思って見てたんかい。
「本当に、好き合っていたわ」
「••••••やめて下さい。私は、この気持ちに答えを出したくない」
一緒にいて楽しい。笑顔が嬉しくて、胸がぎゅっとなって、なんでか泣きたくなる。彼の隣に自分ではない誰かが立つことを考えて、苦しい。今だって、苦しい。
この気持ちの答えを知ったら、私は進めなくなる。
「少なくとも、お兄様はあなたのことを、」
手で耳を塞いで、首を振る。
それだって、聞きたくなかった。本当はずっと聞きたかったのに、今は聞きたくない。
私は決めたんだから。彼と、さよならするって。
シリアスな回の筈だったんですが…。
脱線したところが…。
今回もありがとうございました(o^^o)