私の思惑、みんなの期待
部屋割は二つの班が一緒の6人部屋で、部屋まで行って一緒の部屋になったのがアキラのいる班だとわかった。
「あ、イマイさんいるね」とイケダユリちゃんが言う。
「うん」とあいまいにうなずく私。
しかもアキラと同じ班の他2名はササキさんとハルノさんだ。
私を呼び出して、しかもその時にアキラを苦手だと言った二人。
アキラ、この班でうまくやれてるのかな。それにこの二人、私の動向を見ておきたいって言ってたよね?
ハッ、と視線を感じて、パッ、と振り向くが、ササキさんとハルノさんは私と目を合わせてくれない。たぶんユリちゃんと話す私を見ていたように思うんだけど、気にし過ぎだね。呼び出されてあんな事を言われたから自意識過剰になっているのだ。
平常心平常心!
そしてアキラとも目が合わない。
それも結構わざとらしい感じで。
なんだ?なんだっつんうんだこのグループ!
手早く用意をして部屋を出る。なるだけイケダユリちゃんのそばにいるようにしよう。カリヤさんに余計な事を頼まれるの困るし。
が部屋を出るとさっそくまたカリヤさんが私に寄って来る。
カリヤさんもアキラがいる前では言わないようにしたのかもしれない…
「ジュンちゃん、私、今日これからの森歩くやつ、なるだけウエダ君の隣歩くぅ~~」
「…」
なんだ?宣言か?
「いい?」
なぜ私に聞く。
「それでぇ」とカリヤさんは続ける。「一緒にカレー作って、その流れで明日の夜も一緒に歩けたら…」
そう言って、ふふっ、と私を見て笑った。
いや、可愛いとは思うよ。その前に強いなと思うけど。それに私に言われてもな。
「そっか~」と答えたのは私ではなくユリちゃんだった。「頑張りなよ~~~」
全くの人ごとというのを強調するように棒読みな感じでそう言った。
んん~~、と私は心の中で唸る。ウエダがみんなの前で本気で嫌がったりしたらどうしょうとかは思わないのかな。強いな。
「写真の話だけどさ」とユリちゃんがふいに言った。「ジュンちゃん、ウエダ君に頼んであげたらいいじゃん」
「え?」
「カリヤさんが欲しいって言ってた写真の事だよ」
「…」何を言い出すユリちゃん。
さっきは「無理だよね~~」って味方してくれてたじゃん…
「どう?」とさらに私に聞いてくるユリちゃんだ。
「…うん…でも…」
絶対ウエダが嫌がると思うのにそんな事頼みたくないよ。ウエダにも、カリヤさんがガンガン近付くのを邪魔して欲しいって言われたけど…
それでも2泊3日行動を共にする班の女子二人を嫌な気持ちにさせる勇気は毛頭ないので、必死に適当な受け答えを探す。もちろんユリちゃんがなぜにカリヤさんの味方をし始めたのかをひどくいぶかしみながら。
「ウエダ君そういうの恥ずかしいんじゃないかな」私はカリヤさんに言った。それに私もウエダ君とそんなに話をした事ないから。一緒に日直やったくらいで…」
カリヤさんがニッコリと笑ってから言った。「バスのトイレ休憩でウエダ君に腕掴まれて降りて行ってたのは?」
怖…
「…」水本とウエダの関係は黙っててって言われたけど…。「水本先生の事でちょっと」
「先生の事?」
「前一緒に日直やった時に先生を手伝っていろいろあって、その事!」
嘘をついた。が、その後は正直に言う。「ウエダ君、そんな事頼んだら、機嫌悪くなりそうだから私無理。し、機嫌悪いとこよく見るから、私本当はウエダ君と喋るの苦手なんだよ、ごめんね役に立たなくて」
「そっかぁ、」とカリヤさんは甘い声で承諾する。「私機嫌の悪いウエダ君も好きだけどな」
マジで!?
じゃあもう自分で何回でもチャレンジしたらいいよね。
カリヤさんも自分で言った。「この合宿中にウエダ君と、もっと仲良く出来るようになりたいの」
…そっか。
なんか…せつないな。
そしてカリヤさんはトイレに行ってくると行って私たちから離れた。
「ユリちゃん…」と私が言うと、「なぁに?」歌うように答えるイケダユリちゃんだ。
「さっきどうしてウエダ君の写真の事私にふってきたの?」
「ごめん」
ユリちゃんがあっさり謝るので拍子抜けしてしまう。
「だって進展が欲しいから」
「…」
「せっかくの野外研修だし」
「…」
どういう事?
「結構みんな気にしてんだよ。てかぶっちゃけ楽しんでるっていうか。ウエダ君とジュンちゃんがこの研修でどうなるか。それにカリヤさんがどれだけ頑張りを見せてくれるか。ただ見てるだけでも充分ドキドキできるんだけど、なんか波紋投げかけた方が面白みが出て、たぶんみんな的にも面白いっていうか…」
「みんなって誰!」つい突っ込みがキツ目になってしまい、ちょっとマズいと自分で思う。
でもユリちゃんは笑いながら言った。「みんなはみんなだよ~~。特に女子はジュンちゃんが思ってる以上に二人の事結構気にしてるって。ウエダ君が他のクラスの女子にも人気あるから、うちのクラスだけじゃないからね、気にしてる子たち」
「…嘘だよね?」
「マジマジ。私他のクラスの子からも聞かれた。だからつい」
ヤダなもう。
「ごめん」ともう一度ユリちゃん。
でも顔が思い切り笑っている。
「ゆりちゃん…本当は悪いとか思ってないでしょう?」
「思ってるよ~~。…思ってはいるんだけど…あ、そうだ!イマイさん一緒の部屋だったね」
そうなんだよね。アキラともこの研修中に仲直りしたい。無理しない感じで、そして妥協しない感じで仲直りしたい。だってこれからもずっと仲良くしたいから。
そして気になるのはタケノシタ君が言っていた事だ。元気がなかったし、それで私に話を聞いて欲しいって言ってくれた。
嬉しい。嬉しいけど彼女の事あれこれ聞かされるのはどうかな。
私は彼女の事を大事にしているタケノシタ君が好きだったから。
あ~~でも彼女と別れて、それを私だけに教えてくれたし、最近急にいろいろ話が出来るようになったし…このまま少しずつ仲良くなっていけたら…
「ジュンちゃん…ジュンちゃんて!」ユリちゃんに強めに呼ばれてハッとする。
「呼んでるよ、ほら」
ユリちゃんが指差す方を見るとウエダがいた。こっち、という風に手まねきをしているウエダをあちこちから女子が見ているのがここから見える。
「私たちを呼んでるの?」とキョロキョロする私。
「あたりまえじゃん」とユリちゃん。「私たちっていうか、ジュンちゃんを呼んでるよ」




