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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第4章 精霊協会と隠された真実

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第15話 逃亡者たち

 ──塔の崩壊を告げる鐘が、まだ耳の奥で鳴っている気がした。


 王都の朝はいつもと変わらず賑やかだった。なのに、俺の世界だけが音を失っていた。


「これより通達する! 反逆者レオン=アークライトの身柄を確保せよ!協会塔崩壊の首謀者にして、危険な精霊術の使用者!」


 大通りで騎士団の声が高らかに響く。

 掲げられた布には、俺の似顔絵。歪んだ笑みを浮かべるように描かれたそれに、周囲の人々が怯えた目を向けていた。


 誰かが震える声で言った。


「精霊に魅入られた怪物だって……本当だったんだ……」


 胸の奥がずきりと痛む。


 怪物?

 そうか。これがルミナを救えなかった俺に対する世界の答えか。


 俺はフードを深くかぶり、視線を逸らした。


 来る場所、間違えたな。

 本当は、あの塔の前で倒れていたかったのに。


 でも、死にたくなかったわけじゃない。

 ただ──彼女が託した「願い」を、まだ果たしていない。


 耳の奥で、ルミナの声が蘇る。


 ──あなたの光を、見せて。


「……ルミナ」

 小さく名前を呼ぶと、胸がきしむように痛んだ。



 冒険者ギルドの裏通用口。

 俺を見つけた受付嬢のアリシアは、驚きと……罪悪感を滲ませた目を向けた。


「あなた、本当に来ちゃだめ……! 協会の命令で、ギルドも──」


「隠れて仕事が欲しいわけじゃない。ただ、確かめたいことがある」


「……ごめんなさい。本当は、あなたのこと信じてる。でも……ギルド全体が監視されていて、味方することは……できないの」


 彼女の声は震えていた。

 俺を庇えば、彼女の居場所も失われる。


「謝るのは俺じゃなくて、あんたの側だ」

 そう言うと、アリシアは噛みしめるように目を伏せた。


「……これを持って行って。食料と、最低限の薬。

 私の独断。……もう二度と会えないかもしれないけれど」


 そっと袋を押し付けられる。


 俺は深くは言わなかった。

 ただ、静かに礼を言って背を向けた。



 夜。王都外壁の影。

 門は封鎖され、俺の名前が何度も叫ばれていた。


「反逆者レオン! 精霊使いを見つけた者には褒賞金!」


 低く罵声混じりの声が飛ぶ。


 ──あの日も、そうだった。


 弱いと笑われ、追放され、失うことしかできなかった。


 なのに。


 今の俺は、不思議と落ち着いていた。


「……また、追放かよ」

 苦く笑う。


「でも、今度は怖くない」


 俺は逃げてるんじゃない。

 追いつきたいんだ──彼女が最後に見上げた、未来へ。



「行くぞ」


 小さな光が三つほど俺の肩や腰に寄り添った。

 塔から一緒に逃げた小精霊たちだ。


「ピィ……」

「……大丈夫。俺が守る」


 ルミナが遺した光が、まだ胸に確かにある気がする。


 決意の息を吐き、壁の陰を走った。

 見張りの死角を突き、古い排水口から外へ。


 地面に落ちた瞬間、土の匂いと共に、冷たい夜風が頬を刺す。


「さよなら、王都。そして──待ってろ、ルミナ」


 振り返れば、遠くに赤い炎のように崩れつつある塔。

 そこには、俺の大切な光が眠っている。


 拳に力が入る。


「必ず取り戻す。歪んだ真実も、精霊たちの未来も」


 夜の闇が、俺たちを飲み込み、守るように包み込む。


 逃亡者の旅が始まった。

 だが、それは同時に──反撃の始まりでもあった。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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