uninstallation
はじめてのたんぺん。
1台のスマートフォンの中のただ広い世界に、私達は生まれた。
そこは、どんどん着色され、壮大で美しい景色になっていった。
その世界で、私は戦士だった。
導き手であるあなたに操られ、戦う毎日だったが、戦えることが幸せだった。
あなたは毎日のように私に会いに来た。
あなたが辛い時、悲しい時も私はあなたと共に戦った。
それで幸せだった。
ある日を堺に、あなたは私に会う回数が減った。
どうやら別の世界が出来、今はそこにハマっているらしい。
私はその世界を妬んだ。
しかし、妬んだところであなたは会いに来てくれない。
それどころか、滅多に会いに来てくれなくなった。
会いたい、あなたに会いたい。
その思いで一杯だった。
ある日、空が真っ白になった。
あんなに美しかった景色も、草原も、全て。
私の足が消えていく。
ああ、アンインストールされてるのか。
手が消えていく。
ありがとう。あなたにまた会いたいけど、それはもう叶わない。
今までありがとう。
そして、記憶が消えた。
大分すっきりしたアプリを見て、少しの虚無感を感じながら、俺は、スマホの画面をオフにした。