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あんまり見るな


 「アキラ」と私はアキラを呼ぶ。

「なに?」

「もうウエダの話はいいよ。お腹いっぱいになったから眠くなってきたね。5時間目眠いや絶対」

「ジュン」

私はあくびをしかけながら返事をする。「なに?」

「ごめん、なんか…変な事いっぱいしゃべった」

「変じゃないよ」

そこで昼休みの終わりを告げる予鈴。

 私たちはスカートをパタパタとはたいて屋上を後にした。



 席に戻るとウエダと目が合う。

「お前さ」とムッとした声で言われる。「日直だって事忘れてるよな?」

「ぅあ!そうだった…ごめん!」

 日直は昼休みに、午前中までの日誌を書き込んでおいたり、チョーク箱や掃除ロッカーの点検をする。

「ごめん…午前の日誌書いてくれたの?」

「いや、お前いなかったし」

「あ~~…じゃあ私、5時間目の休憩時間にパパッと書いちゃうよ」

「いや、いい。放課後一緒に書けばいいし」

一緒に?

 ウエダってそういうのサボる感じのキャラっぽいのに。…あ、いや違った違った、前回の日直、一人でやってくれたんだった。それなのに人を見かけで判断したりして私は……あ~そうだったマズい、今日アキラがまた家に誘ってくれたのに…後でアキラに言わなきゃ、また違う日に誘ってって。

 うちにも来てもらおうかな?喜んで来てくれるかな?



 5時間目始まりの本チャイムが鳴って、つっ、と背中が押された。

「放課後忘れて帰んなよ」とウエダが言う。「それからこれ終わったら水本んとこプリント取りに行くって」

「うん、わかった」と私は振り返らずに返事した。

 そうそう、それも忘れてた。ウエダ結構しっかりしてんじゃん!ウエダってA型なのかもしれない。さっきはサボりそうなんて思ってほんとにごめん。



 5時間目のコミュニケーション英語Ⅰ。

 あ、当てられたのハヤシ君だ。ハヤシ君は私の席がある列のいちばん前。今日の好きな設定にしてたな、と今思い出す。忘れるくらいなら、やっぱり設定しなくて良かったんだよね。ハヤシ君には悪いけど、投げやりに決めた感。

 ハヤシ君、英語も出来るんだね。頭良いな。ハヤシ君は、人間を大まかに分類したら水本と同じ部類に入ると思う。顔もちょっと似てる感じ。淡々としていて草食系だけど芯がしっかりして難なくいろんな事をこなせる子だ。



 5時間目終わりの休み。ウエダに「ちょっと先に行っててすぐ来るから」と言って、アキラの席に行く。

 日直の仕事があるからと、アキラの家に寄らせてもらうのを後日に回してもらう話をしに行ったのだ。私も残って待つとアキラが言い出したが、遅くなるといけないから、と言いおいてウエダの後を追う。…と思ったら、ウエダは廊下で私を待っていた。それを当たり前のようにクラスの子たちや廊下を通った子たちに見られる。ウエダといると目立つから嫌だ。

 無言で二人並んで廊下を歩く。階の端のうちの教室から、反対側の端の職員控室がやたら長く感じる。



「お前、今日はタケノシタを見てないよな。ナカムラの事も」とウエダがポツリと言った。

 ぎくりとするが、はいはい見てませんよと思う。だって今日好きなのはハヤシ君だからね。

「オレが突っ込んだから見ないようにしてんの?」

フッ、とちょっと笑ってしまった。今日の好きなハヤシ君の事がバレていないから。…まぁ設定が遅くて私もほとんど見てないからだけど。

 「…違うよ?」と一応答える

「何笑ってんの?」ウエダがムッとして言った。

「笑ってない」

「タケノシタとナカムラとほんとはどっちの事が好きなん?」

ほんとはどっちも好きじゃないよ。と心の中で答える。好きだけど「ほんとの好き」じゃない。どっちかって言ったら、そりゃ4回も選んでるタケノシタ君だけど…


 「ウエダ君、廊下でそんな事話すの私は恥ずかしいよ」

「お前知らないの?タケノシタには中学から付き合ってる彼女がいるらしいって」

 廊下ですれ違う女子がウエダをチラチラ見て、そしてついでに「ふん?」て顔して私を見る。日直だから!と私はその度に思う。ウエダと一緒に歩いてんのは一緒の日直だからなの!

「私もそれ知ってるよ」と私は答える。

「それでも好きなん?」

いや、好きだって言ってないじゃん。「すごく良い子だなって思ってるって私言ったよね。誰かに聞かれてタケノシタ君が困るような事になったら悪いから、もう静かに歩いてよ」

 「じゃあもうあんま見んなよ」ウエダが小さい声で言った。

あんたに言われても設定したら見るっつうの。なんでそんな事ウエダに言われなきゃいけないんだ。



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