第10話 禁忌の真相
目を開けた瞬間、息が詰まった。
両腕は冷たい台に固定され、身体中に絡みつくのは黒い鎖のような魔力。引っ張るほどに、神経に棘を刺すような痛みが走る。
俺の視界の中央――白衣の男が悠然と立っていた。
精霊協会長、アステル。
「目覚めましたか、レオン=アークライト君」
「……てめぇ……」
声を出すだけで喉が痛む。魔力が逆流してる――?
鎖が俺の魔力を吸い、逆に肉体へと無理やり押し戻している。
「それは魔力逆流拘束。精霊と結びつく力が強い者ほど、苦痛を覚える」
「俺たちを……どうする気だ」
アステルは眼鏡を押し上げ、表情一つ変えずに言った。
「君の体内に存在する複数契約の理。それを解き明かせば人類は一段階、進化する。
そのために――精霊との繋がり、そのすべてを観察させてもらう」
言葉は穏やか。でも笑っていない。
その目は、研究対象を見るそれだ。
「進化だと? 笑わせんな……!」
「感情は不要です、精霊にとっても」
「感情があるから……精霊なんだろ!」
鎖がきしむ音。
反抗すればするほど、痛みが走る。心臓を握られたみたいな、冷えた感覚。
俺の後ろ側から、別の声が聞こえた。
「ひっどぉ〜い……レオンをこんなに痛めつけるなんて!」
「ミル……!」
振り返れないけど、声でわかる。
ミルもカイもノワールも拘束されているようだ。
ミルは震える声を上げた。
「アタシ、嫌いだよ……精霊を道具みたいに扱う人間……!」
「道具ではない。資源だよ」
アステルの返答は淡々としていた。
だからこそ余計に、怒りが煮えたぎった。
「感情を持つ存在を……資源呼ばわりかよ!」
「感情があるから、錯乱し暴走する。だから人間が制御する必要があるのです」
その瞬間、ミルの魔力が跳ね上がった。
「レオンを……苦しめるなぁぁあああああ!!」
稲妻と光の奔流が尋問室を飲み込む。
拘束具が軋み、周囲の兵士が吹き飛ぶほどの魔力だ。
しかしアステルは静かに片手を掲げた。
「封印、発動」
ミルの光は一瞬で潰された。
逆流――いや、搾取だ。
ミルの体が崩れ落ちる音が聞こえる。
「ミル!!」
「……っ……レオンの……ところ……い、かせてよ……」
「感情は、実に不安定だ」
アステルの声は、まるで観察結果を述べるようだった。
「ミルに触るな……!これ以上……ふざけたことを……!」
「まだ理解できないようですね」
アステルの瞳が、冷たい光でこちらを照らす。
「精霊は、人類繁栄のために利用されるべき存在なのです」
「違う……!
俺たちは共に生きるって……約束したんだ……っ!」
「では証明してみせなさい。感情が、知能が、いかに力になるのか」
アステルは楽しげに指を鳴らした。
「では、実験を続けましょう。壊れてしまわぬよう、慎重にね」
「お前……!」
ミルの意識がない。ノワールも鎖で影を引き裂かれ、苦しみを噛み締めている。
カイのうめき声が聞こえる。研究者たちがその様子を記録している。
俺の中で、何かが音を立ててきしんだ。
こいつらは、精霊を。仲間を――。
「全部……殺してる……!」
「君は、危険な芽だよ。いずれ歴史の悲劇を繰り返す」
引きずられながら、俺は叫んだ。
「精霊は……道具じゃねえ……!!
俺たちは……仲間なんだ!!」
「その信念ごと、解析させてもらいましょう」
扉が閉じ、視界が闇に塞がれる。
そこで聞こえた。
『……たすけて……』
「誰だ……?」
暗闇の中、かすかな光が震えている。
『……わたし……壊される前の……わたし……』
その声は泣いていた。
俺の指先が、勝手に伸びていた。
「大丈夫だ……絶対に助ける」
光がそっと、俺の指を包んだ。
『ありがとう……契約者さん……』
──その瞬間、小さな契約紋が胸内に灯った。
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