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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第5章 灼熱の灼熱の砂漠と炎帝の影

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第11話 レオン、イグニスと契約す

 ──熱い。

 目を開けると、そこは真っ赤に染まった異空間だった。足元には地面もない。ただ燃え盛る炎の海が広がり、天井すら存在しない。吐き出す息も炎となり、視界が揺れる。


「……ここは?」


 俺が問うと、炎の中から巨大な影が立ち上がった。黒曜石の如き角、燃える鬣、双眸は溶岩よりも濃く赤い。


『試練の間だ。我が名は──イグニス』


 炎帝。かつてダリオが求め、しかし拒絶された精霊王。


『契約を望むのか、人の子よ』


「……望む。あいつを……止めなきゃならない」


『生半可な覚悟では焼き尽くされるぞ。さあ──証を見せよ』


 イグニスの足元から炎が噴き上がり、世界が捻じ曲げられる。


 次の瞬間、俺は見覚えのある村に立っていた。


 あの、追放の日。


 燻んだ視線。嘲笑。突き刺さる言葉。


『精霊も扱えない役立たずが』


『出ていけ、村の恥さらし』


 耳を塞ぎたいほどの蔑み。

 でも、足はすくみ、喉が震えて声が出ない。

 あの日の自分が、無様に俯いている。


 逃げることしか、できなかった。


「やめろ……やめてくれ……!」


 炎が過去の幻を照らし、俺の弱さを赤裸々に映し出す。


『この程度か? 貴様はまた逃げるのか?』


 違う。違うんだ。

 でも──心が軋む。


 別の幻が現れる。

 ダリオの背中。

 暴走し、炎に呑まれていく友。

 叫び声すら届かない地獄。


 俺はまた、無力のまま立ち尽くしている。


 ──助けたいのに!


 膝が折れた。指先が震える。

 俺はこのまま、何度も同じ後悔を繰り返すのか?


 苦しさに意識が沈みかけた、その時。


『……おい、レオン』


 聞き慣れた声が、頭の奥から響いた。


『そんなとこで座り込んでんじゃねえよ。お前、私の契約者だろ?』


「ミル……?」


『あいつを助けたいんだろ。だったら立てよ、バカ!』


 胸の奥が熱くなる。

 ミルが……俺を呼んでいる。

 置いていかれたくない。

 失いたくない。


「俺は──」


 ゆっくりと、地を踏みしめて立ち上がる。


「俺は……もう逃げない!!」


 その言葉を吐き出した瞬間、幻が炎となって砕け散った。

 炎の海が再び視界を満たし、イグニスが俺を見下ろす。


『ほう──その心、灼熱に値する』


 鼓動が荒ぶり、血管が燃え上がる。

 ミルの羽根が背から迸り、炎の粒子が俺を包む。


『名を呼べ。我が力、解き放つ鍵となろう』


 俺は拳を握りしめ、叫んだ。


「俺は、レオン・アークライト! 炎帝イグニス! 俺と共に来い!!」


 真紅の炎柱が天まで突き抜け、視界を焼き尽くす。


『契約成立だ、人の子。その魂、我が炎と共に──』


 炎の王が咆哮し、俺の体に宿る。

 激痛と共に、全身の魔力が沸騰するように膨れ上がった。


「ぐっ……! ああああああ!!」


 皮膚の内側で火が暴れ、骨すら灼く。

 でも──熱いほど、俺は生きていると実感した。


『立て、レオン。戦いはまだ終わらん』


 目を開くと、現実世界。

 崩壊しかけた大広間。

 紅蓮の巨躯と化したダリオが、狂ったように吠えていた。


 ──今、間に合った。


「待ってろ、ダリオ。絶対に……助ける」


 俺の背で、風が渦巻いた。


『遅ぇぞ、契約者!』


 ミルが現れ、いつもの悪態をつく。

 でもその声が、涙が出るほど嬉しかった。


「行こう、ミル」


『ああ! 全部吹き飛ばしてやろうぜ!!』


 俺の剣が、紅蓮に燃え上がる。

 風と炎が共鳴し──新たな力が目覚めた。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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