10-1 うつくし王女の裏の顔
更新が遅かった上に、少なめですみません…。
「もう体調は大丈夫だったか?」
「うん。心配かけてごめん。ほんとに大丈夫だったのに」
「倒れたんだから、休んどいていいだろ」
「いや、暇すぎて街に出たから」
「ま、街?」
「そう、街。あと、ゲイルにブレスレットもらった」
ほら、と腕を見せてくる。••••••意味がわかっているのか?この国で男から女にアクセサリーを渡すって、もう誰かのものであることを示すやつだった気が。果たして、渡したやつも意味をわかっているのか。確か、かなり仲の良さそうな従者か。そいつには俺が身代わりであることを伝えたのか?身代わりを知ってこれを渡したならわかってると思うが。
「フィリウス様?」
「なんだ」
「何か怒ってます?不機嫌そう」
怒ってるのか、俺は。何に不機嫌なのかがわかりたい。
「街に行くのに誘わなかったから?次、一緒に行く?」
「ああ。街の様子、というものも知りたいしな」
「フィリウス様、いい王様になりそう••••••」
「どうした、急に」
「国のことに興味あることは大事だよ」
この間までこの国のことが好きなのかもわからなかったんだが。ほんとに、ファレルはあっさりと踏み込んでくる。
「人に言われると嬉しいな」
「その時、フィリウス様の隣に立つのは誰なんだろう」
「え?」
「え?私達、契約で恋人してるんだよ?フィリウス様の好きな人と結婚しなきゃ。私はそれまでの約束でここにいるんだよ?」
わかっていたはずのことに胸がもやっとした。ファレルの隣が心地いいから甘えようなんて、馬鹿な考えだ。
「フィリウス様?」
「あ、いや、久しぶりにアレ(・・)を読みたくなって••••••」
俺は何馬鹿なことを言ったんだろう••••••。
「アレ、か」
俺の馬鹿らしい発言で辻褄があったようだ。日頃、自分がどんな目で見られているのかがこんなところでわかるとは。しかも、真剣に付き合ってくれる気らしい。
「王女殿下のところに行く?」
☆
「急な失礼をお赦しください、王女殿下」
「いえ、大丈夫よ。ファレル様、お兄様」
「••••••急にすまない」
「お兄様がいらっしゃるのはいつも急でしてよ?」
フィリウス様と揃いの金髪に緑の目の綺麗な人だ。
••••••フィリウス様、王女殿下の尻にひかれてない?
「それにしても、本当に恋人なのですね」
「はい、フィリウス様からお聞きに?」
「ええ。こんな兄を知っても付き合って下さる方がいると聞き、おどろきでしたわ」
本当に、フィリウス様言われ放題ですね。••••••さりげなく、私のことも『珍妙な女』だと言っているように聞こえるんですけど?
「マナティアにはいつもお世話になっておりますわ」
は?マナティア?何故出てきたーー⁉︎
「マナティアが、どうかなさいましたか?」
「マナティアから聞いていらっしゃらない?マナティアとは、友人なんです」
「はあ•••そうでございましたか•••。マナティアはどのような感じですか?私、従姉妹なのですがあまり会ったことがなくて」
「先日、マナティアと会った時に倒れたと聞いたのだけれど」
鋭いっ!貧血だと誤魔化したけど、マナティアと会ったからだとばれてるんじゃ⁈
「どういたしました?ファレル様」
「いいえっなんでもございませんっ」
「なんでもない顔ではないわよ?」
にっこり、と笑った王女殿下が怖すぎるっ!私、顔に出てんの⁈最近周りに味方が増えて気が緩んでるのかしらっ⁈前の自分に戻るだけでいいのに!
「マナティアのことをどう思っていらっしゃるの?」
ヒイイィィイ!!これ、嘘ついちゃダメなやつだ!!!王女殿下、美少女で笑顔がお美しいはずなのに、ひたすらおっかねえです!
「あ、ああああまり、得意な方ではございません」
「ですわよね」
ちょっと待て。今なんと?にっこり、したままだし。
「あ、の、王女殿下?」
「ライアと呼んで」
「は、はい。では私はファレル、で」
「これから仲良くいたしましょう、ファレル」
「あの、マナティアの話は••••••」
「あのビッチがどうしたのかしら?」
ビッチぃ⁈
おい!ちょっと待て!!私の脳内が落ち着くまで待て!!!
「貴方がお兄様と付き合っている理由がわかったわ••••••」
「ファレル!話し方!!」
「こ、声に出してました••••••?」
「そりゃあもうバッチリと出ていたわよ」
どうしましょ。さすがに王族への無礼に捉えられるかなー••••••。
「弱味でも握られたのかと思ったけど、似た者同士だったのね」
それ、前半の方が近い。
「大丈夫だ」
「何が?フィリウス様」
「うちの妹は男同士の••••••めくるめく世界が大好きだ!」
「はい?」
「お兄様⁈何暴露してくれているの⁈」
「弱味には弱味かと」
「脅したりするわけ無いでしょう⁈馬鹿兄様!!!!!!」
「え?いや、男同士のめくるめく世界て何だ⁈」
「これを見れば分かる!」
「ちょっとお兄様!!!」
本が投げられてきた。キャッチした本の表紙とタイトルを見てギョッとする。
『夏の熱い夜を貴方と』。そして絡み合う••••••男二人。これって、あの、所謂、
「ライア様って、腐女子⁈」
あっ。サーッと血の気が引いていく。咄嗟に口を押さえる。けど、何言っちゃってんの私!!お、驚きすぎたからって、言っちゃダメなやつだろ!!!いつの間にか本を胸に抱え込んで下に向けていた視線を上げる。
「腐女子って、なにかしら?」
にっこり笑ってるライア様、さすがの迫力ですっ!!怖イィ!
「ふ、ふふ腐女子とはっ••••••そのですね••••••あの••••••耳を貸してください」
フィリウス様の前で堂々と言うものではない。これは、さすがに!!羞恥心が勝る!!!
「怒らないでくださいね?」
きちんと前置きはしましたからね?
「(『女性の存在を不要とした男性のめくるめく世界』が大好きな女性のことです)」
よく、声が震えなかったね私!!自分を褒めます!!!
内緒話が終わったので、少し離れたライア様の様子を見る。
「自分の生態をこんなに正確に表してくれる言葉があるとは思いませんでしたわ•••!」
「ライア様••••••?」
「本当に、あの糞ビッチの従姉ですの⁈」
「あの、さっきより表現が悪化して、」
「大違いですわね!!••••••あ、お兄様!」
先程からおいてけぼり状態のフィリウス様。突っ立ったままだったのか。
「是非、ファレルとご結婚なさって!!」
「は?」
「ファレル!お義姉様と呼んでもよろしい?」
フィリウス様の方を見る。ダメだこりゃ。
「ちょ、ちょっと、フィリウス様を正気に戻してくるので席を外しても?」
「わかりましたわ」
「隣の部屋借ります!!」
思いの外あっさりと了承してくれた。ダッシュで隣の部屋に駆け込みました。よし取り敢えずは、この人の機能を再開させないと。
でも、どうやって?というか、ライア様はどうやると思ったんだ?聞けばよかった••••••。
これ、効くかな?
「レモネード、ミルフィーユ、キプフェル、ミアス、トルテ、ノエル、」
「止めろっ!!!!!」
「あ、効いた」
フフフ、説明しよう!先程の魔法のじゅもんは菓子の名前の羅列に聞こえるけど、アレに登場するヒロインの名前なのです!!!!効果抜群だな、うん。
「で、どうします?話は聞いてたよね?途中から意識がとんでだけどー」
「ライアは?」
「快くお隣の部屋を貸してくれましたー!」
「快く••••••」
いや、待て。何?その急な沈黙は!そして、何故赤くなる?意味がわからない。
「早急にこの部屋を出よう」
「はあああぁ⁇⁇‼︎‼︎」
いや、勝手に一人頷いて納得すんな!!
「••••••その心は?」
ジトッとした目で見る。目をそらしたって無駄!ジトジトはやめないんで!!
「ここここここここんな」
「はい?鶏でもいるんですか?」
「王城の一室に居るわけがないだろう!!」
「じゃあもっとわかりやすく」
「ほら、周りを見ろよ!何がある⁈」
「何言ってるんですか。ベッドと、椅子と、ソファと、テーブル。あ、ほら、シャワールームまであるんですか!!このっ王子様めっ!!!菓子も置いてありますし、気が利きますね!さすが王城!!」
「そういう問題じゃないだろ!!!」
「じゃあ、何か問題でも?明確にして下さい。そこまで言うなら、できるよねー?」
「お義姉様、さすがにお兄様がかわいそうです」
いやいやいや、ちょっと待て!どこが⁈一パーセントもかわいそうなところないって!!ってか、なんでライア様⁇‼︎
「すごい大声が聞こえましたので、途中から聞いていました」
あー、確かに出した気もする。
「お兄様••••••」
なんでかわいそうなものを見る目で肩をポンポンしてるんですかね?そして何故、甘んじて受ける、フィリウス様。
なんで、美しい兄妹愛を見る羽目になってるんだ、私。
今回もありがとうございました(o^^o)
いつの間にか、私が書いたものの中で最長になってます。これからもよろしくお願いします(⌒▽⌒)