第2話 王都エルドリアへ
魔導列車の汽笛が響き、俺たちを未来へ引きずり込むように走り出した。
「レオン!見てアレ!角にランプつけた巨大ウシが荷物運んでる!!」
「……ミル、それ貨物車。ただの貨物車」
「でも乗れる!!?」
「いや、絶対怒られるやつ」
興奮のベクトルが宇宙。これがミルの通常運転。
一方、真逆のテンションでカイが目を輝かせる。
「この列車……流動魔力型の最新式か……。王都は本気で魔導革新を推し進めているんだ。胸が高鳴って仕方がないよ!」
「カイ、お前が一番テンション高ぇよ」
「僕はいつだって冷静さを忘れないタイプです」
「完全に矛盾してんぞ」
くすりと笑ったその時――
ノワールが、窓の外をじっと見たまま口を開いた。
「……妙だ。風が全く笑っていない」
「風、笑うんだ……?」
「当たり前だろう。我は風の精霊王ぞ?」
ちょいちょいこうやって王アピールが入る。
だがその視線には確かな警戒が宿っていた。
***
そして降り立つ――王都エルドリア。
「すっげぇ……」
巨大魔力塔、空中レーン、空を舞う魔導ゴンドラ……
世界の中心が、目の前にあった。
「レオン!観光だよ!写真だよ!かっこつけて立って!」
「おい、服引っ張るなミル!落ち着け!」
「よし、まずは屋台!次にかっこいいもの!最後においしいの!」
「順番の概念どこいった」
カイはというと、
「……感動で涙が出そうだ。ここに来るために僕は学んできたんだ」
「カイが感情的……珍しいな」
「え、僕いつも超感情豊かですよ?」
「だとしたら表情筋が仕事放棄してる」
「表情筋は無能なんです」
ミルとカイ、ボケとボケが会話してる……。
そしてまた、ノワールの声が低く響く。
「この街……精霊が黙している」
「……黙してる?」
「声がない。ただの魔力装置のようだ」
文明の光が、一気に仄暗い影へと変質した。
***
協会の特使に案内され歩く廊下は、
見事に温度も空気も心臓に悪い。
「冷蔵庫か?ここは」
「レオン、黙って。変なこと言うと、ホントに閉じ込められるかも」
「いやもう既に閉じ込められてる気分なんだが」
受付嬢が笑顔のままカイへ小声で囁いた。
「監査対象者は笑顔で接せよって通達されてるのよ」
「それ笑顔の意味変わってるからぁ!」
ミルのツッコミが刺さる。
やがて部屋へ通され、重い扉が閉ざされる音。
金属的な響き。
監獄の到着音。
「うわ、完全に見られてるやつだねこれ」
「ミル……俺も思った」
カイは静かに説明する。
「この部屋、魔力計測と監視の両用途です。歓迎というより解析」
「解析対象は……俺とノワールたち、か」
「そう。あなたの存在は協会にとって研究対象」
冗談めかして言っているが、笑っているのは口だけだ。
ノワールが壁を見据える。
「我を物として扱うなら……風は牙を剥くぞ」
ミルが俺の袖をキュッと掴む。
「……置いてかれたら、泣くからね?」
その言葉が、胸を縛った。
「置いていくかよ。俺が守る。絶対に」
ミルが照れ隠しに小さく舌を出す。
「んもう、もうちょいカッコつけていいよ?」
「今ので十分カッコよかったよ。得点は……60点」
「低っ!?カイ採点厳しっ!」
「僕、審査員なので」
「なんの?」
「レオン=アークライトの未来」
「キザかよ」
笑いながら――
背中には氷が這い続けていた。
***
夜。
王都の空に細い雷が走る。
「カイ、明日は?」
「適合検査。契約構造の解析。そして……尋問」
「最後が本命だろ」
「……止めろと言っても無駄なんだよね?」
「もちろん。来たからには逃げない」
カイがゆっくり頷く。
「なら、僕も逃げない。僕は君を理論で守る」
ノワールが、夜気に囁く。
「嵐は近いぞ」
俺は小さく息を吸う。
(どう転んだって――俺は精霊と共に歩む)
(この街に、それを壊させはしない)
次の戦場がすぐ傍で口を開けていると
空の雷が告げていた。
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