第3話 精霊協会の研究員たち
協会本部の応接間に通され――
椅子に座るよりも早く、俺たちは囲まれた。
「レオン=アークライト君ですね!精霊複数契約者!」
「君の魔力量と精神同期率を計測させて!」
「契約プロセスを再現できませんか!?ぜひモルモッ――」
「モルモ……何?」
「……協力者として!」
白衣集団が四方八方から迫り、目はギラギラ、笑顔は引きつり、メモ片手に興奮状態。
(歓迎というより、もはや獲物を見る目……)
ミルは俺の背中にポスッと張り付き、小声で震えた。
「レ、レオン……!あの人たち、瞳の奥にゼンマイ入ってるよ!?」
「機械仕掛けかよ」
「君の脳波を一度見せていただければ」
「感情起因の暴走が起きたら、ぜひ観察させてください!」
「精霊は言語能力を持たないはずなのに、何故会話が!?」
「だから近すぎだってば!」
俺は後ずさるが、それを追って更に密着してくる。
「カイぃ!助けて……!」
「うん、頑張れレオン。僕は少し楽しんでる」
「薄情か!」
「君、精霊の声が聞こえるって本当?」
「それ、聴覚系の異常ですね?」
「異常扱い……!」
「精霊は資源だ。人格を認めるなど非科学的」
「資源……?」
胸の奥がカッと熱くなる。
「精霊には心がある。俺は確かに聞いたんだ」
「危険思想ですね。精霊を神格化する者は歴史的に――排除対象です」
(排除……?)
「――失礼、研究区画の見学許可がおりました!」
明るい声の女性研究員が割って入る。
「協会の成果をぜひ!」
空気を無理矢理、笑顔で塗りつぶすような違和感。
そのとき。
「おー、こりゃ面白いもの見つけたわ」
ノワールが天井の一点をじっと見つめる。
「監視結界だよ。協会内には至る所にある」
カイが説明する。
「ふぅん。じゃあ――」
ノワールが指先を軽くひねる。
カチッ。
部屋の灯りが瞬き、壁の紋様が波紋のようにぐらつき、魔力の流れが逆転するような痺れが走った。
研究員A「セ、セキュリティログが消去!?」
研究員B「おい、監視画面が真っ黒だぞ!」
研究員C「ありえない!外部干渉は検知ゼロだった!」
ノワールは悪戯っぽく笑い、俺にだけ聞こえる声で囁いた。
「玩具にしても脆いわね。私を監視しようなんて、千年早い」
(やっぱり、監視してたんだ……!)
俺は喉が乾く音を自覚するほど緊張した。
「レオン」
カイが俺の肩に小さく触れて、声を潜める。
「ここは……観察対象を見る場所だよ」
「観察って……俺たちをか?」
「特に君を」
表面上の歓迎の裏で、俺がどんなラベルを貼られているのか――想像が怖い。
「さて、案内します。協会の研究は、魔導文明の未来そのものですから!」
「未来……?」
「精霊を管理し、人類のために使役する未来です」
その言い方が、どうしようもなく寒気を誘った。
俺は立ち上がり、息を吸い込む。
(聞こえるはずの声が――)
廊下に漂う魔力の流れ。
精霊の気配は確かにある。
でも……
(……静かだ)
ほとんど無音。
囚われた小鳥が息だけしているかのような、かすかな震え。
ミルがそっと俺の手を握る。
「ここ、嫌……息苦しいよ」
ノワールは目を細めた。
「封じ込めてる。声を奪う術式……あちこちにね」
俺は無意識に拳を握っていた。
(ここは――精霊の自由を奪う場所だ)
「レオン」
カイの声が、珍しく震えていた。
「どうか……惑わされないで」
「大丈夫。俺は――精霊の声を聞く者だ」
たとえ世界中が否定しても。
俺だけは、絶対に見捨てない。
「さぁ!見学ツアーへ!君の力が、わたしたちの研究をどれほど前進させるか……楽しみですね」
(前進?それって誰のための――?)
暗い長い廊下を、俺たちは奥へと進む。
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