第19話 協会の闇の支配者
――冷たい夜風が、荒野の砂をなぶっていた。
協会塔の爆ぜる音はまだ遠くで響いている。
あの塔で失われた命、凍るような声、無数の精霊の泣き声。
そしてルミナの光。
火照った頭を冷やすように深呼吸した瞬間――
(あいつらは絶対に諦めない)
そんな直感が、胃の底を強く締めつけた。
♦ ♦ ♦
一方その頃――
協会本部の深淵、誰も知らぬ影の部屋。
傷だらけのアステルが重い扉を開く。
黒い円柱の広間、光が一切届かない謎めいた空間。
俺は知らない。
けれど確かにそこは俺に繋がる場所だった。
「……戻られましたか、アステル」
深すぎる闇から滲み出る声。
姿が見えずとも、絶対的な支配を感じさせる低音。
ゆっくり姿を表したのは――
漆黒のローブを纏い、顔のほとんどを仮面で覆った男。
協会の真の支配者、
ゼファード。
「申し訳ございません……ゼファード様。精霊兵器計画は……」
「言い訳では無いだろうな?」
静かな氷柱のような声。
アステルの背が、小さく震えた。
「……若き契約者レオン。彼が、全てを台無しに……」
「全て? 違うな」
ゼファードが指先をわずかに動かす。
次の瞬間、空気が震え、黒い魔力が部屋を満たした。
「まだ計画は序章だ。精霊を兵器として統べ、人類の未来を築く」
「……しかし、暴走が……」
「必要な犠牲だ。精霊が人間の下に従属する世界――それが、真の進化だ」
アステルの顔から、血の気が引いた。
理想主義の皮を被った、狂信。
ゼファードはさらに続ける。
「次の段階へ進める。レオンの代替――つまり炎帝の血脈を確保せよ」
「炎帝……ダリオを……?」
「そうだ。古代の炎帝、その魂の継承者だ。我々の理想を完成させる“炎の核”となる」
「はは……しかし、彼は協会に忠誠を……」
「忠誠など、強制すれば良い」
仮面の奥の瞳が、怪物のように笑った。
「……レオン。いずれ、お前は俺の掌へ戻る」
それが、支配者の宣告だった。
♦ ♦ ♦
――夜の荒野へ戻る。
俺たちは休む場所を求め、岩陰に腰を下ろしていた。
遠く、協会塔の崩れた残骸から赤黒い炎が揺れる。
「レオン……傷、痛くない?」
ミルが袖をちょんと引っ張る。
「ちょっとだけな。でも大丈夫」
むしろ胸の奥の方が痛む。
ルミナの光――俺の中に残った、あの優しい声。
カイが腕を組み、険しい顔で空を睨む。
「協会は……必ず追ってくる。俺たちはもう、完全に敵だ」
「ふん、やられる前にやればいい話だ」
ノワールが闇に溶けるように笑った。
「そう簡単に言うなよ……」
俺が苦笑すると、
「大丈夫よレオン!」
ミルが胸を張った。「私たちがいるもん!」
その無邪気な言葉が、心の霧を少しだけ晴らす。
(そうだ……俺はもう、独りじゃない)
けれど、浮かれた気分でいられる状況でもない。
「……ダリオに会いに行こう」
自然と声が出ていた。
「協会は次、ダリオを狙うはずだ。放っておけない」
その名を聞いて、皆が顔を上げた。
「炎帝の里……アグナだな」
カイが地図を思い浮かべるように呟く。
「協会なんて燃やし尽くしてやるぜ」
ノワールが獰猛に笑う。
「ダリオ、あいつ熱くるしいとこあるけど……」
ミルが目を細めて言う。「放っとけないよね」
仲間たちの声が、迷いを――打ち砕いた。
ふと、胸元で光が小さく脈打つ。
ルミナの欠片。
あの温もりは消えちゃいない。
(ありがとう。まだ……俺と一緒にいてくれるんだな)
決意が、静かに燃え上がる。
「俺は――精霊を救う。人も、精霊も。誰も、道具なんかじゃない」
夜風が熱を帯びていくような錯覚。
胸の奥で、何か強い力が目覚める音がした。
ノワールが鼻で笑う。
「お前、やっと主人っぽい顔になってきたな」
「主人って言うな。俺たちは――」
「仲間だろ?」
ミルとカイが声を揃える。
「……ああ。仲間だ」
夜空を見上げると、星が一つ、流れていった。
(ここからだ。ここから俺たちの反撃が始まる)
♦ ♦ ♦
協会の闇が迫っている。
狙われている仲間がいる。
救えなかった光がある。
だから俺は――前へ進む。
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