第20話 夜明けの誓い
夜明け前の空は、まだ深い藍色に沈んでいた。協会塔のある方角だけが、不気味な赤で染まっている。昨日まで燃え盛っていた炎の残光だ。まるで、まだ終わりじゃないと告げるように。
俺は一睡もできず、丘の上で風に当たりながら、ぼんやりとそれを眺めていた。
ルミナの光が消える瞬間を、俺はこの目で見た。
守れなかった命。
救いきれなかった精霊たちの声。
あの痛みは、まだ胸の奥で熱を持っている。
「レオン」
背後から声を掛けられ、振り向く。眠そうな目を擦りながら、ミルが立っていた。
だが、その表情は眠気よりも心配の色が濃い。
「寝てなかったんでしょ」
「ああ。眠気が飛んじまってさ」
嘘だ。本当は眠るのが怖かった。
目を閉じれば、ルミナの最期が何度も蘇るから。
ミルは俺の隣に腰を下ろし、空を仰いだ。
「心配しなくても、ここにいる精霊たちはまだ光ってるよ」
「……わかってる。だけど」
俺の言葉を遮るように、ミルが言う。
「暗い顔は似合わないって言ったでしょ?」
「……そんなこと言ったか?」
「言ったの! ほら、笑って。いつものレオンに戻りなよ」
無茶を言う。そんな簡単に割り切れたら、苦しみなんて最初からない。
だけど――その横顔は、真剣だった。
「私は信じてるんだ。レオンは、精霊と一緒に笑える未来を作れるって」
胸の奥が、少しだけ軽くなる。
そこへ、カイとノワールが眠そうに近づいてきた。
カイは小さく溜息をつきながら、俺に目を向ける。
「……もう後戻りはできないぞ」
「ああ。わかってる」
カイは続ける。
「ゼファードが掲げる精霊兵器計画は、全世界規模だ。精霊は兵器じゃない。だがこのままでは――」
「精霊の叫びは、誰にも届かないまま殺されていく」
俺は静かに言った。
ノワールが腕を組みながら、薄く笑う。
「お前が行くなら、俺は影としてついていくだけだ。光と影は、いつもセットだからな」
意外と優しいんだよ、お前は。
俺はゆっくりと立ち上がり、赤く染まる空へ視線を向けた。
「精霊を救う。それが、俺の生きる理由だ」
その言葉は、これまでで一番自然に口から出た。
迷いや罪悪感は消えていない。だが――
立ち止まってなんかいられない。
「やっとらしい顔に戻ったね」
ミルが笑う。
その笑顔に、救われる。
「次は、どこへ向かう?」
カイが尋ねる。
「炎帝の血脈――ダリオを追う。灼熱の砂漠、アグナへ向かう」
ゼファードはそこを狙っている。
ダリオを、精霊兵器の中核にしようとしているはずだ。
「暑いの苦手なんだよねぇ……」
「泣き言言う暇があるなら、水分を確保しろ」
「わかってるよ!」
そんな軽口さえ、今の俺には心地よかった。
日の光が、地平から顔を出した。
闇を押しのけるように、力強く。
俺は拳を握りしめる。
ルミナの光が、掌の奥で確かに脈打っている気がした。
──行くぞ、次の戦いへ。
誰も見たことのない未来を掴むために。
俺たちは、赤く揺れる砂漠の方角へ一歩を踏み出した。
新たな灼熱の冒険が始まろうとしている――。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークすると更新通知が受け取れるようになります!
ブクマ、評価は作者の励みになります!
何卒よろしくお願いいたします。




