表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第6章 氷の王国と契約の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/111

第4話 フローリアの願い

 青白い月が薄雲に滲んで、雪面の粒がかすかに光っていた。

 さっきまで封印だった氷の花は、跡形もなく形をほどき、真ん中に残ったのは――少女。青銀の髪、氷色の瞳。吐息が鈴の余韻を残す。


 彼女は一度だけまばたきし、まっすぐ俺を見た。


「……封印を解いてくれた……あなた、何者?」


「レオン。精霊の契約者だ。――精霊も人も、どっちも救いたいでここに来た」


 言い終えた途端、ミルが肩をすくめる。


「また変なの増えた!」


 少女の眉がぴくりと動く。


「変なではない。私は――氷の花弁、フローリア」


 名乗りと同時に、彼女の足元に六角の結晶が一輪、濃く咲いた。防御の薄膜がまだまとわりついていて、俺が半歩近づくと、氷の膜がそっと距離を取らせる。


「悪い、無理には触れない。けど……大丈夫か」


「触れる必要はない。……今は」


 刺すような言い方だが、声は震えていない。強い。

 けれど次の瞬間、遠雷みたいな低い脈が地中から伝わってきて、彼女の瞳が微かに揺れた。


「……王が――目覚めようとしている」


 王。氷精霊王。世界の北の心臓。


 リアが短く息を呑む。「封印の循環が断たれている証です。原式は解凍=再生。今の書き換えは凍結=隔離。痛みの中で起き上がろうとしている」


「痛みは怒りに、怒りは吹雪に変わる」

 フローリアの視線が城の方向を射る。

「封印守――スヴァルドは均衡の剣。王を守るためなら、人も精霊も切り捨てる」


 嫌な予感は、だいたい当たる。

 城内の刻印鏡がこちらを拾ったのだろう。街の方角で鈍い鐘が二度、雪に吸われながら鳴った。カイが肩をすくめる。


「長居は無用。足跡は消してるが、解除の波形は消えない。追ってくる」


 俺はフローリアを見た。彼女はほんの少し顎を上げ、まだ警戒の氷をまとっている。


「……フローリア。ここから離れる。一緒に来てくれ」


「人間に守られる必要は――」

 言い切る前、彼女の視線が俺の胸の《炎紋》に触れて、わずかに言葉がほどけた。


「……ただ、あなたの炎は、燃やし方が違う。融かすのではなく、ならす熱。王の凍痛を、和らげるかもしれない」


 彼女はゆっくり息を吐くと、掌を胸に当てた。六花の紋がうすく灯る。


「正式な契約はしない。代わりに――暫定同調プロビジョナル・リンク。私の六花と、あなたの炎紋を微弱に同期させる。感情の混線は遮断、共有は温度傾向と危険閾値のみ。あなたの熱が破壊に傾いたら、即座に切る」


 リアが頷く。

「祈りで干渉域を狭めます。衝突しない間を作るので安全です」

 ゼルフィアが掌に雷の輪を描く。

「位相は俺が安定化する」

 ミルは腕を組んで、半分の笑み。

「つまり仮メンバーね。監視付きだけど」

「監視も兼ねる」

「やっぱりツン!」


 フローリアが小さく目を伏せ、六花の指先を俺の炎紋の上へと翳した。

 触れていないのに、皮膚の下で温度が合う。金紅の鼓動が白へ寄り、氷の輪郭が少し丸くなる。


「……これでいい。――見せて。燃やさない炎を」


 鐘の音が三度目を打つ。刻印鏡の帯隊が近い。

 俺たちは街外縁から下層の路地へ、雪陰を拾いながら滑り込んだ。


 角をひとつ曲がったところで、正面から鏡持ちの告発係が飛び出す。

 鏡面が霜色に変わり、俺の外套越しの炎紋に反応――狭い路地で包囲完了、の図。


「来るぞ」

 ゼルフィアが地面を軽く叩き、薄い雷が石畳を走る。

 フローリアが一歩前へ出て、空へ指先を撫で上げた。


氷花障ペタル・スクリーン


 路地の空気に薄い花弁がいくつも重なり、鏡の反射波が入射角ごとに屈折して散る。

 俺は障壁の縁へ手を添え、熱を均す。温度差が生む亀裂を出さない――割れない氷が成立する。


「視界を落とす!」

 ミルが足元に風を叩き込み、乾いた雪塵を舞い上げる。

「左、狭い抜け道!」

 カイが手で合図し、ゼルフィアの雷振動が石畳の凹凸を均して滑走路に変わる。


「走る!」


 花弁の障壁をすべらせるように、俺たちは路地の狭間を抜けた。

 背後で鏡の光が鈍くきしみ、追手が方向を見失う。頭上でフローリアが指を鳴らすと、氷の小鳥が三羽、別々の路地へ飛んだ。気配を引くデコイだ。


 城壁の影――風の弱い帯に入ったところで、俺たちは一度息を整えた。

 フローリアの肩が上下している。乱れは少ない。けれど、さっきより瞳の色が柔らいで見えた。


「……助力は、必要だった。礼は言わない。けれど――認める」


「それ、礼だよ」

 ミルが小声で笑い、フローリアがほんの僅かに頬をふくらませた。

 六花の結晶が、さっきより丸い輪郭で足元に散る。尖りが少し、融けた。


 そのときだった。

 白い影が夜を横切り、俺の前にふわりと舞い降りる。

 白羽の信使――氷の鳥だ。くちばしに小さな封書。封蝋には雪片と王冠の紋。


 リアが封蝋に触れ、目を瞬く。「王家紋……しかも、王女印」

 封を切ると、短い文が現れた。


城下の騒擾、把握しています。

あなた方に客人としての話を望みます。

北門下の古井戸へ。

            ――エリシア


 フローリアが封蝋を見て、小さく瞼を伏せた。


「……エリシアの印。彼女は間に立つ者。人と精霊、どちらの声も聞ける」


「城に入れってことか」

 カイが眉を上げる。

「正面じゃなく古井戸。完全に内密だ」


「罠の可能性は?」

 ゼルフィアの問いに、フローリアが首を振る。

「彼女は嘘をつかない。……ただ、王城は裂け目だ。保守派と協会の影が深い」


 俺は封書を握り直し、胸の炎紋に意識を落とす。

 微熱が返ってきた。行け、と。

 それに、さっきの路地で俺たちを逸らした覆面の少女――あの匿名の手と、文面の気配は同じだ。


「行こう。北門の古井戸へ」


 ミルが息を吐く。

「やれやれ、今度は王城ルートか。寒いし面倒くさいし……でも、ちょっとワクワクするのが悔しい」

「正直でよろしい」

 ゼルフィアが肩を回し、リアが祈りの灯を小さく揺らす。

 フローリアは視線をわずかに逸らし、そして戻した。


「……暫定同調は、続ける。あなたの炎が、どちらへ傾くのか。見極める」


「見届けてくれ。俺も、君の冷たさが守っているものを、見たい」


 六花と炎紋の間に、ほんの一瞬、温度の橋が架かった気がした。

 雪がサラ、と小さく鳴り、遠くで氷の鼓動がまた一度、低く響く。


 王が、目を覚ます。

 だからこそ――急がなければならない。


 俺たちは城壁の影に沿って、北門の井戸へ向かった。

 井戸の縁に張った薄氷が、月光で青く光る。覗き込むと、暗い水面に一瞬、青白い髪と精霊の瞳が揺れた気がした。


 間に立つ者。王女――エリシア。


 氷の国の真ん中で、世界は割れ目をあらわにしている。

 その隙間に橋をかけるために、俺たちは降りていく。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークすると更新通知が受け取れるようになります!


ブクマ、評価は作者の励みになります!


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ