表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社交辞令とかいいから、身代わり契約とか如何です?  作者: 音羽 雪
私と彼の身代わり契約。
13/23

10-2 二つに一つ

会話文が多いです。

「あの、何故にライア様はマナティアが、その、ビッチだと思ったの?」

「おかしいからよ。真性の変人ね」

「はあ••••••」


私の覚えている中では、マナティアは自己チューで生意気で、陰湿ないじめをしそうな人。変人の片鱗は無いんですけど。


「すちる、とか、こうりゃくたいしょう、とか、フィリウス様まじもえ、とか。独り言で聞こえているとは思っていないようなのですけど、丸聞こえですわ」


え?

それ聞く限りだと転生者ですよね、マナティア残念。『もえ』って、『萌え』ですよねー。他は身に覚えがなさすぎてわからないけども。





時は夕食後。


「ってことがあったんですよ、お父様」

「あー、転生者だね、転生者」

「やっぱそうですよねー」

「思ったより多いものだね」

「みんな親戚だし、世間は狭いものだー」


お父様で大分耐性がついてそこまで驚いても無い。お父様も然り。


「でも、すちる、も、こうりゃくたいしょう、も、聞いたことが無いんだけど、わかります?お父様」

「僕の娘がしてた乙女ゲームのことじゃないかな」

「ちょっと待ってください。娘さん、何歳ですか?」

「十二歳だよ。すごく可愛くてね。僕にもお母さんの方にもべったりだったよ」

「惚気はいいです」

「はいはい。その乙女ゲームの攻略を手伝ってたんだ」

「え、お父様は何歳だったんですか」

「四十」

「いい年のおじさまが何してんだ••••••」

「可愛い娘に上目遣いで『お願い♡』されて断れるわけ無いでしょう⁈」

「自信満々に言うことですかね?それ」

「ファレルでも断れないよ」

「わかりました。いざって時に使います。で、すちる、こうりゃくたいしょう、とは?」

一枚絵スチルはね、イベントシーンで正しい選択をすると表示される特別な静止画、みたいな感じ。攻略対象は、恋人にできる可能性があるキャラ、だった気がする。

「要するに、マナティアは乙女ゲーム好きな人間だった、と」

「あとさ、少し聞いていいかな?」

「何ですか」

「フィリウス殿下って、どんな方だい?君の知っていることを聞かせて」

「金髪碧眼。眉目秀麗、頭脳明晰、品行方正。王子様キャラがもろでてますよ」


王子様。女子が望む王子様そのもののフィリウス様。


「まさか••••••」

「そういう可能性だって考えられない?ここは乙女ゲームとか、そういう世界だって」


作り物の世界。でも、これが現実なのは確かだ。驚いたけど、何も悲観することはない。


「びっくりですね。でも、何も変わらない気が」

「変わるよ」

「え?」

「マナティアが城に入れたのは何故だと思う?」


お父様の言いたいことがわかってしまった。

いくらマナティアが私の従姉妹で、私に会いたいからって王城に入れる訳がない。だって王城はこの国で一番大切な人達を守る場所。それに私に会いたいならこの公爵家に来ればいいんだから。


「マナティアはきっと、この世界の主人公だよ」


一瞬モヤっとしたけど、何に?動揺は億目にも出さず、話を続ける。


「そうだとしたら、何で私が今フィリウス様の隣にいるんですか」

「さあね。でもマナティアは王城に入ってきた。主人公として生きるつもりだよ。だからこそ君に何をするか、わからない」

「もと、剣道部をなめないでください。やわなことじゃ折れたりしませんよ」

「でも、マナティアが主人公だ。もしこの世界が彼女の手中にあるとしたら、君は最悪、殿下に殺される」


フィリウス様に殺される。つまり、邪魔者は消えろってことか。愛する人と結ばれるために今いる恋人を殺す。

でも、私は恋人じゃない。本物じゃない。本物になれない。私が身を引けば、私が殺されることもないんじゃないか。


「ファレルは恋と自分、どっちか選べる?」


フィリウス様に抱く気持ちは恋じゃない。少しの親愛の情と、感謝。だけど、また私はあの子に奪われるのだろうか。この幸せな時間を。





その後解散し、自室に戻って、風呂に入りながら、風呂に上がってからも考え込む。

私がフィリウス様に殺される。••••••全然、想像できない。

でも、そうなったら私はフィリウス様に剣を向けることができるのかな。私は、私を殺そうとするフィリウス様を見て、生きるために殺すことができるのだろうか。


コンコン


考え込んでいると、ノックがあった。


「ファレルー居るー?」

「お母様!」


ドアを開けるとお母様。しかも、寝間着に枕を持った夜の完全装備。


「あの••••••?」

「今日は一緒に寝ましょう?親子水入らずで!!」


はい、断れない強制参加のやつですね。まあ、断りませんけど。あのベッド大きいんで、二人くらい楽勝でしょうね。••••••お母様、ベッドに直行しなくても断りませんって。

さっさと潜り込むお母様の隣に潜り込んだ。


「ねえ、ファレル」

「何ですか、お母様?」

「フィリウス様のこと、本当に好きなのね」


何て話始めるんだ!!身代わりだとは言えないっ!


「ま、あ、•••だからこその恋人、ですから」

「でも、好きだから恋人っていうことが全てでは無いでしょう?」


それは、わかっている。私自身がそうだから。

最近、忘れそうになる。フィリウス様といるのは、楽しいから。タクと声が似てるから、身代わりにしたはずなのに、そんなことはどうでもよくなってきている。

それに、苦しい。寂しいというか。

『その時、フィリウス様の隣に立つのは誰なんだろう』

『え?私達、契約で恋人してるんだよ?フィリウス様の好きな人と結婚しなきゃ。私はそれまでの約束でここにいるんだよ?』

自分で言ったことが自分に刺さった。この時間がずっと進むわけではないとわかっていたのに。


「本当に、好きなのね」

「••••••好きって、どんな気持ちですか?」


ゲイルを好きかもしれない、と思ったこともあった。タクに対する気持ちと同じ。

でも、フィリウス様に対する気持ちは、初めてだ。楽しいのに、苦しい。胸がギュッとなる。モヤっとする。嬉しいのに、泣きたくなる。


「それは、自分で考えなきゃ」


お母様は微笑んでいる。お母様は、全てを知っているのかもしれないとも思う。

言えない自分が辛い。私は、いつも言えない。言えない辛さを知っているのに、また繰り返している。


「••••••いつか、今度は私がお母様の部屋に行ってもいい?」


その時には、言いたい。真実を。

お母様は、笑顔で頷いてくれた。





「愛、俺のこと好き?」

「なっ何?突然」

「お願い、答えて」


タクの真剣な顔を見て断るなんて、私にはできなかった。これが夢だとわかっていても。


「好きだよ」


まだ、タクは私をじっと見ている。満足じゃないんだ。もっと言わなくちゃいけないのか。恥ずかしすぎる。


「一緒にいて、楽しい。側にいると安心する」

「••••••苦しくなったり、する?」

「するわけ無いじゃん。心配しないで。タクの隣で苦しくなったことなんて、無い」

「••••••そっか」


タクは、泣き出しそうな顔で笑った。

タクの誕生日の記憶。

私は、今もタクが何で泣きそうに笑ったのか、わからないまま。何も、進めてない。





いつの間にか私は、駅のホームに立っていた。

私は、これから電車が来ると確信していた。

その証拠に電車のガタンガタンという音が聞こえてくる。血が騒ぐ。嫌な予感がする。何か、起こるのだろうか。誰かが、死ぬ?タクが••••••?

ああ、こう考えた自分を私は知ってる。

死ぬのは、私だということも知っている。

前に押し出されて、落ちる浮遊感も。


頭を何かにぶつけて、私の目の前は真っ暗になった。


タクに謝りたかった。ごめんねって。夢の中でも、伝えることができない。悔しくて、必死に目を開ける。


「だ、れ?」


ぼんやりとした私の視界。駅のホームで私を見下ろしている人。今まで余裕がなくて気付けなかったの?


あなたは、誰?


電車が通り過ぎた。

今回もありがとうございました(^_^)


タイトルを変えました。音羽の都合です。今後の構想を練ってたら…。

これからも、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ