表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流浪の騎士  作者: 和楽
1/2

プロローグ~騎士の夢~

火の壁が目前まで迫っていた。


「ここは食い止めます!お逃げ下さい!姫!」


切迫した声。続いて剣や槍を打ちつけあう音、叫び声が交差する。


「国の、滅びなのです。どうして私だけが逃げられましょう」


「しかしっ…!」


鎧を付け、血に濡れた大剣に寄りかかった男と、華美なドレスを着た少女とか向かい合っている。


火と、血と、死に包まれ、今にも崩れかかった宮殿の中で、汚れ一つない少女の姿は現実味を欠いていて、その声は魔法のようによく通った。


「国があってこその姫なのです。もはやそれはありません。私の居るべき場所は、もう地上にはありません」


少女は困ったような笑みを浮かべて言った。その顔は、死を決意するにはあまりに幼く、はっとするほど美しかった。


こんな悲しい笑みがあっていいのか。たった17歳の少女に、何がこんなことを言わせるのか。


男の抱えた行き場のない怒りは、その矛先を静かに定めた。己の無力さと、眼前の敵。


「私が、なんとしてもあなたを助けます!例えこの剣を、何万もの血で染めようとっ…!」


「皇族直属近衛騎士デイノ」


激情にかられ、燃えさかるような男の声を、突き放すようにして冷ややかな声が遮った。


「あなたの騎士としての命を、今をもって解きます。今まで、ありがとう」


破裂音。


落下してきた宮殿の破片。二人を裂いた。


「姫っ…!」


さようなら。私の騎士様…


最後の一言は、声にならず、業火の中に消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ