月光
雪水が初めて屋敷の門外に出た日の夜のお話。
初めての友達?いや、まだ知り合い程度か?
頭を巡らせてしまっているし、まだ胸がバクバクして、とても寝付けそうにない、初めて門外へと出た日の夜。
「・・・・月見でも・・・・」
寝床から出て、障子を開けると真司がいた。
「あ、こんばんは」
「・・・・何故いる?」
「やだなー。毎日いるぞー」
「不法侵入だ」
「毎日雪のところに通ってんじゃん」
何を言っても帰りそうにないので、羽織を羽織って真司の隣へ腰を下ろした。
今宵は満月だ。空は少し明るく、月の周りの星が見えづらい。その代わり、よく手入れされた綺麗な庭が見えた。
「何か、あったのか?」
「べつに」
話したがりだと思っていたので、素っ気ない返事に少し驚いた。
「そうか」
気にして欲しくないけれど、やはり心細い。そんな時はただ黙って傍にいて欲しい。その気持ちは分かる。今、真司がその気持ちだというのは保証はないがそんな気がした。私の場合はいつも、紅が傍にいてくれたから、大丈夫だった。
「・・・・そのままでは体を冷やしてしまうよ」
見れば真司は羽織を羽織っていない。
「オレはいいんだよ」
儚げに笑った真司を見て、これは結構参っているなと思った。
私と別れてから自邸宅で何があったか気になってしまう。
せめて、風邪を引かないようにと自分の羽織を広げて真司を取り込んだ。ぴったりとくっついた体が温かい。
「いいよ、雪。寒いだろ?」
「べつに」
お返しとばかりに素っ気なく返してやると真司が笑った。やはり、彼は笑顔が一番似合う男だ。
「ごめん。ごめん。・・・・ちょっと、家で驚いちゃってさー」
月を見ながら真司が話を続けた。
「こんなこと言ったら雪に悪いかもしれないけど、父様と母様に雪と遊んだこと話したら怒られた。雪と遊ぶんじゃないって」
まぁまぁ、予想はしていた事だ。世間体に見る私の立場は正直言ってよろしくない。私が存在する限り、帝の悪評に繋がってしまうのだから。
「何でだよ!!ってオレ怒ったんだ。そしたら、父様の口から雪の悪口ばっかり出てきて、聞いてられなくて、逃げた」
真司が怒ってくれたことに、無駄なことをと思う反面嬉しかった。
「真司。私は自分の立場をよく理解している。だから、真司が悲しむことはない。事実なのだから」
「雪までそんなこと言うなよ・・・」
「すまない・・・」
「雪が謝ることじゃない」
「・・・・・。きっと私は兄上達や弟達と違って表に出ることはないだろう。私とて、自ら出ることはしたくない」
「じゃあ・・・・」
口を開く真司を制した。
「だが、もし、表に出るような立場になったのならば、その時は胸を張って出よう。誰が何を言おうと、規則に背こうとも、私の守りたいものは全力で守る。それでいいだろう?真司。私は間違っているだろうか?」
ぶんぶん顔を左右に振る真司を見て、自然と自分の顔に笑みが浮かんだ。
「ありがとう。真司。私にとって君は掛け替えのない存在だな」
「オレだって!!!」
「ふふふ。そうだな」
暫く月見をしながら、腹を割って話し合った。話し合ったと言っても、ほとんど真司が話して私が聞くだけだったが、充実した時間だった。
翌朝、久しぶりに紅に起こされた。
「昨夜はよく眠れなかったのですか?」
「ん・・・まぁ、ね」
「そうですか。朝食を少し遅らせましょうか?」
「いや、食べる・・・」
もぞもぞと布団から出て、颯爽と着替えた。
朝日が部屋の障子を通して、この部屋明るく照らすように、自分のこの先も明るくなっていくだろうか。
雪水の決意、ですね。
真司に確認を取っているあたり、雪水らしいですね(*'▽')




