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シンデレラシンドローム

 シンデレラ、はきっと十二時まで起きていられない子だったんじゃないか、と根拠もなく考える。理由なんてない、ただ日付が変わった途端に目を閉じたことに少し驚いただけ。勿体ないとか言ったのはどこのお嬢様ですかねえ、なんてベッドに転がっている少女に聞くも、当たり前だが答えは帰って来ずに、彼女は何故か苦しげな表情で寝息を立てている。現在時刻は深夜一時、彼女は一時間丸々を睡眠に宛てている訳ではなく、時折目を覚ましては俺が隣に寝ていることを確認して、ぼそりと呟きが聞こえ焦点を彼女に絞る。不思議なことに眠気は無かった。


「寝て良いの」


「だめ、わたしが寝るまで、待って」


 とんだお姫様だ、と笑うと、彼女はもう目を閉ざしていた。死んだように眠るなあ、と俺が髪に触れると、くすぐったそうに肩を竦める。

 セックスの後に愛がある、と倫理の教師が言っていた言葉を、否定する。まあ、あれはアルファベットのエイチとアイの順番に掛けた駄洒落だが、倫理ではそんな事を考えさせられたのだ。恋人のして良いことだとか、愛の定義、意義だとか、俺には到底わからないであろう事。でもひとつだけ、愛にセックスは関係ない。親兄弟や同性愛者でも無い友人とセックスをするか、と問われれば、当たり前のように首を横に振るだろう。愛は愛欲とは違う、慈しむ気持ち、恋とはつまり肉欲であるという偏見を、俺は肯定する。

 体を転がして外を見ると、開け放しのカーテンと窓が見えた。ちかちかと不安定に光っていた星がひとつ、姿を消す。ああ、あれは何年間に死んだのだろう、目を瞑れば、眠気が急くように瞼を押さえ付けるのだけれど、彼女がいつまた目を覚ますかもわからない。だから起きていないと、そう目を開けた俺を、風に揺れる木の葉がくすくす笑う。我ながらおかしいと思う、けれどそうせずにはいられない何かがあって、きっとそれが愛なんじゃないか、と、 明日朝起きたら、彼女に文句を言って、それから眠気に乗じて少しだけ素直に、言ってやろう。笑うのだろうか、泣くのだろうか、それとも驚いてくれるだろうか。どれだっていい、どう彼女が答えようと、その後は俺が寝る番だ。



あいらぶゆー


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