カフェ日和
雰囲気もメニューも好きで、よく訪れる喫茶店がある。
昔、人に教えてもらって以来、気に入って来るようになった場所だ。
日曜日が休みだから、行きたいと思っても行けない時も多い。
だから、今日のように思いがけず平日に休めたりすると、つい足を運んでしまう。
この店のどこに惹かれるのか考えてみた。
まず、立地がいい。
大通りから一本入った道沿いに、外界とは遮断されたかのように密やかに佇んでいる。
どう見ても喫茶店とは思えない、無機質で素っ気ない造りの外観。
入口は、今時珍しい引き戸タイプだ。
「入口はこちら」と書かれたドアを開けると、カラカラとどこか懐かしい音が店内に響く。
そして、ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香り。誰か、マサラチャイでも頼んだのだろう。
「こんにちは」
マスターと奥さんが、柔らかな声と表情で静かに迎えてくれるところも好きだ。
わりとよく来ている方だと思うが、積極的に話し掛けて来ない適度な距離感が心地良かった。
この店は、1階がオープン形式の厨房で、2階が喫茶スペースになっている。
2階へとのびる木製の階段は、マスターの手作りなのか少し右に傾いていて、上るたびにぎしぎしと音を立てた。
階段を上り終えると、少し薄暗い秘密の隠れ家のような空間が広がる。
壁は白い漆喰で、窓枠は白木にビンテージ加工を施したレトロ感のある仕上がり。
テーブルと椅子はアンティーク風で、7席全てバラバラだ。
台形の室内に段差や仕切りを設けながら、それぞれが干渉し合わないよう配置されており、他に客がいても声や音が邪魔にならない工夫がされている。
置いてある本や雑誌も少し捻ったものが多く、マスターのセンスの良さが感じられた。
BGMは、店の雰囲気にピタリとマッチした、控えめながら心地よい選曲。
聴いていると身体にじんわりと染み込んでくるような気がするのは、疲れがたまっているせいだろうか?
この店は、人にすすめてもらったにも関わらず「自分の場所」という気持ちが強くて、他人にすすめたこともなければ、連れてきたいと思ったこともない。
でも、彼女になら紹介してもいいと思えたし、何よりオレが一緒に来てみたかった。
彼女ならここを気に入ってくれる気がしたし、好きな人とお気に入りの場所にいられるなんて、幸せなことだと思ったから。
機会があったら、今度は彼女がよく行く場所に行ってみたい。
彼女を形づくるモノやコトを知りたいし、彼女の友人にも会ってみたい。
でも、今一番会いたいのは、彼女の家族。
会ったら、彼女のことがもっと解るかもしれないから。
注文したものが運ばれて来た。
この話は、また今度。
END
本作品はブログで連載しているシリーズものの中の一つです。
短編「セカイ」と同じ人物の視点の話になっています。




