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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第4章 精霊協会と隠された真実

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第18話 ノワールの真実

 夜の冷たい風が肌を撫でていく。砂混じりの大地に、小さな焚き火の残り火がくすぶっている。ミルたちはすでに眠りにつき、寝息だけが静かに響いていた。


 ――寝れない。


 胸の奥に残った焦燥が、どうしても眠りを拒んでいた。塔での出来事、ルミナの消失、そして俺の中に残った光。すべてが渦を巻いて頭を離れない。


 ふと気づくと、黒い影が夜の縁に佇んでいる。

 ノワールだ。月を避けるように闇へ溶け込んでいた。


「見張りか?」


 声を掛けると、ノワールは振り返りもせず返した。


「……ただ眠れねえだけだよ」


「奇遇だな。俺もだ」


 そう言って隣に立つと、ノワールは不機嫌そうに眉を寄せた。


「お前は寝とけ。雑魚は体力温存しとかねえとすぐ死ぬぞ」


「心配してるように聞こえるんだが?」


「はあ!? どこをどう聞いたらそうなる!」


 ツンケンした返し。……けど、いつもと少し違った。

 強がってる、そんな空気。


「ノワール。お前、何をそんなに抱えてる?」


 核心に踏み込むと、彼は静かに目を伏せた。

 いつもの皮肉を返さない。


 黙ったまま夜空を見上げた彼の横顔は……妙に寂しげだった。


「……俺は影なんだ。本物じゃねえ」


 ぽつりとこぼれたその言葉に、思わず息を飲んだ。


「どういう意味だ?」


 ノワールは小さく息を吐いた。覚悟を決めたように。


「昔々、人と精霊が共に生きてた時代があったらしい。契約者って呼ばれる人間が、強大な力を持って支配してた世界だ」


 その話、ゼルフィアやミルからも聞いたことがある。

 だが――ノワールの話はそこから先へ踏み込んだ。


「ある契約者がいた。闇を統べる最強の男だ。そいつは自分の力と記憶を未来に残すために――」


 ノワールは胸、心臓のあたりを握りしめる。


「影の分身を作った」


「お前が……その?」


「ああ。俺はコピーだ。複製体だ。本物の代わりに存在するだけの、出来損ないだ」


 自嘲でもなく、事実をなぞるだけの声。

 胸が痛むほど淡々としていた。


「本物の契約者は死んだ。だから俺は……居場所がねえ。生まれた意味も、存在する資格も……」


 少し震える声。

 ノワールがこんな声を出すのを見るのは、初めてだった。


「皆と一緒にいると……怖ぇんだよ。お前らは本物だから」


 ――なんだよそれ。


 気づけば俺は笑っていた。ノワールが驚いた顔でこちらを見る。


「何が本物だよ。俺だって追放された落ちこぼれだ」


「……は?」


「影だろうとコピーだろうと関係ない。お前はその人の代わりに、今を生きてるんだ」


 ノワールが大きく目を見開いた。

 闇のような瞳が、微かに揺れる。


「……そんな風に言う奴、初めてだ」


「だろうな。でも俺は本気だ。お前がいてくれて良かったって、何度も思ってる」


 ノワールは視線を逸らし、耳まで赤くなっていた。


「っ……バカか、お前は」


 その言葉が、夜風に溶けて消える。

 でも――確かに聞こえた。


 不意にノワールが額に手を当て苦しげに唸った。


「記憶……いや、映像か? 一瞬だけ蘇るんだ。巨大な祭壇……炎と影の紋章……封印された精霊兵器……」


 封印――精霊兵器――

 アステルたちが追い求めていたものと、繋がっている。


「その場所、知ってるのか?」


「いや……だが、近い気がする。俺たちの行く先にある気がするんだ」


 その瞬間、闇を裂く羽ばたきが響いた。


「っ!」


 黒い鳥の形をした魔導監視機が上空を旋回していた。

 ノワールは影を伸ばし、瞬時に撃ち落とす。


「……見られてたな。敵はもう動いてる」


「アステルか?」


「あいつじゃねえ……もっと……ヤベえ奴だ」


 ノワールの声に、俺は無意識に剣を握っていた。


「レオン」


「ん?」


 ノワールは初めて――照れたように笑った。


「俺はお前らと行く。影が誰かを照らせるかどうか……試してみてえ」


「――ああ」


 その言葉だけで十分だった。


 闇に隠れながらも、確かに光を宿した影。

 それがノワールの本当の姿だと――俺はもう知っている。



 最後までお読みいただきありがとうございます。


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