美容師の願い
俺の仕事は美容師、店長として小さな理髪店を経営している。
学生時代は野球一筋だったが、膝を痛めたこともあって今はこの仕事に携わっている。もちろん、今も草野球だけど野球も続けている。
野球とこの仕事に接点があるようには見えないだろうけど、怪我で野球を断念してからこの仕事につくことを希望した。学生野球はほとんどが坊主頭だから、俺も髪を五分刈りにしていたんだけど、その時に気がついたんだ。
__人は一人では生きていけない__
当たり前のようで、知らず知らずのうちに忘れている大事なことを、簡単に思い出させてくれる場所、それが美容室だということに気がついた。だって人は、自分一人で自分の髪を切ることはできないからね。
だから、俺は美容師をしている。髪を切ってもらってる時間は、どんなに長くても1時間には満たない。1日の1/24以下で、一生に換算したら1/700000以下ということになる。そんな短時間の間に、この当たり前のようで忘れがちな大事なことをお客様が思い出してくれたのなら、お客様のどんな言葉よりも俺は働き甲斐を感じるのだ。