第14話 崩壊する塔
塔の最上階へ駆け上がった瞬間、視界を埋め尽くすほどの巨大な精霊結晶が暴走していた。
紫光の稲妻が空間を裂き、床はうねり、壁の文様が悲鳴のように歪んでゆく。
「……ルミナ!」
俺の胸元に宿っていた小さな光が震え、か細い声で訴えた。
――こわい……こわいよ……
「大丈夫だ。俺が、ここにいる!」
だが俺の言葉なんて、暴走した魔力の嵐に掻き消えてしまいそうだった。
研究員たちは次々と逃げ出し、足元で瓦礫が落ちる音が響く。
その中でアステル協会長は、暴走する結晶を前にしても逃げず、
いや、逃げられず――歪んだ笑みを浮かべていた。
「すばらしい……! 完璧な力だ……!もはや心など不要、人間の理によって統べられる存在!」
「――ふざけるな!」
俺は叫び、アステルの胸倉を掴む。
「痛いかどうかも分からない、そんなものは精霊じゃない!」
「だからこそ、道具として使えるのだ」
アステルは薄く笑い返した。
その瞳には、尊厳の欠片もなかった。
◆
結晶から発せられる光が、さらに強まる。
このままじゃ――塔ごと吹き飛ぶ。
突然、胸元の光が俺の手を引くように動いた。
ルミナが、俺の掌の上に降り立つ。
小さな……本当に小さな女の子の形。
その輪郭は薄く儚く、今にも消えてしまいそうだった。
「レオン……ありがとう。あなたのおかげで……私は、私を思い出せた」
震える声。
彼女は俺の指先をそっと取る。
「ごめんね。あなたの光になれたのに……一緒には、行けない」
「やめろ……そんな言い方、やめろよ!」
叫んだ俺の声に、ルミナが静かに首を振る。
「私が……止めなきゃ。みんな……壊れちゃう」
ニコ、と。
小さすぎる笑顔を、俺に向けて――
――彼女は結晶の中心へ飛び込んだ。
「ルミナあああああああああ!!」
魔力が炸裂し、世界が白く塗り潰される。
◆
轟音。
閃光。
そして。
……静寂。
巨大だった精霊結晶は、ただの透明な破片となって床に散っていた。
塔の揺れも止まっている。崩壊は――回避された。
仲間たちの声が聞こえる。
「レオン! 生きてる!?」
「無茶しすぎだぞ!」
「……あいつ、やりやがったのだ」
振り返る暇もなく、俺は膝をつき、瓦礫をかき分ける。
――ルミナは……?
光の欠片が、ひとつ。
俺は震える手でそれを拾い上げた。
温かい。
涙が、落ちた。
「……忘れない。絶対に……忘れない」
精霊は道具じゃない。
心がある。
感情がある。
なら――俺はその声を守る。
どんな力を使ってでも。
アステルを睨む。
彼は瓦礫に埋もれ、薄く笑いながら呟いた。
「やはり……君は偉大だ……歴史に名を刻む、最強の契約者だ……」
その言葉は、呪いに聞こえた。
俺は光の欠片を握りしめ、立ち上がる。
「俺は、お前の理想なんかに従わない。精霊は――仲間だ」
崩れかけた階段を仲間と共に駆け下りる。
背後で塔が軋み、火花が散る。
闇夜の外へ飛び出した瞬間、冷たい風が頬を打った。
……涙を隠すには、少しだけ都合が良かった。
俺は握る。失われた光の証を。
そして誓う――
今度は俺が、精霊を救う。
友達を守る。そのために戦う。
◆
夜空には、まだ雷鳴が残響していた。
まるで、彼女の声が消えていないと告げるように。
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