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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第5章 灼熱の灼熱の砂漠と炎帝の影

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第24話 別れと旅立ち

 ――砂の地平線が、金色に染まっていく。


 夜の冷たさが少しずつ薄れ、朝の光が灰の砂漠を照らし始めていた。

 戦いの爪痕はまだ深く残っている。

 焦げた地面、崩れた建物、そして焼けた風。

 それでも、どこかで確かに“再生”の匂いがした。


 俺たちは街の外れ、小さな焚き火の前に集まっていた。

 ミルは腕を組み、ゼルフィアは無言で空を見上げている。

 リアは祈りを捧げるように手を組み、目を閉じていた。


 そして――その炎の前に、イグニスがいた。


 「……どうやら、我の役目もここまでのようだ。」


 その声は穏やかで、いつになく静かだった。

 焚き火の炎が、彼の姿を透かすように揺れている。


「役目って……どういうことだよ。」


 問いかけながらも、胸の奥で嫌な予感がした。


 イグニスはわずかに笑った。

 「炎帝の契約が果たされた。怒りの火も、もう鎮まった。我が核も休息を求めている。だから、少し眠るとしよう。」


「眠る? おい、勝手にそんな――」


 思わず声が荒くなる。

 まだ聞きたいことが山ほどあるのに。

 まだ、一緒に見たい景色がたくさんあるのに。


 イグニスは首を振って、俺の言葉を遮った。


 「師に頼る弟子は、成長できぬぞ。」


 そう言って、俺の胸に手を当てた。

 熱が伝わる。いや、熱ではない。

 炎そのものの心臓が、鼓動と共に打ち込まれるような感覚。


 「我が炎はお前に託す。迷ったときは燃やせ。怒りのためではなく、信じるために――な。」


 胸の中がじんわりと熱くなった。

 痛くないのに、涙が出そうだった。


「イグニス……お前、まさか……」


 「フッ、案ずるな。死ぬわけではない。ただ少し……静かな夢を見るだけだ。」


 焚き火の炎がふっと強くなる。

 イグニスの輪郭が淡く光り始めた。


 「レオン。お前の炎は、もう一人の炎帝のそれとは違う。破壊ではなく、命を繋ぐ炎だ。……それを誇れ。」


 「……ありがとう。お前がいたから、ここまで来られた。」


 イグニスが目を細める。

 「礼は無用だ。弟子が強くなれば、それで充分だ。」


 炎が風に乗って舞い上がる。

 光が砂漠を包み、温もりだけが残った。


 「行け、レオン。世界はまだ……終わってなどおらぬ。」


 最後の言葉と共に、イグニスの姿は光の粒になって消えた。


 その光が胸に吸い込まれていくのを、俺はただ見ていた。

 涙が頬を伝った。けれど、不思議と悲しくはなかった。


 ――炎は、消えてなどいない。


 「……行っちゃったね。」

 ミルがぽつりと呟く。


 「でも、きっと見てるよ。」

 ゼルフィアが微笑んだ。

 「お前の胸の炎が、その証拠だ。」


 俺は小さく頷いた。

 胸の奥で《永久契約の炎紋》が微かに脈打つ。

 あたたかい。まるで鼓動みたいに。


 そのとき、リアが前に出た。

 杖を胸に抱え、真っすぐこちらを見つめてくる。


 「……私も、行きます。」


 「え?」


 リアの瞳には、迷いのない光が宿っていた。


 「私は祈祷師として、精霊を信じてきました。でも、ダリオさんやイグニスを見て、思ったんです。信じるだけじゃ、届かない真実があるって。――この目で、精霊たちの真実を見たい。」


 その声には、覚悟があった。

 俺はゆっくりと頷く。


 「なら、一緒に行こう。リア。」

 「……はい。レオンさん。」


 ミルが手を腰に当て、にやりと笑う。

 「やれやれ、また真面目なのが増えたわね。」

 ゼルフィアが笑う。

 「素直に嬉しいって言えよ。」

 「うるさいっ!」


 そのやり取りに、思わず笑みがこぼれた。

 ――ああ、きっとこれが“仲間”ってやつだ。


 夜明け前。

 俺は一人で砂丘に立っていた。

 空の向こう――北の方角に、白い光の帯が見える。

 まるで、氷の風が空を裂くようなオーロラの輝き。


 「……あれが、氷の心臓のある場所か。」


 風が頬を撫でる。

 胸の炎が静かに脈を打った。


 「イグニス。……お前の炎、ちゃんと繋げてみせるよ。」


 リアが後ろから歩いてくる。

 「行きましょう、レオンさん。旅は、もう始まっています。」

 俺は振り返り、頷いた。

 「そうだな。」


 遠く、東の空が赤く染まる。

 ミルとゼルフィアが荷を背負い、手を振っていた。

 笑顔の向こうに、確かな希望が見えた。


 炎の物語が終わり、氷の伝承が始まる。

 旅はまだ続く。

 でも、今の俺たちなら――どんな運命だって越えていける。


 そう信じられる朝だった。

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