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校庭から生えている手は、<言霊>の力が続いているうちには届かないし、触れない。
しかし消えればそうもいかない。
庭を埋め尽くす手、手、手――。
まるで赤ん坊のように小さな手から、年寄りのような手まで、さまざまな手が自分を引きずり込もうとしている。
そう考えただけで、体中からイヤな汗が出る。
本当は泣き叫びたかった。
逃げ出したかった。
怖くて、辛くて――でも逃げたくも無い。
他の四人も同じように頑張っている。
特に自分は他の四人よりも、対抗手段を持っているだけマシなのだ。
「だからっ……泣いてるヒマなんかないのよっ!」
涙目になりながらも、校庭を走る。
レンズには強い気を感知する力を込めた。
実際、惹かれている。
実体に。




