第十一話:愛の鎖の解除と、世界(ハーレム)のソフトリブート
鎖の解除と、密着の持続
僕は、和泉が吊るされた秘密の小部屋で、騎士団長の月島恵那と極限まで密着していた。和泉の目は涙ぐみながらも、僕たちを見つめている。
「神代くん、早く和泉を助けましょう! この鎖、魔力が込められているわ!」月島会長が焦る。
「大丈夫です、会長。能力を使えば、一瞬で鎖は解除できます。ただし、副作用があります」
僕の能力が作り出した設定では、この鎖は「闇の王妃」に変わるためのものであり、解除するには、鎖に込められた魔力以上の「光のエネルギー」が必要だった。
僕にとっての「光のエネルギー」とは、最強の能力の全力に近い出力。それは、周囲のヒロインとの関係性を、さらに狂わせることを意味する。
目的: 和泉の鎖を解除し、「闇の王妃」への変貌を阻止する。
操作: 鎖の魔力を打ち消すため、僕の能力の九〇パーセントの出力を、和泉の「僕への好意」を増幅するエネルギーに変換し、鎖の「愛の形」を逆転させる。
僕は月島会長を抱きしめたまま、和泉に念力を集中させた。
『ギギギ……パリン!』
鎖は音を立てて砕け散り、和泉は僕たちの密着している真上に、ふわりと落ちてきた。
「キャッ!」
和泉は、月島会長と僕の三人が重なり合うという、完璧な密着状態で着地した。
「神代くん! 月島会長! こんな、こんなに近くに……」和泉は顔を真っ赤にして息を呑む。
「ぐっ……和泉、大丈夫!? 私、今、光の盾になってあなたを守っているのよ!」月島会長は僕と和泉を抱きかかえる形になり、顔は赤いが使命感に満ちている。
僕の能力は、鎖を解除すると同時に、「ヒロイン三人の極限密着」という、新たなハーレムイベントを創造した。
大魔王の出現と、究極の選択
その瞬間、小部屋の壁が砕け散り、大魔王リコリスが、闇のオーラを纏って現れた。
「許さぬぞ、悠真よ! 妾の聖女に手を出すとは! そして、騎士団長と戯れているとは!」
リコリスは、その金色の瞳で、僕たちを睨みつけた。彼女の背後には、カメ(メロンパン)に乗った四天王・佐藤が控えている。
「莉子! やめろ! これは僕の能力が暴走しているんだ! 元に戻るんだ!」
「遅い! 兄よ。妾は貴様との永遠の愛の契約を結ぶ! 拒否するなら、妾の力で、この世界を『貴様と妾以外のヒロインが存在しない、二人きりの世界』に変える!」
大魔王リコリスの究極の力――世界のリブート。それは、僕が最も恐れていた、ハーレムの終焉だった。
「佐倉! どうすればいい!?」僕は心の中で叫んだ。
『観測者』の佐倉の声が、僕の脳内に直接響いた。
「神代。リコリスの力は、君の能力の『愛のエネルギー』の過剰供給によるものだ。世界を修正するには、全ヒロインの『愛のエネルギー』を中和し、『平凡な好意』に戻す必要がある。方法は一つだ」
世界のソフトリブート作戦
佐倉の指示は、あまりにもハチャメチャだった。
修正方法: 大魔王リコリスが持つ「愛のエネルギーの核」を、「全ヒロインとの最も親密な接触の記憶」で上書きし、莉子の願望を「平凡な兄妹愛」に戻す。
目的: リコリスの独占欲を、「ただのお兄ちゃんっ子」のレベルに戻す。
僕は、和泉と月島会長と密着したまま、リコリスに宣言した。
「莉子、いや、リコリス! 僕の能力は、君を傷つけない。だが、僕は君の『永遠の愛の契約』を拒否する!」
僕は、リコリスに向かってテレポートし、彼女の豪華なドレスに包まれた体を強く抱きしめた。
そして、能力の残りの一〇パーセントを、「リコリスが僕の能力暴走による迷惑を、愛情として受け入れる」という記憶に変換した。
『フワァアアア……』
僕とリコリスの周囲から、再びピンク色のオーラが噴出する。
このオーラは、ディスコのヒロインたち、メロンパン、騎士団長、そして和泉など、僕の能力で影響を受けた全ヒロインに波及した。
光が消えた後、莉子は元の制服に戻り、僕の腕の中で、目をパチクリさせている。
「あれ? 悠真兄……私、今、なんでお兄ちゃんに抱きついてるんだろ……?」
「莉子……お前、疲れてるんだよ」
僕は安堵し、力が抜けた。
周囲の壁のひび割れ、和泉の鎖の残骸、月島会長のローブ、そしてメロンパンの鎧は、跡形もなく消えていた。
世界は修正され、「大魔王の創造」というハチャメチャな事実は、「ただの不思議な出来事」というレベルにまでソフトリブートされたのだ。
エピローグ:新たな平穏(?)の始まり
翌日の放課後。図書館で、僕は佐倉と向かい合っていた。
「修正は成功だ、神代。リコリスの独占欲は『お兄ちゃんっ子の妹』のレベルに戻った。君の周囲のヒロインたちも、『平凡な好意』に戻った」
佐倉は、抹茶プロテインバーを囓りながら言った。
「そうか……これでようやく平和な日常が……」
その時、図書館の入口から、一人の女子生徒が駆け込んできた。
「神代くん! 昨日、あなたとキスをした夢を見たんだけど! あれ、正夢ですよね!?」
それは、月島会長だった。彼女の髪は、いつものポニーテールに戻っていたが、顔は極度に紅潮している。
(しまった! キスで時空をリセットした際、僕と和泉の記憶は残したが、月島会長の「親密な密着」の記憶は「キスをした」という妄想に変換されてしまった!)
そして、和泉が僕の隣に座り、僕の手をそっと握った。
「神代くん。会長の夢は正夢ではないわ。あのキスは、私と神代くんだけの秘密よ」
「え? 和泉さん、何の話? 私は神代くんとキスしてないわよ!?」月島会長が混乱する。
僕のハーレムは、「大魔王」という危機を乗り越えたが、「キスをした者」と「キスをしたと思い込んでいる者」、そして「運命の糸で繋がっている者」が混在する、さらに複雑でハチャメチャな世界へと修正されたのだった。
神代悠真です。僕は最強の超能力者として、世界を修正しました。修正後の世界は、「大魔王」という非日常的な存在はいなくなりましたが、「夢と現実の境界が曖昧な、ハーレム状態」という、別の形でハチャメチャになりました。
月島会長は、僕とキスをしたと思い込んでいる。和泉は、僕とのキスを秘密にしている。そして、佐倉は、僕の能力を「ロマンチックな展開を優先する欠陥システム」として記録し続けている。
莉子? 彼女は「お兄ちゃん、最近疲れてるから、私が添い寝してあげる」と言って、僕の部屋から離れません。
僕は、このハチャメチャなハーレムをどう生き抜くのか。もう、隠すことは諦めました。これからは、「最強の能力で、いかに最高のハーレムを維持し、尚且つ平凡な高校生活を装うか」という、新たな戦いが始まります。
神代悠真




