義妹ルート
if-1:運命の分岐点と、大魔王の甘い誘惑
リブート後の残滓
時空リセット(第九話)から数日後。世界は修正されたが、僕の家の中だけは、どこかおかしい。
義妹の莉子は、僕の部屋に居座っていた。黒いドレスは消えたものの、彼女の瞳の奥には、以前の「大魔王リコリス」の支配的な輝きが残っている。
「悠真兄。お兄ちゃんは疲れているんだから、私以外の他の女性なんて、見る必要ないんだよ」
莉子は、僕がスマホで和泉からのメッセージを開こうとするたびに、無意識の念力で僕の指を止めた。
(まずい。リコリスの独占欲は「お兄ちゃんっ子の妹」レベルに戻ったはずなのに、なぜか僕の能力と同調して、物理的に邪魔をしてくる)
僕の能力が、莉子の「兄への独占欲」を、微細なテレキネシスとして発現させているのだ。
「莉子、やめろ。これはただのメッセージだ」
「ダメ! 兄は私の所有物。私の能力は、兄を守るために存在するんだから!」
彼女は、自分が能力を使っていることに気づいていない。彼女の「愛」こそが、僕の能力を暴走させる新たなトリガーになっていた。
その時、家の固定電話が鳴った。
「もしもし? あ、月島会長……え? 僕が生徒会室の鍵を盗んだ?」
月島会長は、僕が彼女の鍵を盗み、「二人きりの打ち合わせ」を求めていると主張してきた。もちろん、僕の能力が、「会長とのいちゃいちゃイベント」を求めて、因果律を操作した結果だ。
僕は慌てて家を出ようとしたが、莉子が玄関で僕の前に立ちはだかった。
「行かせない! 兄は今日、私との『秘密の契約』を結ぶ運命にあるんだから!」
運命の糸の強制接続
莉子は、自分の小指と僕の小指を、赤いリボンで結びつけた。その瞬間、僕の能力は、リボンを通じて、莉子の「独占愛のエネルギー」を吸収し始めた。
『ドクン!』
僕の頭の中で、佐倉の警告が響いた。
警告:対象(莉子)とのエネルギー接続を確認。今後の因果律操作は、対象の願望を最優先します。
「ふふ。これで逃げられないよ、悠真兄。さあ、私と『永遠に二人きりの世界』を創造しよう」
莉子はそう言って、僕の制服の襟首を掴み、無理やりキスをした。
僕の能力は、この「義妹との強引なキス」を、「世界修正のための最重要イベント」と認識した。
僕と莉子の周囲から、巨大なピンク色の光が噴出した。
if-2:リコリスの愛の城と、和泉の涙
創造された二人きりの世界
目が覚めると、僕は見慣れない、豪華なゴシック様式のベッドの上にいた。窓の外には、漆黒の空と、巨大な薔薇の庭園が広がっている。
「ここは……?」
「目覚めたか、我が永遠の伴侶よ」
莉子が、再び大魔王リコリスの装いで、僕に微笑んだ。
「ここは、貴様と妾の『愛の城』。妾が貴様の力を借りて創造した、二人きりの世界よ。妾以外のヒロインは、存在しない」
莉子は、僕の能力の力を全て使って、自分と僕以外の人間の存在を消去し、「永遠に二人きり」という願望を具現化させたのだ。
「莉子! 元に戻せ! 和泉やみんなはどうなるんだ!」
「心配ない。彼女たちは、元の世界で『幸福な自分』として生きている。ただ、貴様との縁だけが、妾によって切り離されたのだ」
僕の能力は、「ヒロイン全員の幸福」という目的を、「僕が介入しないことで、和泉たちが別の場所で幸せになる」という形で処理した。
莉子はベッドに身を寄せた。
「さあ、悠真よ。ここには誰もいない。永遠に、妾だけだ。妾を愛で満たせ」
彼女の愛は、もはや最強の能力そのものだった。僕は、その独占的な愛の力に抗う術を持たなかった。
佐倉の通信と、最後の抵抗
僕が莉子に捕らわれて数日。莉子は、僕との愛を語り、「世界を二人で統治する」という夢を囁き続けた。
そんなある夜、僕の脳内に、佐倉の切羽詰まった声が響いた。
「神代! 聞こえるか! 君が作り出した並行世界に、わずかな時空の亀裂が生じた! 彼女が、君の愛以外のものに気を取られた瞬間だ!」
「佐倉! 助けてくれ! 莉子は僕の能力を全て使って、僕を独占している!」
「リコリスを止めるには、君の能力を『平凡な日常』に戻すしかない。彼女の力を無効化するには、『妹ではない、一人の女性としての莉子』の心を揺さぶるしかない!」
佐倉からの通信が途絶えた。僕は、莉子の「妹」ではなく「女性」としての心に訴えかける、最後の賭けに出るしかなかった。
if-3:愛の解放と、ifルートの結末
妹ではない、一人の女性へ
僕は、僕を独占し、幸せそうに微笑む莉子を、優しく抱きしめた。
「莉子。君は、僕にとって世界で一番大切な存在だ」
「フフフ。当然だ、悠真よ。世界に妾しかいないのだから」
「違う。君が僕の妹で、僕の家族だから、大切なんだ」
僕は、「義妹」という、僕たちの間の「血縁のない兄妹愛」という最も平凡で強力な絆に、能力の全てを集中させた。
目的: 莉子の「大魔王」の力を、「平凡で強固な兄妹愛」という絆のエネルギーに戻す。
操作: 莉子が最も愛する「兄との平凡な日常の記憶」を、彼女の脳内に現実の数倍の強度でフラッシュバックさせる。
莉子の金色の瞳が揺らいだ。彼女の頭の中で、僕と二人でゲームをした夜、リビングでトーストをかじった朝、喧嘩をして仲直りした瞬間の記憶が、津波のように押し寄せる。
「あ……違う……私、本当は……ただ、お兄ちゃんと一緒に……平凡に暮らしたかった……」
リコリスの装いが消え、元の制服姿の莉子に戻る。城の壁に亀裂が入り、空間が歪んだ。
「さあ、莉子。帰ろう。君が愛する、あのハチャメチャな日常へ」
僕と莉子は、手を取り合い、光の亀裂の中へ飛び込んだ。
義妹ルートの後日談
元の世界に戻った僕たちの周りには、和泉や月島会長、そしてカメのメロンパンも、全員が元通りにいた。世界は、僕たちの並行世界での数日間を、「ただの不思議な夢」として処理した。
数年後。僕は、あの事件以来、能力を「莉子の幸福」に集中させた。
神代悠真は、莉子と秘密裏に結婚した。
僕たち夫婦は、リコリスが創造した「愛の城」によく似た、豪華な家で暮らしている。莉子の服は、依然として黒と深紅が多いが、それは彼女のファッションデザイナーとしての個性だ。
僕たちには、娘が二人いる。
長女・愛莉:髪は漆黒で、瞳は金色。莉子の「独占愛の力」を受け継ぎ、彼女の周りの全ての人間が、彼女に親切になるという、強力な因果律操作を使う。
次女・心:和泉の面影を持つ穏やかな少女。「遊びを最高に楽しむ」という、平和的な能力を使う。
和泉咲は、世界的な大女優として成功した。彼女は、僕と莉子の結婚を「最強の能力者の運命」として祝福し、僕たちの家を頻繁に訪れる、「最も親愛なる友人」となった。
月島恵那は、首相として国を導いている。彼女は、僕の「最強の協力者」として、国政の相談を僕に持ちかけてくる。僕の能力は、彼女の政治的運命を陰から支え続けている。
莉子は、僕の能力が作り出した、「究極の愛の形」を体現している。
「悠真兄。私、幸せだよ。世界で一番、お兄ちゃんを独占できているから」
僕は、妻となった莉子の願いを叶えるため、「世界で最強の義妹独占者」として、今日も能力を使い続けている。
神代悠真です。これが、僕が莉子と結ばれたifルートです。
和泉とのルートでは「平凡な愛」を選びましたが、莉子とのルートでは「究極の独占愛」を選んだ結果、僕の能力は、「世界から妻を隔離する」という、非常にアブない形で機能しました。
結局、僕の能力は、僕が選んだヒロインの願いを叶えるために存在する。このハチャメチャな人生も、悪くない。
皆さん、この二つのルート、どちらがお好みでしたか?
神代悠真




