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5時限 結合

部長 「結合に入る前に簡単に周期表の話、というよりメインは金属元素とそれ以外は何かを話しておきたい。」

1年生「重要ですか。」

副部長「元素は種類ごとで大体同じ特徴を示すからね。やっぱり分かっていると分かり易いよ。」

部長 「そんなに本気で話さないから。まず、元素は原子番号に従って並べると一定の周期で性質が似たようなものが現れる、で、これを周期律という。そして、“元素を原子番号の順に並べ,周期律に従って性質のよく似た元素を縦の同じ列に並べた表を元素の周期表という。”1869年にメンデレーエフによってつくられたそうです。」

副部長「彼は惜しくもノーベル化学賞は取れなかったね。」

部長 「化学系の本には大抵載っている周期表なのに残念だな。まあ、化学史は分野外なので深くは説明できないが代わりに周期表の簡単な読み方の話しをしよう。元々する気だが。あまず、“周期表の横の行を周期,縦の列を族という。”見れば分かるが周期が7まで、族が18まである。そして、話すのが面倒だから各周期表を信じて金属と非金属の区別はしない。大抵の周期表がそれぞれしていることを私は信じる。代わりに忘れているだろうが電子の軌道で話さなかった何がどのイオンに成りやすいかを簡単に話そう。」

1年生「あ、ありましたね。」

副部長「思い出したなら、なぜ軌道で分かるか言及していたけど覚えているかい?」

1年生「……最外殻電子が何個になるか分かるから。」

副部長「正解。今なら最外殻電子の数が重要なのは分かるよね。」

1年生「はい。おかげさまで。」

部長 「ついでに、周期表は周期的に並べている。この周期は複数あるが、このうち一つは何の周期か今なら予想できるだろ。」

1年生「最外殻電子、価電子ですか?」

部長 「その通り。大抵、1族は1価の陽イオンに、2族は2価の陽イオンに、17族は1価の陰イオンに、2族の非金属は2価の陰イオンに成りやすい。」

副部長「18族は価電子が0の希ガスと呼ばれる反応し辛い元素群だね。」

部長 「さらに付け加えると17族はハロゲン、H以外の1族をアルカリ金属、Be,Mg以外のアルカリ土類金属、3~11族は遷移元素という。こっちは適当でいいな。」


部長 「“物質中の原子やイオンの結びつきを化学結合という。”」

1年生「え、いきなり。」

部長 「“陽イオンと陰イオンとの静電的な引力による結びつきをイオン結合という。”“原子間で出し合った価電子を共有してできる結びつきを共有結合という。”」

1年生「続けるんですか。」

部長 「“自由電子による金属元素の原子どうしの結びつきを金属結合という。”結合終了。」

1年生「えっと……、飽きました?」

部長 「飽きたというより。趣向を変えて結論から話してみました。次から解説に入る。」

副部長「結局は長々と説明するんだね。」

1年生「そうみたいですね。」

部長 「話しをした三つほど結合があるが区別は意外と簡単。非金属原子と非金属原子の結合は共有結合。非金属原子と金属原子の結合はイオン結合。金属原子と金属原子の結合は金属結合。非金属原子と金属原子は周期表で確認してもらうとして、区別の仕方はこれで大丈夫。大事なのは次から話す各結合の特徴になる。」

部長 「最初はイオン結合から、非金属原子と金属原子の結合であるイオン結合は“静電的な引力で結びついている。”下敷きと髪の毛な。」

1年生「最後の一言で一気に低レベルに。」

部長 「分かればいいんだよ、分かれば。静電的な引力、これをクーロン力というが、そもそも互いにクーロン力が発生する理由だが、これはさっきまでさんざん話をしたイオン化な。下敷きと髪の毛のようなナイスカップリングだと互いがイオン化し帯電。そのまま結合すると思えばいい。正確にはもっと違ってもっと複雑な気がするが今はこの考え方で十分だろ。」

副部長「実際の組み合わせは例えの下敷きと髪の毛ではなく、NaとClとかだね。」

部長 「ついでに他の組み合わせを羅列すると

Na +とOH -でNaOH(水酸化ナトリウム)

Na +とSO4 2-でNa2SO4(硫化ナトリウム)

Ca 2+とCl -でCaCl2(塩化カルシウム)

Ca2 +とSO4 2-でCaSO4(硫化カルシウム)

Al3 +とCl -でAlCl3(塩化アルミニウム)

Al 3+とO 2-でAl2O3で(酸化アルミニウム)

などがある。」

1年生「組み合わせは結構自由ですね。」

部長 「さっきの例に挙げた陰イオンと陽イオンはどの組み合わせでも物質があるからな。暇なら他の組み合わせも考えてみるといい。さらにいえば陰イオンも陽イオンも結構な種類があるからな。流石に何でもとはいかないが単純計算で陰イオンの種類と陽イオンの種類の積だけ組み合わせが存在することになるからな。」

副部長「さらに金属は大抵NaやCaといった金属の単原子イオンだけど陰イオンはOHやSO4といった非金属の多原子イオンもあるからね。大きいのでいえばCH3COO -の酢酸イオンという陰イオンがあるね。」

1年生「陰イオンの種類だけで途方もない種類になりそうですね。」

部長 「相変わらず全てを覚える必要はないぞ。それで嫌いになってもらっては困る。」

1年生「それでも例に挙げたものくらいは覚えるべき、なんですよね。」

部長 「悪いがその通り。それこそOH - 、水酸化物イオンというが、こいつは中和で出てくる。」

部長 「さて、イオンの種類の話はこれくらいにして表記の話をしておこう。今まで話に使ってNaCl 、これが何を表しているかしっているよな?」

1年生「塩ですよね。」

部長 「それであっている。あえて言えば、食塩と言ったほうが他の塩と区別できるな。」

1年生「塩にも多くの種類があるんですか?」

部長 「『塩』と書いて『エン』と呼ぶものには種類が多いが、塩の種類となると微妙だな。取り敢えず、冬の道路に撒くCaCl2も塩とよくいうからそれと区別してだな。」

1年生「冬にそんなことしますか?」

副部長「道路が凍結する地方はやるね。逆にいえば凍結しない地方はやらないから知らなくても当然かな。他にも乾燥剤としても使われるね。」

部長 「ついでにいえば善良なる早起きする市民が、我々が通行するまでに撒いて下さるから余程早起きでないと撒いているところは見ないだろうな。何であんなにお年を召した方は早起き何だろうな。」

1年生「市民を大分特定しましたね。」

部長 「要らないこと話してないで、本題を話そう。さっき答えてもらった通りNaClは塩である。しかしこの答えはある一つの意味合いしか答えていない。つまりNaClは塩の別称であるという意味だな。これは他の物質でも言える。H2OやCO2を、それぞれ水や二酸化炭素別称だとしか知らない人もいるだろう。まともに化学を教わっていない者や習ったが忘れてしまった方々とかな。」

副部長「それで困ることもないだろうけどね。」

部長 「私は困った事があるが今は脱線しないで話を続ける。他の意味合いについてだ。中等教育を受けた者として覚えているか?」

1年生「NaとClによって構成されている。」

部長 「その通り。わざわざ大文字、小文字と表記を変えて区切ってあるからな。ただ残念だが今回の本題は他の意味だ。もう一つ。」

1年生「…数ですか?」

部長 「それだ。“塩化ナトリウムは,1価の陽イオンであるナトリウムイオンNa + と1

価の陰イオンである塩化物イオンであるCl - 個数比1:1で構成されている”CaCl2はCa:Clが1:2で構成されているということだな。」

1年生「それはH2OやCO2も同じことがいえますよね。」

部長 「残念で面倒なことにこの名称、H2OやCO2といった非金属原子と非金属原子で構成される共有結合性の物質では名称も意味も変わる。」

副部長「たぶん聞いたことがある分子って名称になるね。」

部長 「話に出たところで、共有結合の話しに進もう。共有結合は結合に最外殻電子を使うのはイオンと同じだが、イオンとは違うのはその名の通り価電子を共有して結合している。“希ガス以外の非金属元素の原子どうしが結びつくときは,それぞれ価電子を何個かずつ出し合ってそれらを共有し,同じ周期にある希ガス原子と同じ安定な価電子配置になろうとすることが多い。このような,原子間で出し合った価電子を共有してできる結びつきを共有結合という。”」

副部長「ここで問題今までの部長の話しで間違いがありました。さてどこでしょう?」

部長 「やめろ、やめろ。恥を晒さないでくれ。」

1年生「すみません、分かりました。『原子どうし』ではなく『元素どうし』ですね。」

副部長「正解。」

部長 「私の性能はこの程度だと分かったところで話しを続けるぞ。この共有する結合結局何をしているかというと、見かけ上だけ数を増やしていることになる。例えばH2O、水素元素は1個、酸素元素は2個、直近の希ガスの価電子配置になるには足りない。そこで2個足りない酸素原子は1個足りない水素原子二つとそれぞれ1個ずつ価電子を共有する。すると水素は自らの1個と酸素からの1個とで最外殻電子は2個となり、これは希ガスのHeヘリウムと同じ電子配置で価電子は0になる。酸素は自らの6個と水素それぞれからの計2個で最外殻電子は8個となり、これは希ガスのNeネオンと同じ電子配置で価電子は0になる。さて、酸素も水素も電子は増えていないのに互いに最外殻電子を満たし価電子は0になった。これが見かけ上電子が増えているといったわけだ。」

副部長「二人の共有財産といったところかな。」

部長 「金で例えるなら銀行での借り入れを私は想起するな。実際は増えていないのに手元には金がある状態から。」

1年生「今度の例えは生臭いですね。」

部長 「分かればいいんだよ、分かれば。この共有、別に1個ずつ出し合うが不文律ではない。例えば酸素、いままで適当に話していたからきちんと断ると、原子ではなく空気中にある酸素の事だが、こいつはO2という形で存在する。これは酸素原子が互いに2個ずつ出し合い結合する。さらにいえば窒素、こいつはN2という形で空気中に約8割存在しているが、これは3個ずつ出し合い結合している。ここまでいくとかなりお得感が出てくるな。」

副部長「さっきお金例えてしまったせいかもね。」

部長 「共有結合は出し合った数によって名前がある“水素原子と酸素原子の結びつきのように,価電子を1個ずつ出し合う共有結合を特に単結合という。”酸素原子のように“価電子を2個ずつ出し合う共有結合を二重結合,窒素分子中の窒素原子間のように,価電子を3個ずつ出し合う共有結合を三重結合という。”」

部長 「次にこの話のまえにでた分子について話しをしよう。といっても分子自体は簡単で、原子が集まって出来た粒子で、集まる原子は共有結合する組み合わせってことだけだ。ここで分かって欲しいのはイオン結合との違いだ。分子とは粒子といえるように集まった単位が小さい。H2OやO2、それぞれ原子が3個と2個しか集まっていない。これに対してイオン結合した物質は基本的には粒子とかいうレベルではなく、もっと大きな集団でまとまっている。これを結晶とかいうが話は後で。さて、やっとたどり着いた構造式との違いだ。イオン結合する物質どもは軒並み大きいし、さらにいえば大きさもばらばらだったりする。ある意味当然だ。岩塩なんか割った大きさで含まれている原子の数は変わる。しかし、よくよく調べてみると食塩なんかは必ずNaとClが1:1で構成されている。そこでNaClという構造式で表している。だが共有結合する分子は違う。一つの構成に原子は数えるほどしかいない。そこで“分子や分子でできた物質は,分子を構成する原子の種類と個数を示した分子式で表される。”2:1なんてしち面倒くさいこといわずにH2Oという表記は水素原子2個と酸素原子1個で構成されているという意味になるわけだ。」

1年生「だいたいわかりました。割合か個数かで区別されていたんですね。」

部長 「分かってもらったところで、もう一歩話を進めよう。その為にはまず結晶の話しをしよう。“固体のうち,その内部を構成している原子や分子,イオンなどの粒子の配列が規則正しいものを結晶といい,塩化ナトリウムのように,多数の陽イオンと陰イオンがイオン結合によってできた結晶をイオン結合という。”ここで脱線小話を一つ、ガラスは結晶ではない。」

1年生「ガラスってそこにもある窓に使われているあれですよね。」

部長 「もちろん。固体が必ずしも結晶ではない例だな。ちなみにガラスはアモルファスという。日本語では非晶質、固体のようなのに結晶ではない物質の一つだな。固体のようってわざわざいうのは実は流動しているからな。」

1年生「流動…流れているんですか。」

部長 「年月単位の時間がかからないと実感できないくらいには。古い建物の窓ガラスを観察してみると、上の方が薄く下の方が厚くなっているのが見て取れるらしい。そういえばもう一つ身近な例としてアスファルトも似たようなものだな。手元に資料がないのでウィキペディアによるとこれはピッチといって“非常に粘性が高くて固体に見えるような物質を指す総称”だそうだ。粘性はドロドロ具合な。高いほど粘りがある。そしてこれには本当に年月かけて実験した研究がある。イグノーベル賞も受賞した。」

1年生「イグノーベル賞って何ですか?」

副部長「『人々を笑わせ、そして考えさてくれる研究』をした機関や個人に贈られる賞だね。簡単に裏ノーベル賞かな。Igの直訳とは異なるけど。」

1年生「ig…否定ですか。」

副部長「ignobleにもかけているね。卑劣な、恥ずべき、不名誉なって意味だね。」

部長 「当たり前だが不名誉な受賞ばかりではないぞ。ちなみにピッチで受賞した実験は『ピッチドロップ実験』で調べればでる。結論だけ話すとピッチには黒タールを用い,結果水の230億倍粘度があることが分かったそうだ。粘度は粘性を数値化したものな。」

1年生「途方もない数字に思えますけど……、何でしょうアボガドロ数を聞いたせいなのか驚きが薄いですね。」

副部長「分野によっては極端だからね。ある分野は300度くらいは低温になったりするしね。」

部長 「たまに数値の桁を切り替えないといけないからな。さてこれで少しは結晶を分かってもらったところで話しを進める。結晶でも話したが分子も結晶をつくる。身近なのは氷だな。水分子が結晶になったものだ。この例に伴えば分子も低温域なら結晶になる。ではイオン結晶はどうなのか。奴らは常温では固体だから加熱して液体や気体まですれば分子になるのか。もちろんならない。代わりにどうなると思う?」

1年生「えっと……。液体になった食塩とかを思い浮かべればいいですよね。」

副部長「そうだね。」

1年生「……イオンになる?」

部長 「大正解。水とかに溶解した時と同じだな。こっちは融解だがな。折角話したんだからモルを使って数で話してみよう。H2Oが1mol存在しているとしよう。これは水分子を1mol個いることになる。ちなみに約18gな。NaClが1mol存在しているだとどうなるか。NaClが1mol個いるではない。NaとClそれぞれ1molずつで構成されたNaClという結晶があることになる。ちなみに約58.5gな。まあ、この日本語の機微で理解してくれ。」

1年生「なかなかに難しいですね。」

部長 「液体での状態が分かりやすく違うか。液体だとH2OはH2Oという一集団、つまり分子がH2O液体を構成している。これがNaClだとナトリウムイオン(Na +)と塩化物イオン(Cl -)それぞれイオンとして分かれて構成されている。つまり液体や気体みたいにお互いが離れている状態でそれでもH2Oという表記どおりの集団でいるか、それともNaClのようにNaとClに分かれてしまって表記とは違う状態で存在しているかだな。」

副部長「それでいうなら液体、気体にかかわらず固体でも表記どおりではないけどね。ただ固体、結晶を話すのは難しいけどね。」

部長 「それもそうなんだよ。まったくもって難しい。」

1年生「それでもさっきよりは分かった気がします。」

部長 「そうか、それならいい。ただ残念ながらこの範囲、もう少し話しがある。それこそ特徴といってもいい。今までの話、特徴っぽくなかっただろ?」

1年生「いえ、随分特徴ぽかったですよ。正直まだあるのかと思っています。」

副部長「それは御愁傷様だね。少なからず脇道にそれたのが原因だろうけどね。」

部長 「脇道で面白い話をして興味をひいていたつもりだったが、それが仇となっていたとは。だが、止めない。」

1年生「やめませんか、そうですか。」

部長 「決意を新たに話しを再開しよう。といってもこれは深くは話さないでおくから引用にたよる。“イオン結合は,一般に融点や沸点の高いものが多い。これは,イオン結合が強い結合だからである。また,イオン結合は固いがもろく,強い衝撃が加わると決まった方向に容易に割れる。”“イオン結合でできた物質は,固体の状態では電気を通さないが,液体の状態や水溶液ではイオンが自由に動けるようになるので電気を通す。”次に共有結合というより分子。“分子からなる物質には,水素H2や二酸化炭素CO2などのように室温・常圧(1013hP)で気体のものや,水H2OやヘキサンC6H14などのように液体のものが比較的多い。ヨウ素I2やスクロース(ショ糖)C12H22O11などは固体であるが,一般に分子からなる物質は融点が低く,電気を通さない。”以上、それぞれの融点、沸点、電気の特徴でした。」

1年生「……。」

副部長「どうしたのかな?」

1年生「これで終わると寂しいと思ってしまいました。」

副部長「だ、そうだよ?」

部長 「では、喜び勇んで話しをしよう。簡単にすると結合の強さ、そしてどこで区切れているかが問題になる。まず固体、液体、気体…、今さらながらこの三つの状態のことを物質の三態という。これについておさらいしたいが、覚えているか?」

1年生「距離ですよね。ほとんど動けないほど近いのが液体、離れて動きやすくなったのが液体、液体よりも大きく離れてさらに動きやすくなったのが気体。ですか?」

部長 「……本当に適当に話したな。ではなぜ距離があいていると思う?」

1年生「えっと、それは……。静電反発?」

部長 「難しいことから話しすぎてしまった感があるな。静電的な引力も斥力……、反発力もあるがそれよりも簡単なものがある。今は何の話をしていた?」

1年生「…融点に沸点?」

副部長「つまりはそれって?」

1年生「温度ですか。」

部長 「はい、その通り。エネルギーを、力を持っているとかいうが、その力の代表格は熱だといっても過言ではない。」

副部長「これは温かいほど力を持っていることになるね。」

部長 「そう、そして力を持っているとみんな何かしてしまいたくなる。あるものは犯罪に走り。あるものは正義に奔走する。どこぞの漫画の主人公かよってほどに。そしてなによりも漫画でないこの現実、大抵はもてあまし只々無駄に体を動かしてしまう。それは粒子も同じこと、彼らには知性はないので犯罪も正義もしないが、代わりに動きまわる。互いにくっつき大人しくしていても、一度力を得ればどこへともなく動いて動いて動きまわる。」

1年生「……。」

副部長「これが部長なりの分かり易くしようとした結果なんだよ。」

1年生「なんかもうすみません。」

副部長「さらに言うと、知識があれば披露したくなるのも似たようなものだね。」

部長 「お、追い打ち。」

部長 「…単純で悪かったな。で、話しを戻すとこの動きまわるが故に距離が空き、固体になったり液体になったりするわけだ。さらにいえば融点や沸点は性質が変わってしまうほどの距離が空く大事な点であるわけだな。これで次の話しには十分かな。」

1年生「十分ですか。ほとほと思いますが実際はどれ程面倒なんですか。」

部長 「残念ながら私も全部分かっているわけではないからな。それより面倒とか言うな。楽しいと言え。楽しいと。」

副部長「普通はそう思わないから。」

部長 「そうですよね。まあついでにもう一つ、三態の話しをしよう。ここは学校だ、粒子を生徒に例えよう。固体は授業中、生徒が教室に座って整然としている状態。液体は授業間の短い休み、多少なり生徒が動きまわっている状態。気体は昼や放課後、学食に行ったり部活に行ったり、短時間の休みよりさらに動きまわる。こんなところかな。」

1年生「はあ…。」

部長 「疑問に思うなぜに面倒くさく例え直したか、これは最初の距離とは違うもう一つの要素を加えたかったからだ。」

1年生「それは?」

部長 「秩序だ。」

1年生「秩序、ですか。」

部長 「そう秩序。秩序があり整っているのが固体。秩序なく乱雑なのが気体といったところだ。」

副部長「物理化学になるとこの要素を特に取り扱うようになるね。正直大学の範囲になるよ。」

1年生「だ、大学。うわ~。」

部長 「取り扱う要素は増えるがそれゆえに話は楽しくなっていくと思うけどな。小説で登場人物が増えるようなもんだろ。」

副部長「賛否両論の話しだね。」

部長 「ちなみに例に出しておきながら私は反対派。それこそ外国文学は名前が覚えづらいせいか、三、四人で場合によっては分からなくなる。」

副部長「三、四人が限度だったのかい。今まで何度か悪いことをしていたみたいだね。」

部長 「いやいや、そこは私の理解力不足なだけだ。面目ない。そうだな、ジャンルを絞って登場人物をラブコメのヒロインに限定すれば否定も減るかな。」

1年生「それもそれで賛否両論な気がします。」

部長 「文系もそれなりに面倒だということで。超楽しい話はこれくらいにして、結合の話だったな。イオン結合からなる物質は融点、沸点が高い傾向がある。これはひとえにイオン結合が強い結合だから。これがさっき話した内容だが、実はこの話し、共有結合、さらにはまだ詳しい話しをしていない金属結合にもいえてしまうことだ。それこそ甲乙付け難いくらいに。ここで分子といわないのがポイントな。」

1年生「そういえば、わざわざ分子と断っていましたね。」

部長 「よく覚えていたな。何が言いたいかというと、たしかに分子は共有結合だ。ただし、あくまで分子を構成している結合は、という点だ。つまり分子同士は違う結合力で集まっているわけだ。」

副部長「つまり固いのは分子であって。分子同士では無いってことだね。」

部長 「分子間力、ファンデルワールス力が代表だが……、まあどこかで一度は聞いたことあると思う万有引力だと思えばそれで十分だ。」

副部長「いろいろ面倒だからね。これにファンデルワールス力に加えて他にも水素結合などいくつかあるけど、二次的な結合とかいってまとめられることが多いよ。」

部長 「まとめるとイオン結合性の物質は集団で集まったとき、その大半は常温ではイオン結晶という固体で、ほぼ全てがイオン結合で構成されているので固く融点、沸点が高い。分子は、分子内は共有結合で構成され固いが、分子が集団で集まったとき、常温での固体、液体、気体は分子の違いに大きく左右され、分子同士の結合は弱いので融点、沸点は低い。当然だけど共有結合もかなりの熱をかけてやればいつかは壊れるぞ。太陽の表面とかでも起こっていたはず。」

副部長「プラズマとか聞いたことあるかな。」

1年生「あります。あれって分子が沸騰している現象だったんですか。」

副部長「一概にはいえないけどね。そう間違ってはいないと思うよ。」

部長 「まあ難しい話にはこれ以上踏み込まず、問題でも出そう。もし共有結合だけで構成された結晶があったらそれは固いか否か。」

1年生「固いですよね。」

部長 「はい正解。それがダイヤモンドです。」

1年生「ダイヤモンドって、一番固いじゃないですか。」

部長 「ダイヤモンドは炭素Cで構成されているが他にもケイ素Siや二酸化ケイ素SiOなんかもある。ダイヤほどではないがどちらも固く融点、沸点が高い。そして水にも溶解しない。イオン結晶は固いというがかなり水に溶解するからな。」

1年生「言われてみればそうでしたね。イオン結合…、難儀ですね。」

部長 「そう難儀だからこのくらいにして次に進もう。金属とかもう面倒だ。」


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