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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第5章 灼熱の灼熱の砂漠と炎帝の影

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第23話 協会の再始動

 ――王都の鐘が、夜を裂いた。


 月明かりの下、聖導院の尖塔が静かに光を放っている。

 昼間は祈りの声で満ちるこの場所も、夜になると息をひそめる。

 蝋燭の炎の揺らめきだけが、廊下の石壁に影を踊らせていた。


 私は、その影の中を歩いていた。

 あの日、あの戦いの報告を抱えて。


 ――炎帝、討伐。


 紙の上では、それだけの言葉。

 けれど私の胸には、どうしようもない痛みが残っていた。

 レオン。あなたは本当に、彼を倒したの? 

 それとも――救ったの?


 聖導院の最奥。

 黒曜石の扉を押し開くと、重い冷気が流れ込んできた。


 そこにいたのは、協会元帥ゼファード。

 漆黒の外套を羽織り、長い銀髪を肩に流した男。

 あの人はいつだって静かで、そして恐ろしく正しい。


「……久しぶりですね、元帥殿。」

 私がそう言うと、彼は視線だけをこちらに向けた。


「炎帝は、倒れたそうだな。」

「はい。報告どおり、レオン=アークライトが止めを。」

「……レオン。」


 その名を口にした彼の声は、まるで味わうように低く響いた。


「奴はやはり器だったか。」

「器?」

「世界の理を繋ぐ、精霊核の器だ。」


 その言葉に、私は息を飲んだ。


「……あなた、またあの研究を続けていたのね。」

「やめた覚えはない。」


 ゼファードは机に広げた地図を指でなぞった。

 北方の白い大陸、そこに刻まれた古い印章。


 「古の記録によれば、精霊核は氷の地に封印されている。

  ダリオが触れたのは、炎の断片に過ぎん。」


 私は震える声で問い返す。

 「……氷の心臓アイス・コア……本当に存在するの?」

 「存在するとも。次はそこだ。」


 彼の目が細められる。

 氷のように冷たく、それでいて狂おしいほどの確信が宿っていた。


「でも、それは――危険すぎます。世界の理に手を出せば、何が起きるか……!」


 私がそう言うと、ゼファードはふっと笑った。

 「世界など、とうに壊れている。我らはただ、正しい姿に戻すだけだ。」


 静かな声だった。怒りも迷いもない。

 だからこそ、恐ろしい。


「あなたの正しいが、誰かの破滅になるかもしれないのに。」

「破滅もまた秩序だ。炎が燃え、灰が風に還るようにな。」


 私は言葉を失った。

 ゼファードの思想は、まるで炎帝のそれに似ていた。

 だが彼の炎は、冷たく凍りついている。


 ゼファードは地図を閉じ、私に背を向けた。

 「明日から北方遠征の準備に入る。第二階梯聖騎士団を動員し、氷の巫女を探せ。」


 氷の巫女――その言葉に心が跳ねた。


「……巫女?」

「氷の心臓の守護者だ。もし彼女が核の鍵なら利用する。従わぬなら――封印だ。」


 彼の声に、一片の迷いもなかった。


「ゼファード……あなたは、本当に神を信じているの?」

 そう問うと、彼は短く答えた。


 「信じているとも。だが――その座は、奪い取るものだ。」


 私はそれ以上、何も言えなかった。

 ゼファードは部屋を出て行き、重い扉が閉まる。

 残されたのは、私と、消えかけた蝋燭の灯だけ。


 壁にかかった聖印を見つめながら、思わず呟いた。


「……レオン。あなたたちは、どうか間に合って。この狂気が世界を覆う前に。」


 翌朝。

 王都の空に、聖導院の旗が翻る。

 鐘の音が鳴り響き、聖騎士団が北方遠征の準備を始めた。


 雪用の装備、輸送艦、祈祷魔具。

 すべてが整い、ただ命令を待つばかり。


 私は塔の上からその光景を見下ろしていた。

 朝の冷たい風が頬を撫でる。

 遠く、北の空に白い光が瞬いた。


「氷の心臓……」


 手の中に残る古い記録書を握りしめる。

 あの文字には、確かに“精霊核”の名があった。


 「……世界の答えは、そこにあるのね。」


 私は空を見上げた。

 遠くの光の先――きっと、彼も同じ空を見ている。


 「レオン。あなたの炎が、私たちの未来を照らしますように。」

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