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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第5章 灼熱の灼熱の砂漠と炎帝の影

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第25話 誓いの空

 ――夜が、ほどけていく。


 砂漠の地平線が灰から薄金に染まり、冷たい風が砂を撫でていった。

 息を吸うと、胸の奥の《炎紋》が微かに脈を打つ。

 イグニスの温度は、もう痛みじゃない。ただ、進めと背中を押す熱だ。


 俺は砂丘の頂で足を止め、北の空を見上げた。

 淡い白の帯が、夜天の残滓の上にゆらぎながら走っている。

 オーロラ――と言うには細すぎるけれど、確かに導く光だった。


 まだ暗い背後で、欠伸を噛み殺す声がした。

「れおーん……さむ……風、さむ……」

「お前、寒がる準備だけは万全だな。」

 振り返ると、毛布にくるまったミルと、肩に霜を乗せるゼルフィアが並んでいた。

 ゼルフィアは眉をひそめて、氷の粒を指で弾く。

「夜明け前は気温が落ちる。北に入れば、この十倍は堪えるぞ。」

「ひぃっ、ゼルちゃん脅かさないで! もう帰ろうぜ!」

「北へ行く前から帰るは無しだ。」

 思わず笑ってしまい、胸の張り詰めが一枚はがれた。


 最後に歩み寄ってきたのはリアだ。

 杖頭に宿した小さな灯が、風を恐れずに揺れている。

「支度は整いました。……レオンさん、心の方は?」

「とっくに。」

 言い切ると、リアは目を細め、安堵とも決意ともつかない微笑を浮かべた。


 砂がさらさらと流れ落ちる音だけが、夜明けの静けさをやさしく刻む。

 俺はもう一度、北へ顔を向ける。

 白い光の帯はさっきより濃く、確かに“先”を示していた。


 イグニス。

 見えるか。俺は、行く。


 ――ここからが、俺の番だ。


 胸の炎紋に手を当て、息を整える。

 言葉にして、世界に刻む。

 そうしなければ、すぐに迷子になるのを俺は知っている。


「聞いてくれ。」

 振り返って、仲間たちを見る。

 眠そうに目をこするミル、警戒と期待を同じ比率で抱えるゼルフィア、

 そして祈りの灯を握るリア。

 みんなの視線が、俺に集まった。


 砂の冷たさが足首を切る。

 それでも、喉は自然に開いた。


「――精霊も人も救ってみせる。それが俺の……精霊契約者としての道だ!」


 言い終えた瞬間、胸の奥で炎がコッと弾けた。

 内側のどこかに灯りが点り、背骨がすっと伸びる。

 空の白が、ほんの少し近づいた気がした。


「はいはい、リーダー様のありがた~い宣言、確かに承りました~。」

 ミルがにやにやしながら、毛布の端で拍手をする。

「でもさ、救うって言ったからには、私の凍った指先もきっちり救ってよね?」

「まずは厚手の手袋をしろ。」

 ゼルフィアが手袋を差し出すと、ミルは「ありがと」と素直に受け取る。

 その横顔は寒さに赤いが、瞳はいつもより澄んでいた。


 リアが小さく頷く。

「救うは軽い言葉じゃありません。でも、あなたが言うなら――届く気がします。精霊も人も、同じ世界の命ですから。」

「うん。届かせる。」

「では、記しておきますね。」

 リアは杖の灯を空へ掲げ、祈りの言葉を短く紡いだ。

 光は細い筋となり、北の白へ吸い込まれていく。


「よし、じゃあ――」

 俺は荷を担ぎ直し、砂丘の斜面に足を向けた。

 金の線が地平を割り、夜と朝の境界を押し広げていく。

 砂漠が、わずかな霜を纏って煌めいた。


「先頭は俺。ゼルフィア、方角の微調整を。ミル、風の層で砂を抑えてくれ。リア、体温落ちる前に休憩のリズムを見てくれ。」

「了解。」

「りょーかい!」

「承知しました。」


 返ってくる声は、どれも頼もしい。

 気づけば、俺の頬も風の冷たさではなく、熱で緩んでいた。


 砂丘を下りる途中、ミルが肩でぶつかってくる。

「ねえレオン。」

「ん?」

「さっきの道だ!ってやつ、ちょっとカッコつけすぎじゃない?」

「……うるさい。」

「でも、いい顔してた。」

 からかいの影に、嘘のない笑み。

 ゼルフィアが横目で見て、薄く笑う。

「大言壮語は、この旅には必要だ。寒さに負けるとき、焚きつけになる。」

「ほらね、ゼルちゃんも褒めてる!」

「褒めてはない。」

「褒めて!」

 くだらないやり取りが、胸の熱をちょうど良い温度に保ってくれる。


 リアが一歩後ろから、そっと問う。

「レオンさん。」

「うん。」

「あなたの救うに、あなた自身は含まれますか?」

 足が半歩だけ止まったが、すぐに進み直す。

 少しだけ考えて、答える。

「……含める。みんなで、俺も救う。」

 リアは満足そうに微笑んだ。

「それが聞きたかったんです。」


 砂の感触が硬く変わる。

 前方、霞んだ稜線が白く盛り上がっていた。

 氷の王国フロステリアへ続く、北の山裾。

 遠すぎるほど遠いのに、今はなぜか“届く”距離に思える。


 背後で、朝の第一声の鳥が鳴いた。

 見上げた空は、もう夜ではない。

 東から押し寄せてくる光の波が、砂漠の色を一枚ずつ塗り替えていく。

 北の白い帯はまだ残り、俺たちを待っている。


 大丈夫だ。

 炎は消えない。

 凍てつく世界の中でも、心さえ凍らせなければ、何度でも灯せる。


「行こう。」

 そう言って踏み出すと、三つの足音が並んだ。

 ミルが笑い、ゼルフィアが肩で風を切り、リアが灯を掲げる。

 仲間の笑顔が、朝日と同じ色で俺の横に並ぶ。


 砂漠の端で、振り返る。

 暗い夜に戦った街は、今、薄金のベールを被って静かに息をしていた。

 俺は心の中で、短く手を合わせる。

 必ず、戻る。


 顔を上げると、北の光がすこし強くなった。

 まるで合図のように。


 俺は笑って、もう一度だけ言葉にする。

「――精霊も、人も。」


 風が背中を押した。

 旅が動き出す。

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