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流浪の騎士  作者: 和楽
2/2

邂逅

日はすでに傾きかけていた。


ハルドニアの夏は短く、季節の移り変わりは突然にやってくる。まだ8月の半ばだと言うのに、火喰蜥蜴サラマンダーたちのコーラスはとうに止み、変わって月見狼ムーン・ウルフたちの遠吠えを毎夜のように聞くようになった。


日照時間も大幅に減り、大陸標準時のAM5時、夜のとばりが落ちるまであといくばくの猶予もなかった。


「あと一里ってとこか…」


唸るように呟き、男は歩行ペースを少しあげた。


街道とは名ばかりで、舗装もあってないような、野原の中央を突っ切って続くあぜ道である。


だだっ広い荒野に人影は男一人だが、あと一刻もすれば夜行性のモンスター達が大挙して押し寄せてくるだろう。


特にこの草原はムーン・ウルフ達の生息地である。


群れをなした彼らに遭遇するということは死と同義だ。


故に、街と街を最短で結ぶにも関わらずこの道は敬遠されがちで、多くは回り道を選ぶ。


「もっと早足でなきゃやばいかもな…これ…」


性急な性格とは程遠いのであろう。男は大仰にため息をした後舌打ちし、不満ありありといったしかめ面をしてその足取りを更に速めた。










半刻ばかり歩いただろうか。道は荒野から細い林道へと変わっていた。さっきまでとは打って変わり、曲がりくねった道は数十メートル先の姿も見せない。


「さっさと宿屋にありつきたいもんだな…」


そんなことを言ってから、ふと気付いたように、鍔の長いハットの上から頭をかき、一人旅は一人言が多くなっていけねぇ…とまたつぶやいた。


耳をつんざくような悲鳴が、前方からあがった。


男はピクリと顔をあげ、しばらくの間した。


モンスターか、盗賊か。


面倒言には巻き込まれたくねぇな…


そう思った後、先ほどの悲鳴が女のものだったことを思い返した。


「しょうがない…」


どこか諦めたような苦笑。


生き方が変わっても、性分は変えられないものだな…


トレジャーズハットを深くかぶり直し、男は駆け出した。


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