たどり着きたい星
今夜はデートだ
夜空を見上げて恋人が言う
「星がとても綺麗に輝いているわね」
アカデミアの天才なら、こんな甘い返事ができたのに
「そうだね。でも、どうして星が光っているのかを 今この世界で知っているのは、僕一人だけなんだよ」
そんな奇跡のような夜を、
羨ましいとさえ思った
今日は金曜の夜だ
ラボのモニターを消して家路を急ぐ
「シュレーディンガーの猫は、もうすぐ片付く」
企業の研究員だって、この基礎科学の深淵を愛している
「まさか。でも、どうして量子が確定的でありながら 観測者には不確定に映るのか、その理由の入り口にいるのは 今この世界で、僕一人だけなんだ」
もう一歩で、あの歴史的な夜の背中に
手が届く
あの日、彼が見上げた星に
今、僕の解く数式が、まっすぐにたどり着こうとしている
シュレーディンガーの猫はもはや僕には当たり前だ
お読みいただきありがとうございます。
*1: 夜空の星が光って見えるのは、星の中心で起きている「核融合」という反応でエネルギーが生まれ、そのエネルギーが光として宇宙空間に放たれているからです。
核物理学者フリッツ・ハウテルマンスとロバート・アトキンソンによりつきとめられました。詩の最初の甘いエピソードはハウテルマンスのものとされています。
*2: シュレーディンガーの猫は、ただいま解決中です。予定です。できたらいいな、、




