第14話 再会の対話
燃え落ちる建物が軋みを上げ、空を焦がす。赤黒い煙が視界を覆い尽くすこの地獄の中で、ダリオはゆっくりと炎を弱めた。
――今しかない。
俺は歩み出た。
「ダリオ」
呼びかけた瞬間、俺の喉はひどく乾いていた。炎の熱だけが原因じゃない。
俺と目が合ったダリオは、苦悶と怒りの混ざった瞳で睨みつけてくる。
「……何しに来た、レオン」
「話がしたい」
「ハッ。戦いを止めに出てきたって? 無駄だ」
彼の全身を包む炎は不安定に揺れ、心の乱れと同調している。
カイが背後から声を張る。
「ダリオ! 俺たちは敵じゃない! 君を救いたい!」
だが、ダリオの顔に浮かんだのは失望と嘲笑だった。
「救う? 今更何を救うってんだよ。俺たちは追放されたんだ。見捨てられたんだ。弱かった俺たちが、何を守れる?」
胸を刺す言葉だった。
あの日、俺も何もできなかった。守れなかった。
「なあ、ダリオ……」
俺は一歩踏み出し、炎の熱風に耐えながら目を逸らさない。
「俺たちはまだ終わってない。あの頃のお前、どこへ行ったんだよ?」
ダリオの炎が一瞬だけ止まった。
「…………あの頃?」
ゆっくりと、彼の表情が揺らいだ。
笑って剣を振り回していた。
自分より弱い奴を放っておけなかった。
いつも先に手を差し伸べてくれてた。
そんなダリオが、確かにそこにいたはずなのに。
「俺が弱かったから……全部奪われたんだよ!」
怒号が街を揺らす。
炎が一気に膨れ上がり、絶望が周囲を焼いた。
「弱者は、燃やされるだけなんだよ! だから俺は、燃やす側に回った! そうしなきゃ、生き残れねぇ!」
その叫びは――泣いているように聞こえた。
胸が締め付けられる。
俺は、拳を握りしめた。
「ダリオ……それでも――」
「黙れ!!」
火柱が怒り狂い、倒壊した建物をさらに飲み込む。
「お前らは俺の痛みなんて知らない! 信じたら、裏切られるんだ! 心に隙を作れば、そこから全部壊される!」
憎悪と恐怖。
それが彼の力を歪めていた。
「だから俺は……全てを焼く! 弱さごと、この世界を!!」
「違う!」
俺は叫ぶ。
「弱さを認められるのが強さだ! 昔のお前は、俺よりずっと強かった!!」
だが、届かない。
ダリオの目には、もう俺たちが映っていない。
「レオン!」
カイが焦った声を上げる。
振り返ると、周囲の魔導装置が激しく振動していた。
炎に反応し、エネルギーが暴走寸前になっている。
もし爆発すれば……街が一瞬で消える。
「……やっぱりな」
カイが低く呟き、決意を宿した瞳で装置を見据えた。
「俺が、止める」
「カイ!? 何言って――」
「これしかないんだよ。俺の魔力回路、焼き切れば……暴走は抑えられる」
ミルが驚愕の表情で飛んでくる。
「バカッ! そんなの死ぬ気!? やめろ!!」
カイは笑った。
傷だらけの顔で、どこか誇らしげに。
「大丈夫。死にはしないさ……多分な」
その声が怖いほど静かで――
覚悟が、重かった。
「カイ、やめろ! まだ他に――」
「ないんだよ、レオン」
カイはまっすぐ俺を見た。
「俺は……仲間を守りたい。そのために生きてきたんだ」
ミルが震える声で縋る。
「無茶すんなよ……お前、いつも冷静なフリして……心配させやがって……!」
「ありがとう、ミル」
炎が再び吠える。
ダリオが咆哮し、暴走の炎を解き放つ。
「全部、燃えろぉぉッ!!」
炎帝の咆哮が闇を照らし、街全体が赤に染まった。
カイが装置に手を伸ばす。
「これで……少しは冷めただろ……?」
その背中は――
まるで英雄だった。
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