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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第5章 灼熱の灼熱の砂漠と炎帝の影

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第16話 ノワールの暴走

 砂嵐のような炎の残光が街を照らしていた。

 カイが倒れた場所は、まだ熱を帯びたまま。

 俺はその横で息を荒げながら、彼の手を握り締めていた。


「……カイ、しっかりしろ……!」


 返事はない。

 かすかに胸が上下しているだけだ。

 だが、その微かな鼓動が、俺の理性を繋ぎ止めていた。


「おい、レオン!」

 ミルの声が震える。

 その視線の先――ノワールが膝を抱え、苦しげに顔を押さえていた。


 嫌な気配が、空気を歪ませる。

 それは、まるで何かが“内部から侵食”してくるような感覚だった。


「……ぐっ……あぁ……!」

 ノワールの叫びが響く。

 その影が地面に滲み、黒い波紋を広げていく。


「ノワール!? どうした!」


 駆け寄ろうとした瞬間、強烈な闇の衝撃波が弾け、俺たちは吹き飛ばされた。

 砂が舞い、視界が真っ黒に染まる。


 その中心に立つノワールの瞳――それは、もう彼自身のものではなかった。


「……我は……残滓……」


「残滓……?」

 その低い声は、まるで何百年もの憎悪が凝縮されたような響きだった。


「我は古代の契約者の影……再び……力を……取り戻す……!」


「ノワール! やめろ!」

 俺は叫ぶが、届かない。

 彼の周囲に黒炎が渦巻き、砂を焼き、空気そのものを歪ませていく。


 その力は、まるでダリオの炎と同等――いや、それ以上だった。


「……俺は……誰だ……?」


 ノワールが両手で頭を抱え、崩れ落ちる。

 黒炎が荒れ狂い、周囲の光を食い尽くしていく。


「ノワール!!」


 ミルが泣きそうな声を上げた。

 しかし、近づくこともできない。

 闇は触れる者すべてを拒絶する。


 俺は歯を食いしばり、足を踏み出した。


 焼けつくような闇圧。

 それでも俺は、止まらなかった。


「ノワール! お前は……お前だ!」


「……俺は……影……」


「違う! お前は、俺の仲間だ!!」


 その瞬間、頭の奥に閃光が走る。

 イグニスの炎と、ノワールの闇がぶつかり合い、稲妻のような光が弾けた。


 俺の心臓が激しく鼓動する。

 ルミナ、ゼルフィア、ミル――すべての精霊との絆が反応しているのを感じた。


 その力を、俺は闇にぶつけた。


「……うああああああッ!!」


 白い光が一瞬、闇を切り裂く。

 その裂け目の奥に、確かに――ノワールの瞳が見えた。


 怯え、苦しみ、助けを求める瞳。


「ノワール! 戻ってこい!!

 お前は俺たちと一緒に戦っただろ!?

 バカみたいに悪態ついて、ツンツンして、それでも優しかった!!

 あのノワールを、俺は知ってる!!」


 叫びながら、俺は手を伸ばす。


 闇が皮膚を焼き、視界が霞む。

 それでも――離さない。


「お前を、見捨てたりしねぇ!!」


 そして、闇の中から――微かな声が返ってきた。


「……バカ……契約者……」


 その一言で、俺の全身の力が抜けた。

 闇が一気に収束し、ノワールの体を包むように消えていく。


 砂煙の中、膝をつく彼が、ゆっくりと顔を上げた。


「……俺、また……やっちまったか」


 その声は、いつものノワールの声だった。


「はぁ……お前、心配かけすぎなんだよ」


「うるせぇ……勝手に突っ込むお前よりマシだろ」


 ――その軽口が、こんなにも嬉しいなんて。


 ミルがホッとしたように泣き笑いし、カイのそばに駆け戻る。


 リアは祈りの姿勢で、炎の残滓を鎮めていた。


 俺は空を見上げる。

 紅蓮の雲が薄れ、夜明け前の淡い光が差し込み始めていた。


「……終わってない。

 まだ、ここからだ」


 胸の中で呟く。

 仲間の絆は、闇すら焼き払う。

 その確信が、静かに灯っていた。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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