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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第4章 精霊協会と隠された真実

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第8話 ノワールの記憶の欠片

夜の静寂が落ちた宿舎。

なのに、俺の胸はざわついたまま眠れない。


王都エルドリアに来てから、ずっと何かがおかしい。

街中の精霊たちが――黙っている。


いつもなら、そこかしこで感じる気配やささやきが、ピタリと途絶えていた。


「……ノワール」


足元を見ると、黒い小さな体が丸まっている。

影の精霊ノワールは、寝息ひとつ立てず、じっと俺の足に寄り添っていた。


珍しい……こいつ、いつも堂々と寝るくせに。


そっと頭を撫でた――その時だった。


「……やめ……ろ……」


ノワールの口から掠れた呻き声。

体を震わせ、爪を食い込ませるように床を掻く。


「ノワール!?  大丈夫か!?」


触れた瞬間――視界が弾けた。


◆ ◆ ◆


荒野。

ひび割れた大地。

黒い稲妻が空を裂き、絶叫の風が吹き荒れていた。


そして俺の目に飛び込んだのは――

巨大な魔術兵器に繋がれ、苦痛に蠢く数多の精霊たち。


「な……んだここは……!?」


耳をつんざく怒号。


「精霊は道具だ!戦争を動かす燃料だ!」


次の瞬間――

視界に、見覚えのある黒い影が映った。


ノワール。


いや、ノワールと瓜二つの姿の――

剣のような形へと変貌し、

冷たい瞳で戦場を切り裂いていく“兵器”。


そして、それを操る男が叫んだ。


「従え!影よ!我こそが精霊の王だ!!」


俺の全身に寒気が走る。

ノワールは――兵器だったのか。


そこまで考えた瞬間、景色が掻き消えた。


◆ ◆ ◆


「っ――!」


ベッドの上、俺は息を荒げて身体を起こした。


ノワールは肩で息をし、爪を震わせている。


「……見たのか、レオン」


その声は、ひどく弱々しい。


「俺は、戦争で使われた。精霊の王だと名乗る愚かな契約者に、影の力を、奪われていた」


自嘲するように笑う。


「きっと、俺はその残り物だ。兵器の残滓だ。お前のそばにいる資格なんて――」


「あるに決まってんだろ」


言葉を遮っていた。

考えるより先に、口が動いていた。


「兵器? 道具? そんなもん、関係あるか」


ノワールが顔を上げる。


「お前は――俺の仲間なんだよ」


沈黙。

小さな精霊の瞳に、震える光。


「……仲間」


「そうだ。ずっと一緒だ」


その時、ベッド下から声が聞こえた。


「ノワール、だいじょぶ?」

シルフが風に揺れながら覗き込む。


「お前、泣いてるのか?」

サラマンダーが豪快に笑う。


「ふふ……守ってあげる」

ウンディーネが優しく水を揺らした。


ノワールは耳を引っ込め、慌てて顔を背ける。


「うるせぇ……泣いてねぇ……」


だけど、尻尾が――ぽふぽふ震えていた。


……こいつ、ほんと不器用だ。


俺は深呼吸し、みんなを見回した。


「協会が何をしてるかわからない。だけど……あの街の精霊たち、泣いてる」


ノワールが顔を上げた。


「……助けるのか?」


「当たり前だ」


迷いは、もうなかった。


「なら、俺も行く」

ノワールはすっと俺の肩に飛び乗る。


「俺は兵器じゃねぇ。レオンの影だ。レオンの仲間だ」


その声音は、誇りに満ちていた。


俺は笑い返す。


「じゃあ決まりだ。潜入するぞ――精霊協会に」


ノワールの尻尾がビシッと立つ。


「任せろ」

闇が揺らぎ、影の分身たちが床に広がる。


ミルが目を輝かせて叫んだ。


「作戦名っ!《深夜のお散歩大作戦》!」


……そのネーミングはどうなんだ。


でも――


胸の奥に灯った炎が、消える気配はなかった。


これはもう、止められない。


俺は仲間たちとともに、闇の先へと踏み出す。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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