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ウエダと日直

 「ジュンもありがとうな~」と水本が言う。「おっ、ウエダの鞄持ってぇ~、もう~なんか可愛いなお前ら。あれ?イマイ?」

「さようなら」とアキラが水本に言う。そして私にも言った。「ほら、ウエダに鞄渡して早く帰ろ」

 どうしよう…ウエダにも帰ろうって言われたけど…

「あ~イマイ」とウエダがアキラではなく私の顔を見ながら言った。「ジュンは今日オレと帰るから」

 ジュンて呼んだ!!

 ここでか!今か!


 ぶわ~~っと自分の顔が一挙に赤くなるのがわかった。そしてウエダの顔もちょっと赤い。それを見つめてしまって「そんなに見んな」とまた言われる。

 ちっ、とアキラが小さく舌打ちしてからウエダに冷たい声で言った。

「あんたがジュンて呼ばないで」

え~~…アキラ…ウエダがアキラを睨む。

「僕もジュンて呼んでるけど?」と水本が水を差してくれたが、アキラはウエダを睨み返し、すぐに私の方を向いてニッコリと笑って「帰ろ?」ともう一度言った。

 私は困ってチラッとウエダを見る。ウエダははっきりとしたわざとらしいため息を大きく付いてからアキラに言った。

「よし、じゃあ仕方ねぇからお前も一緒でいいよ」

 アキラが嫌な顔でウエダを見て、バカにしたように言った。

「私はあんたが一緒じゃ嫌なの」

 


 「ジュンは私とウエダのどっちが好き?」アキラが聞いた。

驚いてアキラをまじまじと見つめてしまう。

 何でそんな事を言う?超アキラらしくない。

「イマイ」と水本が口を挟む。

 水本、もう控室の中に入ればいいのに。今水本に口を挟まれるのは嫌だ。らしくないアキラに、水本からは何も言わないで欲しい。

 だから私は慌てて言った。「ごめん!私急に思い出した、歯医者のアポ!ごめん!先に帰るから!」

 「「「…」」」

 3人の変な顔。

 私は…逃げたのであった。


 


 だから…朝学校へ行くのが少し億劫。

 昨日アキラから何の連絡もなかった。私もしなかったけど。しても返事が来ないかなと思ったのだ。少し重い気持ちの朝。

 学校に行ったらウエダが後ろの席だし、日直一緒だし。昨日ジュンて呼ばれたのがものすごく気になってるし!



 廊下から教室に入る前に教室の中にアキラがもう来ている事を確認する。

 アキラの席は教室の真ん中辺り。どうしよう…「おはよう」って言いに行こうかな。怒ってるかな、そこまで怒ってないかな…取りあえず荷物置いて…

 が、自分の席に鞄を置いた私の姿を見て、アキラがパパッと走って来た。

「おはよ」とアキラがそのまま寄って来て言ってくれる。「昨日はごめん」

 あんまり簡単にそう言って来てくれたので、私は返事に少し間を開けてしまった。

「…ううん!私こそ、先に帰ってごめん。せっかく待っててくれたのに」

 そう言うと、アキラはニッコリと綺麗な笑顔で返してくれた。

良かった。やっぱりアキラは素敵な子だな。コミュニケーション能力のない私の友達をやってくれてるだけはある。



 ガタっと音がしてウエダが登校してきたのがわかる。が、ウエダは何も言ってくれない。

 でもまぁいいか…ウエダは怒ったままだとしても。気になるけどこっちから話しかけるのは無理。

 ガタガタと机に物を入れる音。後ろの席っていうのがマズいよね。

「ジュン」とアキラが優しい声で続ける。「じゃあ、今日はうちに寄ってよ」

「…うん」

「あれ?もしかしてヤダ?」

そうじゃなくて、何も言わないウエダの事が本当は結構気になっているのだ。



 そこへガシッと急に肩を掴まれた。

「お前今朝日誌取りに行った?」ウエダだ。おはようもなしにそう言った。

「あ…ごめん行ってないや」

「いや、オレもここに来るまで日誌の事思いつかなかったから」

 良かった。ウエダも普通だ。それに好感が持てて、なんとなく今日好きな人をウエダにしてしまいそうだけど…絶対ダメだ。好きな人設定の事が全部じゃないにしてもウエダにはバレてしまってるし、今は結構ウエダの事が気になるから。

「じゃあ取りに行こ」とウエダが言う。

へ?一緒に?こういう時ってたいがいジャンケンして負けた方とかじゃないの?

 が、アキラがウエダに冷たく言った。「あんた一人で言ってきなよ」

「一人では行かねぇよ」とウエダ。「お前関係ねぇじゃん」

「えっ」ガタっと音を立てて私は椅子から立たされる。「ちょっ…ウエダ君」

 慌てた。ウエダに手首を掴まれたからだ。

「私が一人で行ってくるよ」と言ってみるが、そのまま引っ張られる。

 ざわっ、と登校してきていた子たちが私たちを見た。え~~、と言ってる女子の声も聞こえる。

 私もえ~~!?だっつの!




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