第19話 嵐の予兆
雷都に静けさが戻る――はずだった。
ダリオとの戦いが終わり、街は復興に向けて動き出している。
倒壊した建物、焼け焦げた地面。
それでも、住人たちは笑顔を取り戻そうとしていた。
だが――精霊たちは違った。
「……妙だな」
街のいたるところで、雷精霊が落ち着きなく飛び回っている。
ランプの灯りは勝手につき、電線には火花が散る。
空気がずっと、ざわざわと震えているようだった。
「レオン、やっぱり精霊さんたち怯えてるよ?」
ミルが心配そうに袖を掴む。
その小さな手にも、かすかな電気が走っていた。
「大丈夫だ。俺たちが守る」
そう口では言ったけれど――
胸の奥の不安は、どうしても拭えなかった。
翌日。
雷都上空に、異変が現れた。
ドロリとした闇のような雲が渦を巻き、
稲妻が縦横無尽に走る。
「カイ、どういうことだよ、これは…!」
研究施設の屋上に設置された魔導計測器が、激しく警報音を鳴らし続けていた。
カイは青ざめた顔で計測値を睨みつけている。
「……精霊界へと繋がる門が開きかけている」
「そ、それってヤバいんじゃ……?」
ミルの声が震える。
「普通は高度な儀式でしか開かない。でも、これは自然発生している。しかも、この規模……異常すぎる」
俺は雷雲を見上げる。
胸の奥が疼き始めていた。
聞こえる――いや、感じる。
精霊たちの声が、頭に直接響いてくる。
「選べ……」
「どちらの世界につく……?」
「っ……!」
こめかみを押さえて膝をつく。
痛みではなく、圧力だ。
雷の奔流が脳へ直接叩きつけられるような感覚。
「レオン!?」
「大丈夫……まだいける……!」
でも、本当は大丈夫なんかじゃない。
ダリオとの戦いで得た炎の力が、雷と混ざり合い、
俺の中で暴れようとしている。
何かが――
とんでもなく悪い方向へ動いている。
その時――
ゴォォォォォン!!!!
巨大な落雷が、街の中心に叩き付けられた。
光が収まった瞬間、
奴は現れた。
「……ゼルフィア?」
雷光の中、銀の髪がふわりと揺れる。
その瞳には、以前にはなかった――悲しみと、覚悟。
「レオン。この世界の均衡は、もう持たぬ」
低く、諭すような声。
けれどそこには迷いがない。
「どういう意味だよ……答えろ!」
「人が精霊を操る世界か。精霊が人を支配する世界か。決断の時は近い」
「そんなの――どっちでもない!俺は両方を守りたいんだ!」
ゼルフィアは小さく首を振った。
「甘いな、それは共同幻想だ。力の差がある以上、共存はありえない」
その言葉が、雷鳴よりも重く響く。
「……お前、何があった」
「次に会うとき――私はお前の敵かもしれぬ」
雷を纏い、ゼルフィアの姿は溶けるように消えた。
まるで、
俺を試すように。
俺を突き放すように。
ゼルフィアが消えた後、
再び雷鳴が轟く。
ラグナが駆け寄ってくる。
「何があった!? 雷雲はどうなってる!」
「……まだ終わってねぇ。むしろ始まったばかりだ」
空を覆う雷雲は、ますます肥大化していた。
その中心――雲の裂け目に、
巨大な眼のようなものが見えた気がした。
「精霊界が、こっちを見てる……?」
カイが唇を震わせる。
ミルすら、言葉を失っている。
「選べ――選択せよ」
「雷子――レオン――」
声が、頭ではなく魂に直接響く。
何を選べというんだ?
俺にはまだ――答えなんて出せない。
でも、一つだけ確かなことがある。
必ず、守る。
精霊も、人も。
その決意を胸に、
俺は再び雷雲を睨み返した。
「来いよ。相手になってやる――!」
雷鳴が空を裂き、
街中の精霊が一斉に叫び声を上げる。
不穏の嵐が、いよいよ牙を剥き始めた。
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