第7話 試練の洞窟
夜の惨劇から一夜が明けた。
俺たちはリアに導かれるまま、赤砂の山脈へと足を踏み入れていた。
風が砂粒を叩きつけ、耳元で鋭い音を立てる。
けれどその中心に立つリアは、白い装束を揺らしながら真っすぐに前を見据えていた。
「この先に……試練の洞窟があります。炎帝様が後継者を試す場所です」
後継者。
その言葉を聞くだけで、胸の奥がざわついた。
ダリオも――ここを?
「レオン、大丈夫ですか?」
ミルが心配そうに肩をつつく。
「ああ。やっと、向き合える気がするんだ」
自分に言い聞かせるように、拳を握りしめた。
やがて、砂壁の裂け目に石造りのアーチが現れた。
古代の紋章が刻まれ、炎の形をした魔力がゆらりと漂っている。
「ここが――遺跡」
ノワールが黒い羽を広げながら、低く唸る。
「魔力濃度が異常だ。ちょっと燃えただけで爆ぜそうな空気だな」
「お風呂もそういうのあればいいのにー! 一瞬でポカポカ!」
ミルが無邪気に笑った。
「お前の脳みそ、常にポカポカで沸いてんじゃねぇの?」
「なんでよぉ!!」
……ちょっとだけ緊張がほどけた。
中は迷路だった。
赤い岩壁が左右に伸び、どっちに進んでも同じ風景。
ゼルフィアが真剣に雷光を灯して先導する。
「方向感覚を狂わせる魔力。普通の冒険者なら迷い死ぬな」
「ひぃぃ……帰り道覚えられない……」
「そもそもお前、普段から覚えてねぇだろ」
「今は覚えてるもん!!」
その直後、ミルが床のプレートを踏む。
ゴゴゴゴッ!!
「わわわ!? 床下から炎がぁぁ!!」
「言ったそばから踏むなって言っただろうが!!」
ノワールの悲鳴がこだまする。
俺は慌てて風の加護を展開し、炎を跳ね除けた。
「はぁ……死ぬかと思った……」
「あなたが原因です」
ゼルフィアの冷酷なツッコミが刺さる。
……うん、こういう空気、案外嫌いじゃない。
罠を抜けた先、広間に出た。
壁一面に壁画が描かれている。
炎を纏った巨人――それが炎帝イグニス。
その隣には、人の姿をした契約者が共に立っていた。
「炎帝は、人と共にあろうとした精霊です。ですが……」
リアの声が震える。
「力を求めた者たちに利用され、封印されたのです」
精霊が、苦しむ理由。
それはやはり――人間の欲なのか。
俺の胸に、ルミナを失った記憶が突き刺さる。
「……だから、ダリオは炎帝の力を?」
ノワールが静かに答えた。
「欲望だよ。あいつは力が全てだと信じた。だからレオン、お前の言葉なんか、届かなかった」
「……でも、俺はまだ諦めてない」
拳を握りしめる。
炎の熱よりも熱く、心臓が脈打っていた。
広間の奥に、巨大な扉が立ちはだかっていた。
炎の紋章が浮かび上がり、近づくだけで皮膚が焼けるような熱。
リアが胸の前で祈りの形を取る。
「……開いてください。炎帝様の、真実を知るために」
ゴォォォォッ!!
扉の紋章が輝き、熱風が吹き荒れる。
炎の幕が裂け、暗闇の道が口を開いた。
「この先が試練……か」
「聞きたくねぇが、地獄の匂いしかしねぇぞ」
ノワールが毒づく。
「でも行くんでしょ? レオン」
ミルが笑った。
「ああ。もう逃げたくない。ダリオにも、精霊にも――自分自身にも」
燃える闇の中へ、一歩踏み出した。
炎が道を照らし、奥から声が響く。
『――来い。契約者の器を持つ者よ』
喉が自然に鳴った。
これはただの幻聴じゃない。精霊の、声だ。
「見せてもらうぞ、レオン。お前の覚悟を」
ノワールが俺の肩に乗る。
「任せて。私たちがついてるから!」
ミルが拳を上げる。
ゼルフィアも静かな微笑みを返す。
リアが祈るように手を合わせる。
「炎帝の声……どうか彼に、答えを与えて……」
俺は――前へ進む。
これは俺が選んだ道だ。
精霊を救うと決めた、その覚悟を示すために。
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