3時限 原子量とモル濃度
部長 「さて、ある程度原子の構成も分かったところで濃度の話に戻すか。」
1年生「いまさらながら原子の構成が必要だったんですか?」
部長 「ああ、あの話が無いと原子の質量の話にならないからな。」
1年生「あれ?モル濃度は個数で考えるのでは?」
部長 「よく覚えているな。ついでに言うなら機能的だとも言ったことは覚えてないか?」
1年生「それも覚えています。」
部長 「要は機能的なのは単位を換算出来るからだからだよ。ああ…換算…は、ある単位を別の単位に…。」
副部長「単位換算…。単位はわかるはずだよ。辞書的には“ものの量をはかるための基準として定められた量。ヤード・ポンド・尺・貫・円・ドル・グラム・アール・など。”そして単位換算は文字道理『単位』を『換算』、つまり別の単位にする。出来るものは同一系統だけだけどね。長さなら長さの別の単位に、メートルからヤードにするみたいなことだね。だけど長さを重さにはできないね。メートルからグラムみたいに。ただし、立法メートルだと物質が分かればグラムには出来るよ。単位換算とは違うはずだけど。」
部長 「ありがとう。今更ながら単位換算違うな、後者のほうだ。まあ要はそれが必要なんだよ。mol%から質量%へ……は、換算をあまりしないが、そもそもmol%の溶液に調製…作る時に必要なんだよ。塩を百万個用意するのは難しくても1グラム用意するのは簡単だろ。つまり重さと個数の関係に原子の構造が分かっていたほうがいい。」
1年生「なるほど。」
部長 「さて、前置きもこのくらいにして本題に入ろう。まずは引用から“各原子は決まった質量をもつが,その値はきわめて小さく,そのままの数値では扱いにくい。そこで,いろいろな原子の質量を示す場合,「質量数12の炭素原子12Cの質量を12としたときの相対質量」が用いられる。”さてこれを解説していこう。相対の意味は分かるか。大雑把にいうと『他と比べて』か。私の年齢と一年生君の年齢を比べると私は一年生君の1.13倍みたいにな。ちなみに一年生君が基準、つまりさっきの炭素の位置になる。この反対がいつも使う質量の考えかたな。10gとか100gとか1kgとか。相対の反対に絶対とかいう。」
副部長「絶対速度と相対速度って聞いたことないかな。止まっている地面を基準に幾ら速度が出ているかを現すのが絶対速度。車のスピードメーター然り、ほとんどの場合こちらを使っているね。相対速度はお互いが動いている。走っている車同士で片方からみて幾らスピードが出ているか。時速50kmで走る車から時速60kmで走る車を見ると時速10kmで見えるような話かな。例えば相手が止まって見える場合は同じ速度で走っている事になる。これを使えば相手の速度が分かる。警察車両が並走してきた時は注意しないとね。」
部長 「さらに説明すると相対にはパターンがある。相対速度は差のパターンで幾つ離れているか。相対質量は比、割合のパターンで何倍離れているかをしめしている。そして差のパターンは単位があるが比のパターンには単位がない。何て言ってもわかんないよな。」
1年生「はい。単位の有る無しって言われても分かりません。」
部長 「単位が有るはともかく単位が無いは分かり辛いよな。そうだな、今は深く考えずに原子は炭素から何倍離れているかで考えていることを分かって欲しい。」
1年生「分かりました…。けど、何でしょう。適当に話を置いておくこと多くないですか。」
部長 「いや~。つい分かりやすくなるようにと補足説明しようとすると基礎から応用まで雑多に言ってしまっているからな。大事なことだけ最後に言っとかないとなんの話をしているか分からなくなりそうだからな。私自身も。」
1年生「それは確かに…。」
部長 「さてごちゃごちゃと相対質量とか言っておきながら、今の科学ではしっかり原子一つの絶対質量も分かっている。大体その原子に含まれる陽子と中性子の数で決まる。電子はその二つの約1/1840しかないからな。これを対した差では無いと考えてしまう私は正確な値を考えすぎなのだろうか。」
副部長「大丈夫、有効数字を5~6桁扱う時もあるから。結構正常だと思うよ。」
部長 「ありがとう。今思ったけど有効数字も説明せねばならんな。」
1年生「こうやって話がそれていく……。」
部長 「ええっと、原子の質量だったな。ちょっと羅列するぞ。
原子/1個の質量(×10-24g)/相対質量
1H/1.6735/1.0078
12 C/19.926/12
16 O/26.560/15.995
23 Na/38.175/22.990
35 C/l58.066/34.969
238 U/395.28/238.05
以上。と言いたいが補足すると1Hと書いたが本当は1Hとかの1はHの左上付な。テキスト面倒。」
副部長「一個くらい計算例を挙げると
1Hの相対質量=12×(1.6735×10^(-24) [g])⁄(1.9926×10^(-23) [g]≈1.0078)
大事なのは12をかける事かな。」
部長 「わざわざ12をかける理由だが…、私も正確には知らないが深い理由ではないだろう。『基準』なだけあって人が指定できるから計算し易い値にしているだけだろう。角度を一周360度と定めたように。それに割合とは言ったがこれは2:1や3:2、3:5とかと同じ考え方に近いからな。12:1.0078みたいにな。だから大げさに言うと炭素を19.926、水素を1.6735でも、炭素を1、水素を0.083986でもいいんだわ。それだと分かりにくいから炭素を12としていると思っていればそう間違ってはないだろう。丁度よく最少の質量の水素が約1になるしな。」
副部長「ちなみに『基準なだけあって人が指定できる』と言っていたけどその指定は何回か変更されているよ。前は16Oを16と基準にしていた時代もあるよ。」
部長 「基準の話しはこれくらいにして現実の話をしよう。さっきの表に記していた相対質量はあのままでは使わない。同位体の話は覚えているか。」
1年生「同じ元素でも質量が違うですか?」
部長 「そう。世の中すべて同じとはいかないからな。そこで存在比を考える。12Cと13Cがそれぞれどれくらいの割合で存在しているか、を考慮する。まあ要は平均をとるだけ。13Cが相対質量13.003で1.07%存在するから…、これくらいの計算は省略。結果は12.01となる。でこの平均の相対質量を原子量という。この諸々を考慮した原子量が重要で結構使う。各主要原子の原子量は覚えていないと化学を学んだとは言えない。くらいにはな。」
副部長「とはいってもこれも使っていれば覚えるものだけどね。なんて言い換えれば、覚えるほど使わないと化学を学んだとはいえないとなるけどね。」
1年生「結局覚えろ、ってことですか。」
副部長「そこまではいってないよ。化学を学んでいなければね。」
部長 「そうだよ。化学を学んでいなければな。」
1年生「……。」
部長 「安心しろ。私も小数点以下は基本覚えていないし、6種、H,C,N,O,Na,Cl位しか覚えていないよ。ね、簡単でしょ。……まあ冗談抜きに。」
1年生「……それくらいなら。」
副部長「覚える気にもなったところで一問やってみようか。“塩素Clは相対質量34.969の35Clが75.76%で36.966の37Clが24.24%の比率で存在している。塩素の原子量を求めよ。”」
1年生「え~と、まずは相対質量と存在比の積を求めればいいんですよね。」
部長 「ほい、電卓。」
1年生「ありがとうございます。やたら高性能そうですね。」
部長 「関数電卓だからな。化学には微妙に役不足。」
副部長「正しい使い方、知っていたの。」
部長 「まあ、知的好奇心旺盛な私は国語も好きだからな。……嘘だよ、偶然だよ。……って、ところで計算終わったか?」
1年生「はい。26.4925144と8.9605584です。次はこれの和ですよね。」
部長 「ああ、ついでに言うと四捨五入して26.49と8.961でいいぞ。」
1年生「? 分かりました。」
部長 「まあこれが有効桁とかいうやつだけど、また今度な。」
1年生「そうですか。答え出ました。35.451ですね。」
部長 「正解。さらに言うと、またもや四捨五入して35.45まででOK。いやはや面倒だ。」
副部長「でも教える気はあると。」
部長 「まあな。さて主要原子の原子量だけど、また羅列。
元素/原子量
H/1.0
C/12
N/14
O/16
F/19
Na/23
Mg/24
Al/27
S/32
Cl/35.5
Ca/40
Fe/56
Cu/63.5
Au/108
以上。」
部長 「まあこのうちH、C、N、O、Na、Cl位は覚えるといいかな。」
1年生「意外と少ないですね。」
部長 「何ならNa、Clもいらないな。H、C、N、Oが多くの有機物を構成しているからな。」
副部長「有機物は燃えたら炭になるものの認識で今はいいよ。」
部長 「さてそろそろ次に進もう。分子量と式量の話をするが……、ちょっと適当に、区別せず説明するぞ。CO2、H2O、NaCl、CaCO3など一種類で構成されていない物質は単純に含まれている物質の総和で求める。さっきの例のCO2は12+16×2で44、続けて18、58.5、100となる。これくらいはすんなり飲み込んでくれ。あと分子式にはツッコんでくれるな。テキスト故にだ。」
1年生「はい。」
部長 「次、ついにモル。12Cが12g中に含まれている個数は約6.02×1023という非常に大きな値となり、“この数値をアボガドロ数という。そして,アボガドロ数個の粒子の集団を1モル(記号mol),モルを単位として表した物質の量を物質量という。”」
副部長「一応計算式を示すと
12[g]⁄(1.993×10^(-23) [g⁄個]≈6.02×10^23 )
となるね。」
部長 「大事なのは相対質量12の12Cで12g中の個数を考えているところだな。何でか分かるか?」
1年生「……今度もヒントを。」
副部長「相対質量ってことがヒントかな。」
1年生「……」
部長 「16Oがアボガドロ数個集まると
26.560×10^(-24)×6.02×10^23≈16.0
になる。」
1年生「…アボガドロ数個集まるとその原子量と同じグラム数になる?」
部長 「正解だ。どちらかといえば原子量、分子量と同じ数値のグラム数量りとるとアボガドロ数個集めたことになる。」
副部長「言い換えた意味が分かるかな?」
1年生「…単位換算で話したこと?」
部長 「正解。『炭素を1モル量りとる』を『炭素を12g量りとる』に代えられるのが重要だ。話がずれてきだしたから一度まとめると、モルという一定数個の集団を定義する。それは12C12g中の炭素原子個数6.02×1023個とする。モルは物質量の単位である。“物質1molの質量をモル質量という。”いやはや、普通は重さや長さにグラムやメートルという単位を決めるのに対して、モルという単位が出来たからそれを物質量としているのは面白いよな。」
1年生「確かにその順序が逆なのは面白いですね。それよりまとめなのに一つ聞いてないことがありませんでした?」
部長 「すまん、忘れていた。モル質量はまとめる前にも話したことで1モル集めるからその式量、分子量になるだけだ。単位はg/molな。」
副部長「関係式は
物質量[mol]=質量[g]⁄モル質量[g⁄mol]
になるね。」
部長 「最初に相対質量とか何でそんな分かり辛い定義をするのかと思うけど、アボガドロ数まで考慮すると実に上手く機能的に定義してあるんだよな。理解するのに若干、人によってはかなり時間がかかるのは難点だが、慣れれば便利だ。それにしてもここまで長かった。」
副部長「原子一個の重さどころかその構成成分一個の重さまで必要だからどうしても原子の基礎が欲しいからね。」
部長 「まったくだ。さて、ここまでで質問は?」
1年生「先輩は重さで個数が分かるといいたいんですよね。」
部長 「そうだが?」
1年生「重さが量りにくいものはどうするんですか。」
部長 「驚いた。それは気体をイメージしていると考えていいのか?」
1年生「はい。わざわざボンベに詰めるんですか。前にそういう測定方法があると聞いたことがありますが。」
部長 「いや、そもそも気体に限っては重さで測定しない。次に話そうとしていたが、アボガドロの法則というものがある。それによれば“「同温同圧の下で,同体積の気体は,気体の種類に関係なく同数個の分子を含む」という関係がある。”温度0℃で通常大気圧1013hPaの下では1molは22.4Lになる。ちなみにこの温度と大気圧の条件を標準状態という。」
1年生「種類に関係なくなんですか」
部長 「まあ、そこに疑問を持つよな。残念ながら厳密には違う。ただし、基本的には関係なくだ。そうだな、原子を杭に例えよう。」
副部長「またおかしな例えだね。」
部長 「でだ、物質の状態である気体と液体と固体とは原子の距離間だと思っていい。杭を並べてロープを張る。その面積が狭ければ固体で広ければ気体だ。ついてきてるか?」
1年生「なんとなく。」
部長 「ここでは二種類それぞれ4本の杭を正方形に並べてロープを張ろう。まず固体状態になるように配置しよう。パターンAでは一辺5cmの正方形の杭を……、そうだな、密着させて配置しよう。面積は100cm^2なる。そしてパターンBは一辺10cmの杭を同じように配置しよう。面積は400cm^2なる。比は約4倍になる。結構な差だ。さてこれを気体状態で配置しよう。杭をパターンA,Bそれぞれ100cm離して配置しよう。辺は100cmに杭の長さを追加したものになる。面積はそれぞれ14400、19600。比は1.36倍になる。対した差ではなくなるだろ。この様に、二つの杭の間に距離があると杭に多少大きさの違いがあっても面積は変わらないように、気体みたいに物質同士が離れている状態ならば、多少物質に違いがあっても同じような体積になるというわけだ。何とか着地した。」
副部長「まとめると、物質の違いよりも気体という要素の影響が大きいから同じ体積になるといったところかな。」
部長 「もう一度言うが本当は違う。だからアボガドロの法則に従うものを理想気体という。因みに実際に存在する気体は実在気体という。まあ、教科書、試験では理想気体として計算に使用するよ。」
1年生「理想と現実の差ですね。」
部長 「まったくな。だからと言って、バカにできないくらい理想気体は理想的に使いやすい。大体そんなに差もないからな。」
副部長「その完璧を追及することは、時間と労力に見合うのか? といったところかな。時と場合によるよね。」
1年生「そしてそれはテストでは見合わないんですね。異様に答えが整数になる理科問題みたいですね。」
部長 「その例えは好きだな。確かに中学生の理科の答えで割り切れない事はほとんどないな。さて、そろそろ話を戻そうか。モルが分かったところで、これで考える濃度、モル濃度の話しをしますか。ここは定義から“溶液1L中に溶けている溶質の量を物質量〔mol〕で示した濃度をモル濃度という。モル濃度を示す単位の記号にはmol/Lを用いる。”」
副部長「式は
モル濃度=溶質の物質量[mol]⁄溶液の体積[L]
になるね。」
部長 「適当に解説していくか。溶液は食塩水や砂糖水を思ってもらえば問題ないが、しっかり説明し直すと“水H2Oに塩化ナトリウムNaClの結晶を少量加えてかき混ぜると,塩化ナトリウムは溶けて均一な液体になる。このような現象を溶解といい,溶解によってできた液体を溶液という。”このままもう少し説明すると“溶液において,塩化ナトリウムのように溶けている物質を溶質,水のように溶かしている液体を溶媒という。”これも定義だな。適当に覚えてくれ。それより大事なのは『溶液1L中に溶けている』だな。ここで前のダースパーセントを思い出して欲しい。この1Lが箱で例えたところだ。そして『溶質の量』だが…分かるか?」
1年生「鉛筆ですか?」
部長 「説明が無駄になってなくてなによりだ。ダースパーセント風に説明し直すと、鉛筆が入った箱一箱あたりに入っている鉛筆をダースで表したものがダースパーセントという。といったところかな。」
1年生「ここにきてのダースパーセントですか。」
部長 「頑張って例えて説明したから無駄になっていないといいが……。」
1年生「無駄になっていないはずです。……はずです。」
部長 「そんなところでいいよ。結局のところは自己満足だ。」
部長 「さて、ダースパーセントでは不都合がでたところを話そう。箱に鉛筆やボールペンを入れる例え、あれは溶液に物質を溶かすことだったんだが、ここでの不都合。箱に物を入れる時、何を入れても箱の容積は変わらない。まあ、箱の残りの容積は変わるが、何も入れていない時の容積のことな。箱に物入れたからって箱が膨れ上がるとか気持ち悪いだろ。しかも入れたものの種類でその膨らみ方が違うとかありえないだろ。さすがに箱の容量以上に無理やり詰め込めば膨らむが、そういった揚げ足取りは無しの方向でお願いします。」
部長 「さてさて、箱と違って溶液ではこれが起こる。大抵の場合は溶液に物質を溶かすと体積が変わる。あまり詳しくないので迂闊な事は言えないが、液体に固体を溶かす場合は体積が増えることが多かったはずだ。」
副部長「これが水にアルコールを溶かした場合は体積が減るからね。」
部長 「こういった例を示す場合は本当に詳しくないと、どこに地雷があるか分からないからラブコメ主人公なみには気を付けないとな。」
1年生「その例えだとほとんど気を付けてないですよね。」
部長 「それも含めて結論は、結局のところ気を付けるけど、間違えてもヒロイン張りに許してください。といったことで。彼らだって多少間違えたところでヤンデレが相手でない限り死にはしないだろ。私もまだ学生の漫談だから大丈夫。辞職あるいは逮捕されたりしないからバリバリ間違わしてくれ。機会があったら訂正するから。」
1年生「許すのは問題ないとして、サラッと逮捕とか不穏な単語があったんですけど、そんな事例が本当にあったんですか?」
部長 「あ~と、地震学者が政府と結託して大地震は起こらないと断言したら、案の定起こって市民に訴えられた事例は……どこの国だっけ?」
副部長「イタリアの2009年の中部地震だったはずだよ。それにしても、もうちょっと背景を話さないと誤解を生みそうだね。」
部長 「私には『断言怖い』としか気億にないぜ。」
部長 「……正確には安全宣言とかだったと思うけど、取り敢えず気になったら細部は自分で調べて下さい。」
1年生「はあ。」
副部長「それにしてもずいぶんと脱線したね。」
部長 「では折角だから脱線したままで少し密度の話しをしておくか。と言っても話は簡単で同じ体積で重い、軽いと違いがあるだけだ。鉄球とプラスチックの球、同じ大きさならどっちが重い?」
1年生「鉄球。で、あってますよね。」
部長 「今まで引っかけ問題を出してないんだ。そんなに不安そうに答えるなよ。」
副部長「単位はkg/m^3を使うね。式にすると単純に
質量[kg]⁄体積 [m^3 ]
といったところだね。g/cm^3を単位に使うこともあるね。」
1年生「?」
部長 「適当な使い分けだよ。大抵密度を使うときは体積か質量かが分かっていて質量か体積を求める。例えば体積が分かっているとしよう。その時分かっている体積が数m3と大きければ前者のkg/m^3を使う。数cm^3と小さければ後者のg/cm^3を使う。ちなみに、kg/m^3をg/cm^3にすることや、逆にg/cm^3をkg/m^3にすることを、前に少し出てきた単位換算という。そして大事なのは単位換算では絶対的な値は変わらないところだな。今回は適当に話すから多少聞き流していいぞ。」
1年生「はい。」
部長 「簡単な話だと1mを100cmで表し直すのも単位換算で、この時長さは変わっていない。同じ長さをメートルで表すかセンチメートルで表すかだ。これくらいだと、話すときにどちらで言っても相手がアメ○カ人でもない限り分かってもらえるが、これを0.001kmと言うと大抵の場合少し考えてしまう。逆に1kmを10000cmと言い換えても分かりにくい。どれくらいわかりにくいか分かるか?」
1年生「え? どれくらいですか? 表現が難しいんですけど……」
部長 「では代わりに答えてもらいましょう。副部長さん。」
副部長「一番簡単な答えは『一年生君が桁が一つ違うのを指摘出来ないくらい』かな。本当は10000cmではなく100000cmだよ。」
1年生「……。」
部長 「一年生君が本当に聞き流している事が分かったが、まだまだ話を続ける。正直に言ったところ私もゼロが多く続くのは分かり辛い。だから同じ長さでもゼロ少ない単位を使ったほうが分かり易いので単位換算を行う。…といった目的もある。断言せず濁すのは大事。」
1年生「大事なことなので引っ張るんですね。分かります。」
副部長「実際に単位換算を行う理由は他にもあるからね。例えば計算式に代入するときとか。」
部長 「結構適当にざっくり、それでもg/cm^3とkg/m^3を絡めて話すると、単位換算って操作が必要なくらいには世の中結構単位が溢れているわけで、例えばさっきのアメリ○人と皮肉を言ったが彼らはメートルではなくヤードを使う。ただ単位が多くあっても不便なだけなので一本化しましょう。といって定められた単位がありそれをSI基本単位という。例えば長さはm、重さはkgといった具合にな。で、密度のように長さとか重さを組み合わせないといけない。二つ以上の次数と言ったほうが正確かもしれないが、そういった単位を組み合わせに使う単位は、SI単位で決められた単位を使いましょう。となっている。g/cm^3よりkg/m^3を使いましょうみたいにな。でも一般的だったりするのはg/cm^3で、場合によってはそっちの記載しかないときがままある。でもでも面倒なことに、私たちもいくつか示したが、公式と呼ばれる類にはSI単位で代入しないといけない事があり、単位換算しないといけない。と、なったりする。」
副部長「さらに面倒なことを言うと、逆に昔のSI単位がない時の公式や、その分野独特の場合で、SI単位でもその公式にあったものに単位換算する必要が生じてくる事もあるね。」
部長 「カロリー(記号cal)とかな。さて結構置いてけぼりにしたかな。」
1年生「聞き流して分かる量ではないです。」
部長 「まあいつかしっかり説明したいよ。さて密度の話をしたのは、もう忘れられていそうな溶液に他の物質を溶かす話で、そこで体積が増減する事を言ったが、密度も増減するといいたかったんだ。水に塩化ナトリウムを溶かした場合、体積も増加するがそれ以上に質量も増加するので密度も増加するといった具合だ。」
部長 「偶には実際の値を示してみるか。食塩水で示そう。そろそろ水はH2O、食塩は塩化ナトリウムNaCl1で示してしまっても大丈夫だな。H2OにNaCl溶解させる。それぞれ質量は100g 、31.72g 。体積は100cm^3 、14.55cm^3となる。これを溶解させると質量は131.72gとなって、111.18cm^3体積はとなる。質量は単純な合計になるが、体積はそうはならない。」
副部長「体積は単純合計144.55cm^2より小さくなっているけど、これで密度がどっちに傾くか分かるよね。」
1年生「大きくなりますね。」
部長 「ちなみに、H2Oの密度は1 .0g/cm^3でいま例えで出したNaCl aqは1.18 g/cm^3となる。そろそろ言い訳するが、値は様々なところから適当に引っ張ってきている上、温度を考慮していない。まあ要は有効桁に見合う値の信用は無いと思ってくれ。」
副部長「言い訳は何時でも大事だね。」
部長 「何時でも何処でも何に対しても大事です。」
部長 「せっかく密度を話したから、次は濃度調製の話をしよう。わざわざ話すだけあって質量%とは違う。一応聞いておくが10%食塩水の調製の仕方は分かるか?」
1年生「えっと…、食塩10グラムを水100グラムに……、違いますね、水90グラムに溶かせばいいですね。」
部長 「正解。せっかく間違いかけたんだ。H2O 100mlにNaClを何g溶解させればよいか計算してみてくれ。ほい、電卓。」
1年生「えっと……。」
副部長「公式は
質量パーセント濃度=(w⁄(w+W))×100%
だよ。ここで分かっているのは調製すべき濃度、使用する溶液の質量Wで知りたいのはwだね。一次方程式は説明しなくてもとけるよね。」
1年生「大丈夫なはずです。………解けました。約11.1gですか。」
部長 「そんなところだろ。ついでにもう一問、この時体積は100mlより大きい、小さい?」
1年生「……大きいですよね。」
部長 「正解。さっきまで話していた通りで、約107mlといった位だな。それにしても悩まなくとも引っかけは出してない…。意地悪はしたか。」
副部長「たった一回で信用は無くなるものだよ。」
部長 「くっ。大事なのはこの体積が変わることが、モル濃度での調整が質量%の調製のようにいかない要因だ。質量%は単純に質量を測定して溶解させれば簡単に調製出来る。秤があれば事足りる。モル濃度はそうはいかない。体積は測定できる。メスシリンダーでも、料理用のカップでも、大さじでも小さじでも。更に言えばモルも量り取れる。式量の利点でさんざん話したがmolをgに換算できるからな。ただし1L測って1mol溶解させても1mol/Lにはならない。分かるよな?」
1年生「…体積が変わるから。」
部長 「その通り。そのせいでモル濃度調製にはそれ専用の器具が必要になる。その名をメスフラスコ、画像は調べてくれ。」
副部長「ついでにメスシリンダーもね。」
1年生「はい。」
部長 「さてさて原理は簡単、溶解させると体積が変わる、だから最初に全量の何割か、結構気分だが1L調製するなら200~300ml位に溶解させる。それから1Lになるまで溶液を加える。で、このメスシリンダー、丁度よく線があり、その線まで入れればちょうど1Lになる。」
1年生「それで1Lに必要なモルだけ溶解させた溶液が出来上がるわけですね。」
部長 「そう、まあ何時かやってみよう。さて、まとめと称して何問か解いて物質量の話を締めるとしよう。」
部長 「問1“二酸化炭素33gの物質量は何molか。また,この分子1個の質量は何gか。”データは聞けば教えるからやってみよ。ほい、電卓。」
1年生「二酸化炭素はCO2でいいですよね。式量を教えてください。」
部長 「Cは12 、Oは16 。」
1年生「12+16×2=44 この値で33gを割るんですよね。33⁄(44=0.75) で答えは0.75molですか?」
部長 「正解。続けてくれ。」
1年生「式量はアボガドロ数集めた時のグラムになるんですよね?」
副部長「あっているよ。アボガドロ数は 6.0×10^23 を使うといいよ。」
部長 「ついでに小数点第2位で四捨五入な。」
1年生「一個の重さですよね、44⁄(6.0×10^23=) 7.333⋯×10^(-23) 7.3×10^(-23)g であっていますか?」
部長 「正解だ。どんどんいこう。」
部長 「問2“標準状態において,メタンガス(メタンCH4の気体)4.0gの体積は何Lか。”頑張っていこう。」
1年生「体積ですか……、標準状態では一定の体積になる話ですよね。」
副部長「あっているよ。そのためには何が分かればいいか分かるよね。」
1年生「メタンが何モルあるかですね。」
部長 「そう。Hは原子量1だ。」
1年生「12+1.0×4=16 つまり16gで1molになるから4.0gは4.0⁄16=0.25 0.25mol 1molは何リットルでしたか。」
部長 「22.4Lだ。順調だぞ。」
1年生「22.4×0.25=5.6 5.6Lであっていますか?」
部長 「正解。最後は多少難しいかも。」
部長 「問3“質量パーセント濃度で17%の硝酸ナトリウム水溶液(NaNO3式量85)がある。この水溶液(密度1.1g/cm^3)の濃度をモル濃度に換算するとmol/L何か。”張り切ってどうぞ。」
1年生「えっと……、1L中に含まれる量が分かれば……。あれ1Lって何g? ヒントをください。」
副部長「問題に密度があったよね。密度1.1g/cm^3 。これは1.0cm^3 、1.0mlが1.1gであるって意味だよ。」
1年生「……1Lは何mlでしたっけ?」
副部長「1000mlだよ。意地悪されたら不安になるよね。」
1年生「……そうですよね。」
部長 「素だったのか。」
1年生「えっと…、1mlが1.1gだから1000mlだと千倍の1100gですね。…パーセントは分かっているから1100×(17⁄100)=187 で1L中には187g硝酸ナトリウムが含まれている。あっていますか?」
副部長「あっているよ。あとはこれまで通りだよ。」
1年生「187⁄85=2.2 2.2molで1L中に含まれているからそのまま2.2mol/Lですか?」
部長 「正解。これが分かれば大丈夫だろ。」