1走馬灯(?)で前世を思い出す
新連載です!まだまだ稚拙な文章ですが、どうぞよろしくお願い致します。
繊細な飾りが凝らされた部屋。朝日に反射し、キラキラと宝石を輝かせるドレス。
「「「おはようございます!お嬢様!」」」
「おはようございます」
「今日も見目麗しくあらせられます!」
「ありがとう」
そう!完璧な朝で最重要なのは美しい、わたくし!
「本当に美しいですわ・・・ファレル様の微笑みなんてもう•••••」
うっとりとする侍女A。彼女も美しい。ま、わたくしには劣りますけれど!でも、侍女も美しいからこそ、わたくしの神さえ見惚れる美しさが際立つというものですわ。
でも、
「貴女、もう来なくていいわ」
「え、わ私が何か•••••」
「わたくし、貴女に名前を呼んでいいなんて言った覚えはなくてよ」
侍女Aが固まる。わたくしは目に留めるだけ。関係ありませんし。
「お嬢様、朝食の場に向かいましょう」
「ええ•••、では、失礼」
侍女Aを含めない十人程の侍女を連れて歩き出した。はあ、朝から無駄な労力を使ってしまったわ••••。
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう」
「おはよう、ファレルさん」
「いただきます」
部屋にいるのはお父様とお母様とわたくしの三人。両親も(・)眉目秀麗という言葉がふさわしい。響く音はナイフとか、フォークが動く音。
ファレル・フレムダレム伯爵令嬢。それがわたくしの名前と肩書き。十五歳になったから、社交界デビューも近い。
社交界デビューの舞踏会で、わたくしはわたくしに相応しい相手を見つける。つまり、結婚相手を。
わたくしに政略結婚させられる覚悟が無いわけでは無いの。
悔しいだけ。
このまま、忙しいからと、わたくしの相手をしてくださらないお父様とお母様の言いなりになるのは。
この両親は多分、放って置いてくれる。それにはリミットがあるけれど。
それでも、今年の社交界シーズンは大丈夫だろう。だから、できれば、今年中に結婚相手を見つける。
幸い、わたくしは艶のある銀の髪、鮮やかな紫の大きな目に形のいい鼻、化粧をせずとも桃色の唇、きめ細かな肌。体つきも華奢だし、スタイルもいいと思う。というか、事実ですし。薔薇に例えられますしね。
「ごちそうさま」
「では、また昼食で、ファレルさん」
「はい、失礼します」
侍女達を下げて、一人になり、バルコニーから、綺麗に整備された庭を眺める。春になりかけで、咲き始めの花が見える。少し、肌寒い。
「お嬢様」
「•••••わたくし、一人になりたいと言ったと思うのですけれど」
「ええ」
「それに、貴女にはもう、来なくていいとも言ったはずよ」
「そうですね」
「それなら、わたくしの視界に入らないで。貴女の代わりくらい、いくらでもいるのだから、気にしなくていいわ」
「•••••知っています」
「なら何故、ここに?」
急に、背中に衝撃が走った。状況を把握する為に頭が働き出す。
「なに、を」
背中に当たっているのは、バルコニーの柵?なら、わたくしは反転させられたのだろうか。
多少でも訓練を受けた侍女Aにわたくしは軽々と持ち上げられ、柵に座る状態になった。
「知っていますか?」
背中の痛みがまだ残っている。意識がぼんやりとなる。ぼんやりとしたわたくしの体はは侍女Aの手によってあっさりと背後に傾ぐ。
「さよなら」
見上げた顔は、笑っていた。憎しみがこもっている•••••?下は庭だし•••••。
わたくしは、死ぬのね。
『知っていますか?』と聞いたわね、貴女。
知っている、わ。侍女達に疎まれていることも、両親に愛された記憶がないことも。
きっと、誰も愛されず、求められず、生きることも。
きっと、わたくしも、愛せず、求められなかったわ。
でも、愛されて、愛して、求められて、求める。
そんなことを望んでいたわ。
死んでも、いいのかもしれない。死んだ方がいいのかもしれない。
微笑んだ。貴女がうっとりとしたときのように。憎まれていたのなら、貴女は、わたくしを見てくださったのね。
このまま、生きていたって、愚かな、わたくしは、きっと、自分さえも、愛せなかった。
「さようなら」
目を閉じ、自分から意識を手放した。落ちる一瞬が永遠に感じられる。
☆
「ま•••な•••••早く起•••き••ろ」
誰•••••?
「まな」
まな?
「愛!」
目を開ける。声がした方には少年がいた。
「やっと起きたか」
溜め息混じりに言われる。周りを見渡す。•••••えいがかん?
「タ、ク?」
この少年は、タク?じゃあ私は、中川 愛?そうだった。何で一瞬忘れていたんだろ。私達、デート中のはず。
「急に何?」
「なんとなく」
「自分で見たいって言った映画で寝るなよ」
「だって、暗いと眠くなるんだもん!!」
「金がもったいない•••••」
「で、どうやって終わったの?『乙女チックレボリューション』!!」
「何度題名聞いても変だよな」
「うるさいな!」
「お前もうるさい。とりあえず、館外に行ってなんか食おう」
大声でやり取りした所為で、周りの注目を浴びていることに気づき、慌てて荷物を持って歩き出した。そして、タクは一緒にいて楽しくなる男子だと、ふと再確認した。
結局、近くのファミレスで食べている。因みに、私は苺パフェ、タクはカレー。言っておくが、今はおやつどきだ。だから、決して『昼ご飯をパフェで済まそうとした』と思わないでください。
「で、どうなったの!」
「女と男が出てきて、最終的にくっついた」
「適当すぎでしょ!」
「面倒。パンフレット渡すからそれでも帰って見とけ」
「何その微妙な気の利かし方!そんなら、最初からそうしとけよ!!」
「今パンフレットのことを思い出した」
「このっ、自由人!!」
「それは、『何事にも縛られず、自分の信念を突き通す人間』と受け取って置く」
「ポジティブシンキングすぎる!!」
「ネガティヴシンキングよりはマシだろ」
「落ち着け、私。こいつを言い負かすのは諦めるのが得策だ」
「いや、心の声漏れてる時点で落ち着いてないだろ。そして、俺を言い負かそうとしてたのか。••••••でも、諦めるって時点で言い負かすには得策ではないよな•••?」
「心の声ってわかってるなら放って置いてくれ!!反応すんな!!!」
「お前、ホントさ、学校からのキャラ変が激しすぎる」
「対人能力が歪んでるんだよ!」
「歪みまくってる、の間違いじゃねーか?基本、心開く気ないよな?恐れられまくってるしな」
「あー、何でだ?怖がられる要素、ある?」
「目一杯。氷の仮面とった中身これなのにな」
「『氷の仮面』って何⁈」
「そう呼ばれてるな」
「マジで••••••」
「マジで」
「中身これなのに怖がらせて申し訳ない」
「なら、素になれよ」
「無理」
「あー、即答してるうちは無理だな」
「そうか」
「あと外見も関係あるんじゃ?」
愛の容姿は黒眼黒髪。長い髪を一つにまとめていて、メガネをかけている。
「その目自体は細い訳でもなく普通だけど、警戒心が漏れた目付きがな」
「そんなこと言われても、こちとら十七年間この目付きで生きてきてるんだけど」
「そーだよな」
ってことは今の時点ではやっぱ無理ってことか。はーあー。
「っおい!そのパフェを刺す勢いでぐっちゃぐっちゃにしていくのは止めろ!!」
「別に私が食べるんだし」
「よくない!見ている方はよくない!!」
「では、よろしくない理由を十個以上あげて下さい」
「三つならともかく、十個はないだろ!!」
「じゃあ、仕方ないから三つ。でも、一つ千文字以上ね」
「無茶振りすぎる!」
その間にもパフェの形は無残になっていくことにタクが気付く頃には既に原形を留めている苺はいなかった、とだけ言っておく。
帰りは電車を使うので必然的に駅に行った。帰宅ラッシュ?なのか人も多い。早く乗りたいが為に、最前列に立つ。
『じゃんけん負けた方がジュース奢りね!』とじゃんけんし、愛が勝った為、タクは現在自販機へ走っているはずである。だけど、遅い。もうすぐ電車が来そうだ。というか、来る。
さっきから自分が視界に既視感を感じる。一度体験したことを追体験しているような。とりあえず、既に体験したことだからか電車が来るという確信がある。
その証拠に電車のガタンガタンという音が聞こえてくる。血が騒ぐ。嫌な予感がする。何か、起こるのだろうか。誰かが、死ぬ?タクが••••••?
思考に没頭する。その時、
また前に押し出された。
また落ちていく感覚。
その時、思い出した。全部を。
死ぬのは、私だと。
頭を何かにぶつけて、私の目の前は真っ暗になった。
タクに謝りたかった。ごめんねって。
☆
「ん•••••」
電車にはねられる痛みが、痛みが••••••?痛みが、ない?結構近かったと思うのに。のろのろと目を開ける。と同時に思考がフリーズした。
緻密な細工が凝らされたシャンデリアのある天井。私の行動範囲にこんな煌びやかなものは存在していなかったはずだ。
思考が解凍された後、反射的に目を動かす。
銀色の••••••髪ぃぃぃ⁈
え⁈私の髪は確か黒だったんだけど!!決して銀色ではなかった!!光に透かしたとしても銀色にはならん!!!
ガバッと体を起こす。体に痛みがはしる。
そして、思い出した。
私は、ファレル・フレムダレム。侍女に突き落とされ、きっと、死にかけた。きっとそのとき骨でも折れたんだな。痛い。でも、よく生きてたね••••••。私の体、頑丈なんだろうか?じゃあ愛は、過去•••••前世になるのだろうか。
転生とかマジであるんだ••••••。とりあえず、ここは日本ではないだろう。小説、だったりするのかな••••••。私が読んでいたものではなさそうだけど。
パタン
誰?って、相手の女の人、目が点になってるんだけど。面白いからもっと観察しよー。相手の目を凝視する。
「もっ、申し訳ありません!!お嬢様!」
何故そうなる。しかも、お嬢様。いや、実際、お嬢様なんだけどね。怯えてる?ってそういや前世の記憶が戻る前のファレルは権力振りかざして好き放題してたしな。恐怖政治だったね。
まあ、前世の性格に影響されて、ボロを出さないようにしよ。公爵令嬢として生きているんだから。
「何を謝っているの」
「ノックもせずに入り、本当に申し訳ありませんでした!!!」
この人、手に水差し持ってるし気を失ってた私の世話係か何かだろう。だって、私の唇、ほっといたにしては潤っているから!!誰かが水を与えてくれていたとは思っていた。
まあ、私が起きているとは思わなかったよなぁ。本当に起きたのついさっきだし。
「いえ、気にしておりませんわ」
「え、あ、ありがとう、ございます?」
何故に疑問形!何故に戸惑う!!
「どちらかというと、こちらがお礼を言うべきですわ。世話をして下さり、ありがとうございました」
「え」
侍女のスキルを発揮して、どうにかしてその開いた口を閉じて!!
「ええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
咄嗟に耳を塞ぐ。私、お礼を言っただけだよ⁈前世の私でもお礼言って驚かれるほどじゃなかった!!記憶を取り戻す前のファレル!あんた!何やったんだ!!!
「何事ですか!!」
ほらー他の人来ちゃったし。
「この者が何か不作法でも⁇‼︎」
「••••••いや••••••お礼を言っただけなのですけど」
ほぼ知らない人との沈黙って、凄い心に突き刺さる••••••。
「ええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
••••••流行ってるのかしら、この叫び。この人、一応侍女長的な人だよね?周囲から見た自分の印象が垣間見えたよ。
部屋でじっとするのが暇すぎる。でも、振り返りとこれからについて考えるにはちょうど良かった。
きっと前世の記憶を取り戻•••面倒くさいからもう(仮)でいいや••••••。(仮)、ろくな人間ではなかったっぽい。うん、自分自身で行動を顧みても『ろくな人間ではない』という言葉に反論できないのが悲しい。他人扱いしていても、(侍女に聞いて私は運良く植え込みに突っ込んで三日間気を失ってたことが判明したため)三日前までの私なのだ。因みに、私がそれを聞いた侍女さんは二人と同じ反応を返してきた。いいもん。気にしてなんかないしっ!
それにしても、ここは良く分からない。日本語で話しているけど通じている。でも屋敷や、自分や他人の髪や目、外の景色から、日本ではなさそう。なんなんだ。きっと気にするべきじゃあないんだろう。じゃあ気にしない。
次に思うのはここの両親のこと。相変わらず、両親からは何もない。侍女を通して心配の言葉がきたけど、本心ではなさそうだ。本当に心配しているのなら、実際に来て欲しいものだ。
私も寂しいとかはないけど。愛も親と仲良くなかったから。
愛の家は四人家族だった。だけど、父親とは血は繋がっていなかった。そして、異父姉妹が一人いた。母親とは血の繋がった親子だったが、私は母親に疎まれていた。結婚した愛している男の子でないこともあっただろうけど。
私が母親を犯した男の娘だったから。
最悪なことに、私の目元はその男に似ていたらしい。母親と父親は恋愛結婚だったし、父親としてもそんな男と子など、愛することはなかっただろう。
義妹とも、仲は悪かった覚えしかない。私が誰かに迷惑をかけた記憶はないんだけど。
でも、親としての務めは果たしてくれていたから別に大丈夫だった。虐待を受けていた訳でもなく。ただ嫌われているだけなのが逆に痛かった。
家でも、外でも一人だった私に居場所をくれたのは、タクだった。それから、一人だが友達も出来たし、タクと一緒にいて、楽しかった。楽しかった。信じて、いた。だから、付き合って。本当に楽しかった。
でも、生まれ変わってまで両親と上手くいってないとはな。びっくりだよ。前世の記憶が戻った時点で親とは思うのが難しくなってるしねー。
でも、二度目の人生。二度目の人生だから、諦めるのは早い。前は努力しなかったんだから、今度は、努力したっていいんじゃないか。よし。
家族関係友好化作戦(略してKKY!)!実行しますっ!!!
読んで下さった方々に感謝です(T ^ T)