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精霊契約でパーティー追放されたけど、今さら戻ってこいとか言われても遅い!  作者: 夢見叶
第4章 精霊協会と隠された真実

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第5話:協会長アステルとの会談

 厚い扉が、低い音を立てて閉じた。

 俺は一人、精霊協会の最奥――協会長室に通されていた。


 部屋は異様なほど静かで、壁一面に飾られた古い資料や魔法具が、まるでこちらを観察しているかのようだった。

 ノワールは姿を見せず、俺の影に潜んでいる。


 その時――


「よく来てくれた、レオン=アークライト君」


 重く澄んだ声が響いた。

 白髪の老魔導士が、机の前に静かに立っていた。

 整った顔立ちに皺一つ無駄がない。背筋は剣のように伸びている。


 威圧ではなく、理性。

 力ではなく、支配。


 そんな男だと、直観した。


「あなたが……協会長、アステルさんですか」


「いかにも」


 アステルはゆっくりと近づいてきた。

 深い皺の刻まれた目が、俺を覗き込む。


「歴史に名を残す逸材だ。精霊との複数契約――前例は存在しない。いや、正しくは……誰にも成功させなかったのだ」


 成功させなかった?

 妙に引っかかる言い方だった。


「なぜ俺を……そんな大袈裟に?」


「大袈裟なものか。君は、人類の命運を左右する存在だよ」


 人類の命運?

 俺の表情を読んだのか、アステルは椅子へと案内した。


「精霊は強大だ。時に暴走し、国を一つ滅ぼすことすらある」


 アステルは優雅な仕草で指を鳴らした。

 壁の魔導スクリーンに、過去の精霊災害の映像が映し出される。

 火の海に沈んだ都市、氷に閉ざされた王国、空から落ちる浮遊都市――。


「人類は常に精霊に怯えてきた。だが、君の力があれば、その恐怖は払拭できる」


「どういう意味ですか」


 アステルは笑みを深める。

 その優しい表情が、氷より冷たく見えた。


「精霊を――完全に制御するのだ」


 背筋が、ぞわりとした。


「制御って……精霊は道具じゃない」


 言葉を絞り出すように返す。


「道具だとも。人類より愚かで、力だけは持つ存在だ」


「そんな言い方……!」


 思わず一歩踏み出す俺。

 アステルは優しく諭すような声で言った。


「レオン君。綺麗事で世界は救えんよ」


「綺麗事じゃない。ミルもノワールも、俺にとっては……仲間だ」


 次の瞬間、アステルの瞳が細められた。


「ふむ。ならばいずれ……君は理解するだろう。仲間と呼ぶものが、どれほど人類の脅威となるかを」


 階段から突き落とされるような、嫌悪感。

 何かが違う。これは絶対に許せない。


「俺は……精霊を管理なんてしない。守る。共に生きる。それだけです」


 アステルは、ゆっくりと椅子に背を預けた。


「ならば好きにすると良い。だが――我々は君を観察し続ける。その力が暴走しないように」


「……観察?」


「レオン君、安心したまえ」


 穏やかな笑み。

 しかし、その奥にある本音はひどく冷えていた。


「君ごと、な」


 息が止まった。

 その言葉だけで、喉の奥まで冷たく凍らされるようだった。


 俺は口を開くこともできず、ただアステルを睨みつけた。

 だが――あの男には、俺の視線すら届いちゃいない。


「会談は以上だ。期待しているよ、精霊の英雄君」


 解放された瞬間、俺の膝はわずかに震えていた。


 部屋を出た途端、影からノワールが囁く。


「レオン、あの老人……魂が濁っている。近づくな。必ず害になる」


「あぁ……わかってる」


 けれどもう遅い。

 奴らは俺を――

 敵として見定めた。


 そして俺もまた、

 精霊協会という巨大な影の存在を、確かに理解してしまった。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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