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くじ作り

 放課後。「こっち」とウエダに言われて躊躇する。

 まだ教室に10人くらい残っている。ウエダは自分の机の上に紙を用意して、私に後ろを向かせて作業をしようと言うのだ。

もたもたしていたらウエダが腕を伸ばして私の椅子を後ろ向きにした。

「ほら、座れって」

チラッと教室に残ってる人を確認してしまい、カリヤさんがいるのを見て、あ~~、と思う。

 ゆずってあげたいくらいだよ、くじ作り。

 それでもウエダの席に向かって腰かける。ここで嫌がるのもカッコ悪いし、それにウエダと二人きりではないから。


 私とウエダと、そしてアキラ。

 アキラが言っていた通りに私を待つらしく、私の席の隣のイケダさんの席に横向きに腰かけ、私たちの様子を睨むようにがっつり見ている。

 日誌を書く前にくじを作ってしまおうという事で、私たちは無地のコピー用紙6枚をそれぞれ6等分して、ウエダが青のペンで男子の分を、私がピンクのペンで女子の分の番号を振っていく。後で三角に折ってくじの形にするのだ。



 手を止めてウエダが私をじっと見て聞いた。

「今日の日直誰と誰?」

「…私とウエダ君?」

「疑問形にすんなよ。日直じゃねぇやつがいるけど?」

「気にしないでいいから」とアキラが言った。「ほら、さっさとすませばいいじゃん。手伝おうか?」

「お前先に帰れよ、関係ねぇじゃん」

「ジュンを待ってんの。あんたこそ関係ないし」

「「…」」無言の私とウエダ。

関係はあるよね、日直なんだから。

「ウエダ、あんたさ、ジュンと二人きりになりたいの?」

アキラ…止めて欲しいな恥ずかしいじゃん。

「…」無言で紙に番号を振るウエダ。



「あんたさぁ」と言ったアキラにさらに嫌な予感がする。

「ジュンの事好きだよね」

ホラ、当たり。

「もう~アキラ…」

 ウエダに対する嫌悪感から邪推が入るのもしかたないのかもしれないけど…

 止めたつもりで名前を呼んだのにアキラは続けた。

「なんで?なんでジュンの事好き?」

なんでとか聞かないで欲しいな!好きだとも言われてないのに。

 でもウエダが静かに答えた。「そういうのは本人に言うから」

きゃ~~~~~!心の中で叫ぶ私。

 アキラがなおも言う。「本人も今いるじゃん。今言ってみなよ」

止めてよアキラ、マジ止めて。



「お前さ」ウエダが言った。アキラにだ。「ほんと、嫌な感じだな。今もずげぇ邪魔。やりにくい」

 …ヤダなウエダ、アキラにそんな事言って欲しくないな。アキラも余計な事言ったけどそれでも言って欲しくない。アキラももう今日は先に帰って欲しい。

「あんたこそ嫌な感じ」とアキラも言う。「中学んときは告られても誰とも付き合わないから、とか言っといて。高校になったらとたんに何それ。しかも私の友達」

アキラとウエダが睨みあう。

 大きなため息を一つついてからウエダが言った。

「お前にそんな事言われたくない。お前がいくら待ってても言わないから。そういうのは本人にだけ言うから」

「「…」」無言の私とアキラ。



 もう、ものすごく恥ずかしくてたまらなくなったから下を向いたら、アキラが大きく舌打ちしてから言った。

「中学の時は無下に振ってたくせに。ちょっと女子に人気があると思って調子に乗ってるよね?なんでジュンに軽々しく興味持ってんの?」

「アキラ!」

ウエダが何か言う前にと思って私が言った。「そんな事ないよ。ウエダ君一緒の日直なだけだから。別に私に興味があるわけじゃないんだから。そんな事ばかり言わないでよ、私が恥ずかしいじゃん。パパッと終わらせて私も早めに帰るから、今日は先に帰ってて?」

「…」返事をしないアキラ。

「アキラ?私大丈夫だよ?」

「何が大丈夫?」

「アキラの話してくれた中学の時の友達みたいに、私はならないから大丈夫」

「うん」今度は素直に返事をしてくれた。

「ウエダ」とアキラがウエダに言う。「ジュンは私の大切な友達なんだからね」

ふん?という顔をした後、ウエダはバカにしたように返事をする。「あ、そう」

「何その言い方。ジュン、じゃあ先に帰るけど。高速で終わらせなよ?」



 アキラがいる時にも居心地が悪かったが、ウエダと二人きりになった今も同じくらい居心地が悪い。アキラが私の事を特別に思ってウエダにいろいろ言ってくれるのは嬉しいけれど、心配し過ぎだよね。

 それに居心地が悪いのは、いつの間にかみんな教室から出ていっていて、アキラがいなくなったら本当に二人きりだったからだ。机を挟んで向かい合ってるし。何で言われるまま向かいあっちゃったんだろう。今さら向こう向くのも恥ずかしいし…紙に番号を振り終わった私たちは一つずつそれを三角に折り、重ねてもう一度三角に、そしてさらにもう一度。すぐに番号が見れないように折っていく。




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