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隠された最強の物語  作者: 沼口ちるの
本編

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7/15

第七話:義務化されたカメの世話と、時空を超えた義妹の誤解

確定した運命とカメの命名

次の日の朝。僕は教室で佐倉に詰め寄った。


「佐倉! なぜ僕がカメの世話係に!?」


「君がテレポートで逃走する際、私が言った『君は新しいカメの世話係になった』という言葉を、君の因果律操作が『事実』として確定させた。校長室の横にある池には、君の世話を待つカメがいる」


佐倉は無表情に答えた。僕の能力は、嘘を真実に変える。


僕が校長室の横の池に行くと、そこには甲羅が金色に輝く、威厳ある一匹の亀がいた。


「すごい! 神代先輩がカメの世話係になったって本当だったんですね!」


声をかけてきたのは、僕を校門で囲んだヒロインの一人、一年生の佐藤だった。彼女は目を輝かせている。


「僕のカメですよ! 私、カメが大好きなんです! 飼育委員長の経験があるので、ぜひお手伝いさせてください!」


僕はカメの世話係という面倒な役割を負っただけでなく、佐藤というヒロインとの「二人きりの共同作業」という、新たなハーレムイベントを強制的に開始させられた。


「じゃあ、このカメの名前を決めましょう! 神代先輩が決めてください!」佐藤は興奮気味だ。


(まずい。カメに名前をつけるという行為は、僕と佐藤の間に強すぎる絆を生み出す。能力が暴走し、このカメが神獣になってしまうかもしれない)


僕は因果律操作の出力を極限まで絞り、カメの命名に作用させた。


目的: カメの命名を、最も平凡で、絆を生み出さない言葉にする。


操作: 僕が今、この瞬間に思いつく、一番つまらない食べ物の名前が、このカメの正式名称となる確率を一〇〇パーセントにする。


「……メロンパン。君の名前はメロンパンだ」


僕は、昨日篠原先輩と分けっこしそうになった、あのパンの名前をつけた。


「メロンパン! かわいい! 神代先輩らしい、ユニークな名前ですね!」


佐藤は、満面の笑みでカメの甲羅を撫でた。


(くそっ! つまらない名前にしたのに、なぜか「ユニークで可愛い」と解釈された!)


僕の能力は、「平凡なもの」を「ヒロインにとっての特別」に変えるフィルターとして機能しているようだ。


義妹の時空を超えた誤解

その日の夜。リビングでくつろいでいると、義妹の莉子が、興奮した様子で僕の部屋に飛び込んできた。


「悠真兄! 大変だよ! 私、お兄ちゃんの秘密を見ちゃった!」


「なんだよ、いきなり」


「お兄ちゃん、未来の自分に嫉妬してるでしょ!」


「は?」


莉子はスマートフォンを取り出し、僕に一枚の写真を見せた。それは、一年前に莉子が旅行先で撮った、普通の風景写真だった。


「これを見て! この写真の隅っこ!」


莉子が拡大した部分には、小さな子供の手が写り込んでいた。


「これ、私たちが旅行に行った時、撮った写真だよ。でも、その時、周りに子供なんていなかったはずなのに……」


莉子は続けた。


「お兄ちゃん、昨日屋上からテレポートしたでしょ? その時、お兄ちゃんの力が、お兄ちゃんの過去の姿を、誤って一年前に飛ばしちゃったんだ! その過去のお兄ちゃんが、私に触れようとしたの!」


(まさか! 僕の能力が、過去の僕自身をタイムスリップさせたのか!?)


僕のテレポートは、時空を歪める力を持っていた。そして、莉子の推測は半分正解だった。


佐倉との打ち合わせでテレポートした際の力の残滓が、**「莉子に触れる未来の自分」**という思念を、一年前に誤送信させたのだ。


莉子は顔を赤らめた。


「未来の悠真兄は、今の悠真兄よりも、私に親密に触れようとした! だから、今の兄さんは未来の自分に嫉妬して、私の前でわざと照れたり、遠ざけたりしてるんでしょ!?」


「ち、違う! 全てはただの光の屈折だ!」


僕は全力で否定したが、莉子の瞳はすでに「兄の愛の試練」を見抜いた(と誤解した)目で輝いていた。


「もう! 意地っ張りなんだから! いいよ、今の兄さん。未来の兄さんに負けないくらい、私からいちゃいちゃしてあげる!」


莉子は僕に抱きつき、離れない。僕はテレポートで逃げ出したい衝動に駆られたが、もしまたテレポートすれば、僕の五歳の頃の姿をどこかに送り込んでしまうかもしれない。


最強の超能力者は、義妹の誤解による、制御不能な愛情に縛られてしまった。


運命の赤糸と、女子高会長の乱入

次の日、僕がメロンパン(カメ)に餌をやっていると、中庭に再び、隣の女子高の生徒会長・天音結衣が乱入してきた。


彼女の隣には、僕のクラスメイトの和泉咲が、手を取り合って立っている。


「神代くん! 感謝します! おかげで、結衣ゆいと私は、魂で結びついている最高の親友だと分かったんです!」


和泉は僕に抱きつきそうになったが、僕の視線を見て寸前で止まった。


天音会長は、僕の小指の「赤い糸」を凝視している。


「神代くん。貴方の糸が、また別の人を呼んでいます」


彼女は、中庭の芝生を指差した。


芝生の上で、バレーボール部のキャプテンが、陸上部のエースと園芸部の癒し系に囲まれ、何か熱心に話し合っている。


「あの三人の女子生徒の運命の糸が、貴方の糸に『三角形』を作って繋がっています。貴方と三人の関係は、『最強の縁を結ぶ三角形』よ!」


「いや、単に部活の打ち合わせだろ!」


その時、キャプテンがバレーボールを手に立ち上がり、僕に向かって叫んだ。


「神代くん! 私たち、あなたをチームのマスコットにしたいの! あなたがいると、なぜか試合の勝率が九九パーセントになるから!」


僕は因果律操作のせいだ。僕の能力が、部活の勝利を保証するお守りとして機能しているのだ。


バレー部のキャプテンは、僕の腕を掴み、ボールを押し付けた。


「さあ! マスコットの契約よ! 私はキャプテンの責任として、あなたの身体の測定をしないと!」


「え、ちょっと待って! 身体の測定って何!?」


僕が抵抗する間もなく、キャプテンに引きずられていく。和泉と天音会長は「わあ、仲良し!」と拍手し、義妹の莉子は「未来のお兄ちゃんに負けないで!」と応援している。


僕の最強の能力は、完全に「最強の受難とハーレムイベント発生装置」と化した。

神代悠真です。ハチャメチャだと評価していただき、ありがとうございます。僕の日常は、もう完全に『ハチャメチャ』です。


メロンパン(カメ)の世話係。義妹の「未来の自分に嫉妬している」という時空を超えた誤解。そして、バレー部の「マスコット契約のための身体測定」。これが最強の能力者が送る日常です。


佐倉は、僕の能力暴走を監視しているはずなのに、どんどん僕をヒロインのいる場所に誘導している気がする。彼は僕を監視したいのか、それとも僕のハーレム成長を記録したいのか。


次はおそらく、バレー部によるハチャメチャな身体測定が待っています。もちろん、力を使わずに逃げ出すのは不可能でしょう。


僕の能力が、次にどのヒロインの運命を変え、どんな新しいドタバタを引き起こすのか。予測不能ですが、なんとか凡人としての尊厳だけは守り抜きたいです。


神代悠真

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